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Investment Institute
視点:CIO

比較的好調な相場での調整局面

  • 2024年5月1日 (5 分で読めます)

全体像に変わりはありません。世界経済は好調で、IMFなどによる今後の見通しは上方修正されています。インフレ率は低下しつつありますが、「ディスインフレ(インフレの鎮静化)の最後の1マイルは難しい」という言葉がよく使われています。このため、市場での米国と欧州の金利見通しに乖離が生じており、米債券利回りは欧州債券利回りと比べて上昇しています。市場はまだ今年の米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げをすべて織り込んでいるわけではありませんが、織り込みに動いていると思われます。債券市場に対する強気派は、FRBのジェローム・パウエル議長が利上げをしないと発言することを望んでいると思います。FRBは、金利政策はデータに大きく依存するとしています。一方で、日本では、インフレ率が予想外に下振れする可能性があることには注意が必要です。


株式市場の優位性

2024年の年初からこれまで(執筆時、4月25日現在)の市場リターンは、マクロ環境が債券よりも株式を下支えしてきたこと、そして今後もそうであることを示していると見ています。市場は今年のほとんどの利下げを織り込むように進展しており、債券市場の最も金利に敏感な部分に悪影響を及ぼしています。その裏返しとして、成長率は力強く、インフレ率は依然として予想を上回っており、名目成長率は依然として堅調であることを意味します。企業収益は、名目経済が拡大するにつれて増加する傾向があります。米国と欧州ともに、2023年の名目国内総生産(GDP)成長率は約6.5%で、2024年も名目成長率が比較的堅調な水準になると思われます。名目成長率の水準は株式市場にとって好材料ですが、中央銀行が市場で予想されているほどに金利を引き下げるにはやや強すぎると見ています。

債券市場にとって改善

FRBが利上げをする場合を除けば、債券市場は魅力的なキャリー・リターンを提供すると見ています。年初から4カ月近くの期間に、FRBの見解の見直しによって債券価格が下落しましたが、今後はリターン獲得の面でインカムが優勢となるため、トータル・リターンはプラスの値が大きくなると思われます。投資適格債のトータル・リターンが年間を通じて3~4%となり、また、ハイイールド債では5%程度となっても、不思議ではないと思います。パウエル議長が利上げを明確に排除した場合には、債券のリターンは押し上げられると見ています。もちろん、そのためには中央銀行の見解に合致するデータが必要ですが、まだ実現していません。

ポジティブ・サプライズ

米国株式市場では第1四半期の決算発表シーズンが堅調に推移しています。これまでのところ、決算発表した企業はまだ半分に達していませんが、平均利益の伸びは約6%で、全体としては市場予想よりも約10%上回っています。すべてのセクターで、予想を超える利益と(エネルギー、素材、ヘルスケアを除いて)増益成長が見込まれます。テクノロジー・セクターでは、マイクロソフトとアルファベットが予想を上回る好調な数字を報告する結果となりました。このセクターの株価は最近、年初来の上昇分の多くを取り消すように下落していますが、決算発表や、テクノロジーと人工知能(AI)への強力な設備投資をめぐる経緯が、米国大統領選挙を前にパフォーマンスの改善を後押しすると見ています。


株式60%:債券40%のポートフォリオのバランス向上

昨年は、株式と債券との組入れ比率が60:40のポートフォリオ戦略では、株式リターンが全体のリターンに大きく影響しました。このポートフォリオは、今年は債券部分のインカム・リターンが比較的大きくなって、昨年よりももう少し株式と債券のリターンのバランスが取れる可能性があります。新しい市場状況の中でこのバランス型ポートフォリオがまだ試されていないことは、債券が株式の大幅な下落を相殺する能力です。成長鈍化と企業収益の後退が引き金となる通常の短期的な景気後退では、比較的大きく利下げが行われ、債券市場が株式市場をアウトパフォームする可能性があります。前回そうなったのは世界金融危機の時でした。2022年は、金融政策の引締めと同時に、株式市場と債券市場、両市場のリターンがマイナスになりました。このような事態が再び起こる可能性は限られていると見ているために、収益見通しの低迷を受けて株式部分が下落に転じた場合に備えて、債券部分は代表的なヘッジ手段となると考えます。

センチメントへのリスク

しかし、今のところ、基本的な見通しでは堅調な経済を見込んでいます。株式市場にとっての短期的な最大の脅威は、センチメントへの打撃がリスク・プレミアム(リスク性資産の期待収益率から無リスク資産の収益率を引いた差)の上昇(つまり、株価収益率の低下)につながるという経路を通じてもたらされることと考えています。それを可能にする原因は多々あります。分かりやすい原因はFRBの利上げと思われますが、地政学的な懸念もまた投資家の信頼に対して脅威となると考えています。これまでのところ、大抵の場合そうであるように、地政学的な出来事に対する市場の反応は、長くは続いておりません。中東の紛争とウクライナの紛争はいずれも、世界貿易問題とインフレ上昇へと波及し、その結果より大きな脅威となり、不確実性を高める可能性があります。しかし、これまでのところ、そうなってはいません。

始めて、止めた引き締め策

日銀の金融スタンスの変化は、日本の投資家が海外投資を本国に還流させる動機付けとなり、円に上昇圧力がかかり、米国債などの海外市場が打撃を受けることが懸念されていました。 わかってきた事実から見ると、特にそうしたことは起こっていません。日銀は金融政策を引締め方向に若干調整したものの、円は先週対ドルで1990年以来の安値を付けました。4月の東京都の消費者物価上昇率は前年同月比で1.8%となり、市場予想の2.5%、3月の2.6%を下回りました。日銀は今年のインフレ率を平均2.8%と予想していますが、この上昇の原因は、円安が一段と進み、エネルギー価格が高止まりしていることが大きな要因と見ています。ただ、日本では国内主導のインフレはあまり見られません。そのため、当分の間、さらなる金融引き締めが行われる可能性は低いと見ています。引締めは一旦始まったものの、今は止まっています。日本は世界の債券にとって脅威になっていないと思われます。しかし、これは、過去20年間の大半にわたって作用してきたデフレの力が、(ほぼ)一過性のインフレショックの後でも、振り払うのが難しいことを示す一例かもしれません。

ヘッジ・コストが上昇する米国

ユーロ建ておよび英ポンド建ての債券投資家にとって、米債券市場は利回りの観点から引き続き魅力的です。米債券市場の利回りは、ドルをユーロやポンドにヘッジして投資しても、英欧の債券市場の利回りよりも依然として高くなっています。しかし、この状況は変わる可能性があります。FRBが政策金利を据え置き、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(BoE)が利下げに踏み切れば、ユーロやポンドのドルに対するヘッジコストは上昇すると考えられます。為替の影響をヘッジして米国債に投資し利回りを改善しようとする投資家にとって、この戦略は間もなく終わりを迎える可能性があります。

穏やかで晴れた天気のような環境

現在、市場は落ち着いています。株式市場の変動性を示すVIX指数は4月初めに急上昇しましたが、現在は後退しています。一方、企業業績は好調と思われます。しかし、短期的なインフレの動向や米国のサービス部門におけるインフレの粘着性に対する懸念は引き続き残ると思います。そのため、短期デュレーションの社債投資戦略は、堅調な収益成長の恩恵を受ける株式投資戦略とともに、引き続き選好されると考えています。季節的な要因を考えると、5月は、上述したバランスの取れたポートフォリオにとって比較的良好なリターンを得られる月になると見ています。

パフォーマンスなどのデータの出所:レフィニティブ・データストリーム、ブルームバーグ。特に但し書きがない限り、2024年4月25日現在

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

(オリジナル記事は4月26日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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