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Investment Institute
マーケット見通し

リスクを取る社債運用戦略に投資機会


現状、経済は成長を続けており、市場リスクをとる投資戦略が、比較的良好なリターンを上げていると見ています。グローバルの指数をみると、ここ数年、投資家は、2022年の市場の調整を加味しても、株式市場や社債市場から、市場のボラティリティ(変動の水準)に対して比較的良好なリターンを得ています。国債のリターンはこれを下回っています。しかし今、経済成長は、政府債務が膨らむなど課題を抱えつつあります。引下げに向かう政策金利や経済のソフトランディング(軟着陸)、債券のインカム獲得機会の拡大の可能性、人工知能(AI)革命によって引き起こされる成長力向上の可能性など、社債や株式は投資の魅力度が高まっていると見ています。加えて、民間部門のバランスシート及び中核の財務状況など、全般的にしっかりとしていると思われます。こうした状況は市場にとって追い風であり、リスクを取り社債に投資する債券運用戦略にとって良好な環境にあると考えています。


元のまま 

欧米中央銀行の声明などを見る限り、利下げをすぐに行うことについて、はっきりとした言及はありません。これまでと同じ状態のままです。政策金利は現状ではまだ、テーブルマウンテン(頂上が平坦な山、金利が比較的高い水準で比較的長い期間維持されることの比喩)の頂上にいます。また、市場では、最初の利下げは年半ばになるとの見通しが強まっています。市場では、連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行(BoE)、欧州中央銀行(ECB)が、タカ派的姿勢からハト派的にどの程度変わったかの議論が続いています。しかし、中央銀行は、市場の予想とは異なる決定を行うことがあります。BoEは2月1日の金融政策決定会合で、市場の期待に反して、9名の委員のうち2名が利上げに投票しました。

もっと辛抱強く

声明とは異なり、これら中央銀行の隠されたメッセージを類推すると、中央銀行は利下げ方向に動いていると思われます。2024年での利下げは、市場の主要な投資テーマの一つと見ています。利下げの時期に関する市場の織り込み度合いは、少しずつ修正されてきました。米国では、最初の利下げは5月ないし6月と見込まれており、利下げ幅は今年末までに100ベーシスポイント(bp)超と予想されています。英国では、市場は6月に最初の利下げがあり、年末までに100bp利下げされると見ています。ユーロ圏では、市場は6月利下げ開始の予測を強めています。現在のECBの政策金利は4.0%ですが、年末の市場見込みは2.5%になっています。中央銀行の隠されたメッセージは、忍耐強くあることだと思われます。というのも、中央銀行としては利下げの前に成長鈍化のさらなる証拠が必要であり、インフレ率がさらに低下する必要があると考えている、と見ているからです。現在市場に織り込まれている状態を考えると、期待ほどの経済データが実際に現れなければ、市場は、今後数週間ないし数か月のうち急に崩れる可能性があると思われます。

レンジ内で推移する国債

筆者が先月中旬に述べたことですが、現在市場が織り込んでいる以上の利下げはあまり可能性が高くないと思われます。言い換えると、2022年から2023年の利上げの結果、多くの国債が償還価格を下回って取引されているものの、キャリー(クーポン収入など債券を保有しているだけで得られるリターン)やロールダウン(利回り曲線の傾斜に沿って利回りが低下していくこと)の観点からは、国債への投資は比較的魅力に乏しいと思われます。当社グループの債券運用チームと話し合う時に筆者がしばしば述べていることですが、債券利回りは必ずしもリターンと等しいわけではなく、特に比較的短期間であれば、この利回りとリターンが乖離する傾向が強くなることがあると考えています。今日、先進国の国債の場合、この乖離が強くなると思われます。つまり、利下げされた場合、国債利回り曲線(イールド・カーブ)はスティープ化(傾きが急こう配になること)して、曲線の短中期部分ではキャピタルゲイン(値上がり益)を得ることができます。しかし、指標となる10年国債の利回りは現在の水準から大きく変化する可能性は低いと見ています。


安全資産への投資の見劣りするリターン

欧米の国債への投資は過去 10 年間、比較的低水準のパフォーマンスが続きました。ボラティリティに対するトータルリターン(リスク調整後のリターン)で測ると、長期国債のパフォーマンスは社債市場や株式市場を下回っていました。欧米の中央銀行が量的緩和(QE)を通じて債券利回りを比較的低位に抑えていたとき、低い利回りの代わりに債券保有者が得られることは、元本損失がないことと潤沢な流動性という恩恵を受けることでした。 これは当時のマクロ経済政策の方針に沿ったものであり、主に負債主導投資(LDI)の投資家が国債に投資する場合、中央銀行が提供する安全性の恩恵を受けるためにリターンを犠牲しようとする動きも見られました。しかし、この状況は2022年に終わりました。長期にわたる低金利の時期を終えた国債保有者は、キャリーの恩恵を得る一方、金利リスクを負う状況に戻りました。そして現在では、世界経済が低迷する場合を除いて、国債のリターンが相対的に他の資産を継続して下回る可能性が高いと思われます。

リスクに対するリターンについて 

リスク性資産は、昨年比較的高い成績を収めました。 ナスダック総合指数のトータルリターンは約45%でした。 S&P 500 は約 26%、米国ハイイールド社債市場の CCC 格付け指数は約 20% のトータルリターンをもたらしました。 筆者はここ2週間、欧州の投資家たちと対話を行ってきました。 投資家の間では、リスクを取ることに関して楽観的な見方が増えているように感じています。 株式の見通しはあまり明確ではないものの、多くの投資家は投資適格社債やハイイールド社債に対する筆者の強気の見方に共感を示していました。市場での一般的な見方として、政策金利はピークに達していて、債券市場は信用リスクプレミアムを上昇させるはっきりとしたリスクがない状態で、債券のインカムによって生まれる比較的高いリターンが期待できると考えられています。

キャッシュにある再投資リスク 

政策金利に何らかの変化が見られるまで国債利回りが一定の幅の中で推移する場合に、キャッシュと比較して、追加のデュレーション(金利変動に対する感応度)リスクを負ったとしても、投資家が得られる追加のスプレッド(ベース金利に対して上乗せされる金利)リターンにより、社債は魅力的に見えます。 先週述べたように、金利が下がる場合に、キャッシュではキャピタル・ゲインは得られず、収益率が低くなっていくと考えられます。つまり、キャッシュには、金利低下局面では比較的大きな再投資リスクがあります 。例えば、今日 3 か月物の米国財務省短期証券(Tビル)に 5.33% で投資したとします。執筆時の金利先物市場に基づくと、4 月までにその金利は 4.92% に下がり、7 月までに 4.2% に、そして 10 月までに約 4.0% に下がると思われます。 これは、現在から1年間の複利リターンが 4.7% となると計算できます。 そして、市場の予測通り翌年の金利がさらに低下するとリターンはさらに低くなると考えられます。 社債市場では、今日米国の投資適格社債に投資したとすると利回りが約 5.1% (社債指数の平均利回り)であり、当初の利回りにキャピタル・ゲインが追加される可能性があるために、より高い潜在リターンを提供するものと考えています。

据え置きから低下に向かう政策金利と魅力的な信用スプレッドが、今年の債券見通しの重要な特徴となっていると見ています。 企業のしっかりとした財務状況も下支え要因であり、信用スプレッドが大幅に拡大するリスクは限定的と考えています。 現在の景気サイクルは、企業部門でも消費者部門でもレバレッジ(借入など負債の利用割合を示す指標)の大幅な増加が見られないため、これまでのサイクルとは異なります。 コロナ禍当時、政府は財政支援を行い、中央銀行は大量の流動性を供給しました。 従って、当時は企業や家計は借入れを大きく増やす必要はありませんでした。 これが、利上げによる経済活動への影響が(これまでのところ)限定的にしか及んでいない理由です。企業財務から推定し、レバレッジ比率を収益に対する長期債務の水準として測定する場合、米国の投資適格債券市場のレバレッジ比率は約3.0倍であるのに対し、ハイイールド社債市場では約4.0倍となっていますが、以前の景気サイクルやコロナ禍初期ではこれよりも高い水準でした。


米国政府債務が債務問題の中心に 

米連邦準備銀行の資金循環報告書から計算すると、2008年末以来、米財務省の債務残高は289%増加しているのに対し、企業債務の増加率は約130%です。 財務省債務残高は政府の歳入(主に税金)の約6.0倍に相当します。つまり、連邦政府は米国企業部門よりも多くの負債を抱えており、より高いレバレッジがかかっています。 社債のスプレッドをさらに拡大する必要があるかどうかはわかりませんが、もちろん、政府借入の増加により財務省利回りが上昇する可能性があるため、ある時点でデュレーション・リスクをヘッジすることが必要になるかもしれません。 今年11月の米大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利すれば、同氏の政策選択について様々な可能性がありますが、その結果として、政府の借入が急増する可能性があります。 そしてそれは米国だけの懸念ではないと思われます。

経済協力開発機構(OECD)は、2023年11月の経済見通しの中で、今年の米国政府の総金融債務(負債)がGDPの約124%に達すると予測しています。 英国負債の推定値は 103%、フランスでは 120%、イタリアでは 148% です。 先進大国ではコロナ禍以来、債務残高の対GDP比が増加しており、特にインフレが沈静化するにつれて実質金利が上昇しているため、この比率が低下する兆候はほとんど見られません。 先週議論したように、これが、実質金利がしばらくの間、現在の水準に近いか、あるいはそれを上回る可能性が高い主な理由です。

地銀に対する懸念が再燃か?  

ここで目先を少し変えて考えてみましょう。信用は投資家にリスクフリー金利(ベース金利)を上回る報酬を与え続けるべきだというという考え方があります。この考えに疑念を持つ人は、1月31日に表れた地方銀行問題や商業用不動産市場の問題に関して根本的な懸念を示すかもしれません。 こうした懸念は、コロナ禍の影響で商業用不動産の一部では需要が低迷し、この分野でのレバレッジの係った資産や貸し手にとって金利コストが上昇することとして、市場では以前から知られていました。 この問題は、米国の金融システムにとって大規模な問題となるのでしょうか? しかし、筆者としては、米国の金融セクターの大部分は健全な状態にあるため、現時点では大規模な問題にはならないだろうと見ています。 しかし、今後の状況には注意が必要であると思います。つまり、規模の小さい銀行や不動産セクターに関する悪いニュースが増え、さらに経済指標が軟調を示すようになると、FRBでも議論されて、遅かれ早かれ利下げが必要になる可能性があります。 ただし、市場には、多くのことが既に織り込まれていると考えています。

2024年の投資テーマの見通しを維持 

2024年に入り執筆時で1か月が経過しましたが、株式のリターンはMSCIワールドで約+2%となり、筆者が予想よりも良好でした。一方、債券のリターンは下落しました。(ICEグローバル債券市場指数では約-1%)。 また、筆者が2023年末から着目してきた主要テーマは、今年どこに投資するかの導き役としてそのまま続いています。 1つ目は、米国と欧州の政策金利が据置から低下に向かいながら、世界経済のソフティッシュ・ランディング(機体が多少の揺れを伴いながら着陸すること、翻って、経済的に多少の痛みを伴いながら景気を落ち着かせること)に応じて、欧米の中央銀行が最終的に緩和政策を行うと考えられること。2つ目は債券投資での収益機会の拡大であり、デフォルトが管理可能な水準で続いていることを背景に、ハイイールド社債市場が依然として優れたリスク調整後リターンを提供していると考えられること。そして 3 つ目は、テクノロジーが依然として株式収益の原動力であると考えられることです。したがって、少なくとも現時点では、リスクを取りながら投資することにより、比較的良好なリターンを得られる可能性があるものと見ています。

データの出所: Refinitiv DataStream、Bloomberg、2024年2月2日現在。

過去の実績は将来の結果を示すものではありません。

(オリジナル記事は2月2日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

 

本資料で使用している指数について

債券指数について

ICE BofAの各債券指数:ICEデータ・インデックス社が公表している債券の値動きを示す指数です。

株式指数について

MSCI ワールド指数:MSCI社が公表している世界の先進国の株式市場の値動きを示す時価総額加重平均型指数です。

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

ナスダック総合指数:米国NASDAQに上場している全銘柄の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

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