アクサIM2023年度 ESG投資意識調査
~アクサ・インベストメント・マネージャーズ 2023年度 ESG投資意識調査~
国際比較で日本人のESG投資は「透明性」「手数料」「商品選択肢」が重要に、
資産運用アドバイザーとの会話の機会も求められる
アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ(本社:フランス・パリ、以下、アクサIM)では2023年に、日本を含むアジア・ヨーロッパ地域の12カ国において各国1,000名、計12,000名の18歳以上(個人投資家・富裕層を含む)を対象にESG投資に関するアンケート調査を実施しました。また2021年にも同様の調査を実施しており、回答結果を比較しています。
主なポイント
- 日本人投資家のESG投資に対する期待値は調査対象国の中で最も低く、投資割合も小さい
- ESG投資のためにより多くの手数料を払うことへの抵抗感は、日本人投資家が最も強い
- 資産運用アドバイザーとESG投資に関する会話の機会がなかった割合は、日本人投資家が最も多い
- 日本人投資家は、ESG・エシカル投資において、透明性の改善、手数料の引き下げ、商品の選択肢を増やすことを特に求めている
1.日本人投資家のESG投資に関する期待値は調査対象国の中で最も低く、投資割合も小さい
個人投資家に対して「同リスクレベルの非ESGファンドと比較し、ESGファンドにどの程度のパフォーマンスを期待するか」という質問をしたところ「アウトパフォームする(運用成績がベンチマークとなる運用基準を上回る)」と回答した人は、全対象国において減少しました。中でも日本は両年ともに、ESGファンドのパフォーマンスに期待する人が最も少なく、2023年は21%(前回比-7%)でした(図1)。
(図表1)
また投資家向けに「投資ポートフォリオにエシカル・ESGの名称のファンドがあるか」と質問したところ、2023年、全対象国の保有率の平均は31%(アジア39%、ヨーロッパ23%)であるのに対し、日本は20%と、平均を下回る保有率でした。
一方、ESG投資を行う投資家に限定し「投資ポートフォリオのうち、ESGファンドに投資している割合」を質問したところ、ESGファンドへの投資割合が41%以上と回答した投資家は、2023年の全対象国平均が34%であるのに対し、日本は44%と、平均を上回りました。このことから、日本ではエシカル・ESGファンドを保有する“ESG投資家”の数は少ないものの、少数のESG投資家たちのポートフォリオの配分においては、ESGファンドは国際比較で高いことが分かりました。
ESG投資への期待値が低く、ESG投資をしていない日本人投資家が多い中で、少数のESG投資家は、ESGファンドを積極的にポートフォリオに取り入れており、ESG投資家/非ESG投資家の間で、認知や期待値に差がある可能性があります。
2.ESG投資のためにより多くの手数料を払うことへの抵抗感は、日本人投資家が最も強い
投資家を対象に「ESGファンドへの投資により多くの手数料を払ってもよい可能性」について質問したところ、「可能性は非常に低い/低い」と回答した日本人投資家は、最多の63%で、ヨーロッパ・アジア全対象国の平均(40%)を大きく上回りました(図2)。
(図表2)
また、一般的に「投資を行う際に重要視する商品の特徴」について各国の投資家に質問したところ、「規制による保護」「資産を失うリスク」「柔軟性」「投資動向の追跡」などの回答が各国で最多の回答となる中、香港と日本人投資家のみ「手数料」を最も重要視する声が最多でした(香港61%、日本50%)。このことから、日本は他の対象国と比較し、投資全般において手数料に対する懸念が大きく、それはESG投資においても同じであることが読み取れます(図3)。
(図表3)
3.資産運用アドバイザーとESG投資に関して会話の機会がなかった割合は、日本人投資家が最も多い
資産運用アドバイザーに相談した経験がある回答者に「ESG投資や責任投資について話したことがあるか」と質問したところ、「話したことはないが、話してもよかったと考える」と回答した人は、2023年、全対象国平均17%だったのに対し、日本は28%と最多の結果となりました。また前回比ではベルギー(-3%)、スペイン(-2%)、フランス(-5%)、イタリア(-1%)、香港(-2%)、フィリピン(-6%)、タイ(-5%)、インドネシア(-3%)と8ヵ国で、回答者が減っていることから、資産運用アドバイザーとのESG投資・責任投資に関する会話の機会は増加している国が多い結果となりました。一方で、日本(+9%)、シンガポール(+4%)は、話をする機会がなかった人は前回比で増えており、特に日本は増加率も高く、資産運用アドバイザーとのESG・責任投資の会話の機会はますます減っていることが分かりました(図4)。
(図表4)
前述の内容から、日本はESG投資への期待値が低く、手数料が懸念となっている中、国際比較では資産運用アドバイザーとESG・責任投資について話す機会の必要性を感じている人が多いという結果です。このことから、日本人投資家が、ESG投資において手数料の支払いを上回る期待値を得るためには、専門的な知識へアクセスし、理解を深める機会が求められている可能性があります。
4.日本人投資家は、ESG投資において透明性の改善、手数料引き下げ、商品の選択肢を増やすことを特に求めている
日本人投資家は「責任投資やエシカル投資を、より分かりやすく魅力的にするためには、どのような手段があるか」の質問への回答として、「投資先の透明性向上(33%)」、「ESG投資の手数料引き下げ(30%)」「ESG投資の商品選択肢を増やす(25%)」が上位となりました。そのほかにも「ESG投資ファンドの一般に認知された指標を作る(15%)」「投資家に向けた基本的テーマの教育 (14%)」など、ESGファンドの評価方法の明確化や、投資家向けの教育機会に需要もあることが分かりました(図5)。
(図5)
以上のことから、日本人投資家は、ESG投資について期待値は他国と比べて低く、手数料の水準に抵抗を感じている一方で、透明性の向上や投資商品の拡充により、改善できる可能性が示されています。また、教育への興味も示されており、投資家の理解を深める機会が増える事でESG投資への興味が広がる可能性も考えられます。
本調査を実施したアクサIMのマルチマネージャープラットフォーム(AXA IM Select)のESGグローバル・ヘッドであるベルトラン・ペンヴェルヌ(Bertrand Penverne)は、次の通り述べています。
「責任投資やESGといった概念や用語は、今の時代では投資家に幅広く知られていると思いがちですが、調査結果はそうではないことを示しています。世界にプラスな変化をもたらそうとする投資に資金を振り向けることがかつてないほど急務となっている今、ほとんどの個人投資家がこのような活動を行う種類のファンドに気付いていないことは大きな懸念材料です。アクサグループでは、従業員一人ひとりが気候変動の事実を正確に把握し、各ステークホルダーへの働きかけが行えるよう、「AXA Climate School (アクサ気候スクール)」を通じて全従業員向けに研修を実施しており、また、今年に入ってその内容をより多くの人に知ってもらえるよう一般公開しました1 。金融リテラシーを向上させ、低炭素で好循環な世界への移行を加速させるためには、責任投資に対する認識と理解をより広範に高めていけるよう、業界としてやるべきことがまだまだあることは明白です」。
アクサ IMでは、ESGを含む投資に関する教育促進を目的とした様々な取り組みを行っています。
- アクサIMでは、上場資産やプライベートマーケットなど、異なる資産クラスにまたがる幅広いESG/RI(責任投資)戦略の提供にコミットしています。
- アクサIMでは、国連SDGsなどを活用し、個人投資家への説明・提案方法を工夫しています。
- アクサIMでは、スチュワードシップ活動の詳細を公表し、企業の責任ある行動に影響を与えられるという資産運用会社としての役割について発信しています。2
【調査概要】
調査名:2023年度 ESG投資意識調査
調査対象国:イギリス3
、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、香港、フィリピン、シンガポール、タイ、インドネシア、日本
調査対象者:計12,000名の18歳以上(個人投資家、富裕層4
を含む)
人数:12,000人(各国1,000人)
調査実施期間:2023年10月10日~30日
調査方法:オンラインアンケート
本調査に関する詳細については、こちら(英語のみ)をご覧ください。
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