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Investment Institute
マクロ経済

投資家にとって今が新興国市場を見直す時期か?

主なポイント
新興国市場に対しては、ここしばらく投資家の関心は強くなかったと思われますが、パフォーマンスに改善の兆しが見え始めています
発展途上国はその経済的・人口動態的な優位性によって、引き続き魅力的な長期的展望を示していると見ています
依然としてリスクはあるものの、新興国市場は脱炭素化や人工知能などの分野の成長の恩恵を受ける可能性があると考えます

これまで投資機会の宝庫と考えられてきた新興国市場は、各種分析や調査などでしばしば報告される中国の不動産危機や、キャッシュの魅力を高めることになった米国の大幅な金融引き締めに対する懸念など、いくつかの要因のために、多くの投資家にとって投資対象から外れていたと思われます。

しかし、市場リターンの向上や経済的背景の改善、米国の金利低下見通しを考慮すると、新興国市場への投資戦略の可能性を見直すべき時が来ているかも知れません。

長期的観点から新興国市場を投資対象として検討する理由は多数あると見ています。例えば、数々の経済的・人口学的優位性をみますと、新興国市場の経済は、2023年までの10年間で世界GDP成長率の65%を占め1 、2024年には世界GDP(国内総生産)の42%を占めるなど2 、世界全体の成長を牽引してきました。

また新興国市場では、工業化が急速に進み、世界の人口の大半を抱え、若い労働力が潤沢にあり(インドでは人口の40%以上が25歳以下)、中産階級が急速に成長しています。3  マッキンゼー社の分析では、2030年までに新興国市場の消費者の75%が15歳~34歳の年齢層になり、経済に対して楽観的で消費意欲も旺盛になると予測しています。4

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政策の強化

世界の発展途上国への投資は、これまで常に「ハイリスク・ハイリターン」という標語で表されてきました。

先進国市場と比べ、政治的(しばしば地政学的)不安定性、規制の緩さ、企業情報の透明性の低さなどが、発展途上国の典型的な問題となっています。

最近では地政学的リスクと、米国の急激な金利上昇が途上国経済に打撃を与えています。ドル高によって新興国の対外債務水準が上昇し、また、経済成長の世界的な鈍化が新興国経済の足かせとなっていました。

山を越える

しかし、長年低迷してきた新興国市場の回復の可能性を示す兆候のひとつは、投資リターンが最近、先進国市場のリターンに比較的近づいていることです。JP モルガン・エマージング・マーケット債券指数グローバル・ダイバーシファイドは米ドル建で今年初から7月末までに約4%上昇しており、MSCI エマージング・マーケット指数は同じく約8%のリターンとなりました。同期間中、ICE BofA グローバル国債指数は横ばい、MSCI ワールド指数は約14%の上昇となっています。5

より広い視野で見れば、新興国市場の最近の好調を後押しするような前向きな動きがいくつかありました。

例えば、中国の低迷にもかかわらず、新興国の経済成長は底堅さを示してきました。国際通貨基金(IMF)は、2024年と2025年の新興国市場および発展途上国の経済成長率を、従来の4.2%から4.3%に上方修正しましたが、その理由を「アジア、特に中国とインドにおける経済活動の活発化」としています。6

インドや中国、インドネシア、メキシコ、サウジアラビアといった国々の企業は、先進国市場の成長が好調なときに業績が増加する傾向にあります。これは、これらの国の国内経済にプラスの効果をもたらすだけでなく、株式や社債の投資戦略への支援にもなります。

IMF の調べによると、中国を除く新興国市場への純資本流入はパンデミック後の低下した水準から2023年には1,100億米ドル(GDPの0.6%)に回復し、2018年以来の高い水準となりました。7

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メガトレンドの導入

脱炭素化、技術革新、人工知能(AI)の躍進といったメガトレンド(世界の社会や経済などの在り方に大きな影響を及ぼす総体的な趨勢)も成長を後押ししています。

例えば中国では、2021年から2022年にかけて電気自動車(EV)の販売台数が130万台から680万台に増加しましたが、この台数は2022年における世界のEV販売台数の3分の1以上に相当します。8

クリーンエネルギーやEVインフラの主要構成要素である銅やニッケルといった金属は、世界がネットゼロに向かう中で需要が伸びる可能性が高まっています。世界の銅生産量の3分の1以上はチリとペルーが占め、ニッケル生産量の3分の2はインドネシアとフィリピン、ロシアが占めています。9

同様に、AI の導入は新興国市場全体の広範な産業で生産性を向上させ、変革の促進につながると見ています。

財務面の強化

新興国市場は総じて、世界的な金融引き締めを乗り越えてきました。乗り越えられた理由の多くは、アルゼンチンやエジプト、ガーナ、パキスタンに代表されるように、各国が金融機関の強化・改革に踏み切り、これまでよりも強力な政策と金融の枠組みによって支えられているからだと見ています。

S&P グローバルやフィッチなどの格付け機関ではここ数ヶ月、格上げ件数が格下げよりも多くなっています。これは、世界的なマクロ経済の好転と、IMFの支援の下で実施されることが多い再建プログラムの成功を反映していると見ています。

米国の金融緩和サイクルが始まれば、新興国市場にとってもプラスになると考えられます。上昇したドルが低下に向かえば、新興国市場の中央銀行が金融緩和政策を更に進めるための柔軟性が増す一方、米国の金利低下は新興国市場の潜在的なリターンの魅力を相対的に高めることになると見ています。

この点では MSCI エマージング・マーケット指数のバリュエーションは、テクノロジーの割合が大きい米国市場よりも、適正価値付近にある欧州市場に近く、一方で、株式アナリストの間では、7月末の時点で今後12ヶ月間の増益率が18%というコンセンサス予想が出ています。10

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残る課題

インドや南アフリカ、メキシコなど、今年はすでにいくつかの新興国で選挙が行われました。これまでのところ、政策が新しくなるという方向性はあまり表れていませんが、米大統領選でトランプ候補が当選した場合、保護主義的な貿易政策が再び支持される可能性があることから、米国の選挙は新興国市場にとって重要なカギとなると思われます。この貿易政策は主に中国が標的となりそうですが、サプライチェーン(供給網)を通じて他のアジア諸国にも波及する可能性があります。

中国や台湾、中東情勢を考えると、地政学的な緊張がさらに高まる可能性もあります。

特にサブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ諸国)と中南米では、金融の脆弱性も依然として問題となっています。また、気候変動のリスクは農業、貿易、地域社会に混乱を引き起こす可能性があり、長期的な脅威でもあります。

しかし、新興国市場経済が世界経済に占める割合は上述の通り以前よりも大きくなっており、この傾向は、脱炭素化とテクノロジーの発展に伴い、今後も続くと見ています。

現在の新興国市場には、多くの投資価値を見い出すことができると考えており、これからの新興国市場への投資戦略は、長期的な投資機会をもたらす可能性があると見ています。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は8月2日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

 

本資料で使用している指数について

MSCI ワールド指数、MSCIエマージング・マーケッツ指数:MSCI社が公表している先進国市場の株式市場、及び新興国の株式市場の値動きをそれぞれ示す時価総額加重平均型指数です。

JP モルガン・エマージング・マーケット債券指数グローバル・ダイバーシファイド:米JPモルガン社が提供している、新興諸国の発行する国債や政府機関債の値動きを示す指数です。

ICE BofA グローバル国債指数:ICEデータ・インデックス社が公表している各国の国債の値動きを示す指数です。

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