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サステナビリティ

循環経済:諸産業にまたがる価値創造、リスクと投資機会


  • 従来の線型経済の生産と消費に関する「投入-生産-廃棄」アプローチが生み出す脅威への認識が世界的に深まっており、循環経済(サーキュラーエコノミー)コンセプトへの支持が広がっている
  • 2019年には900億トンを超える原材料が採取・加工され、これが世界のCO2排出量のおよそ半分に関係し、生物多様性の喪失と水ストレス(水需要の逼迫)の90%に関与している
  • 循環経済は次の3つの原則に基づいている。廃棄物および汚染の排除、製品および材料の循環、自然環境の保全・再生
  • 建設、食品、繊維セクターでは循環経済の導入が進んでおり、企業や投資家にとって潜在的な機会が出現している

生産と消費に対する従来の「投入-生産-廃棄」アプローチは、地球および望ましい経済への脅威となっています。天然資源の採取量は過去50年間で3倍に増加し、採取のスピードは2000年以降加速しています。2019年には900億トンを超える原材料が採取・加工され、これが世界のCO2 排出量のおよそ半分に関係し、生物多様性の喪失と水ストレスのおよそ90%に関与しています。1

今後の見通しも憂慮すべきものです。増える一方の世界人口(2050年までに100億人と推定)が、今日展開している生産とサービスのシステムに依存するとした場合、原材料は現在使用されている量の2倍にあたる1,800億トンも必要になります。2 そのような量の原材料が入手できるかは不明であり、また発生した関連廃棄物を国や企業が制限・管理できるかどうかも同様に不明です。3

こういった問題があるため、循環経済への機運が高まっています。循環経済のコンセプトは、生産工程で発生する廃棄物が注目された初期の段階から進化しています。当時は政府が、公衆衛生や環境保護目的で推進していました。その後1990~2010年まで循環経済は第2段階に入り、焦点は環境効率を高めるためのインプットとアウトプットの結合に向かいました。それにより、廃棄物発生量に関する指標が開発され、より焦点を当てた廃棄物削減戦略の導入につながりました。最近では(およそ2010年以降)、資源の枯渇に対する懸念が中心になっています。循環経済アプローチは、資源への高い需要を背景に、廃棄物の管理から原材料の利用最大化へとシフトしています。

科学界においては今なお、循環経済の正確な定義および用語に関するコンセンサスが欠けています。循環経済コンセプトは気候、天然資源、環境が交わる部分にあり、グリーン経済、クリーンな生産、産業エコロジーといったサステナビリティの他の分野にも広がっています。低炭素経済への移行において炭素排出量の多いセクターに注目する気候変動問題と異なり、循環経済はすべてのセクターにまたがっており、それが責任ある投資家に対して一連のリスクと機会をもたらします。

移行において重要な役割を果たす再生可能エネルギーは、循環性の追求において新たな問題を生み出しています。ソーラーパネルや風力タービン、蓄電用および電気自動車用バッテリーの大規模な開発は、特定材料の採取および加工を大幅に増加させることになります。特にバッテリー製造ではリチウム、コバルト、ニッケルを使用することから、これらの採掘に関連して大きな環境破壊の原因となるだけでなく、資源の稀少性の問題ならびに影響を受けるコミュニティの権利に関する社会的問題を引き起こすことは避けられないでしょう。再生可能エネルギー分野が拡大するにつれ、進展を先取りし、資源の保全と再生/再利用そして廃棄物の制限と処理を目指して、再生可能エネルギーに循環経済を適用させることが極めて重要になります。

そして、投資環境に対する最も直接的かつ即時的な影響を考えた場合、資源の稀少性が市場価格の著しい変動を起こし、それが抑制されない場合には世界の経済システムを不安定にする可能性があります。現在のコモディティ価格の変動性は、地政学的・経済的要因にも左右されますが、過去100年間ではなかったほどに高くなっています。供給リスクは希少金属から魚介類まで資源のカテゴリー全体で顕在化しており、企業や投資家に明らかな影響を及ぼしています。4

このような背景から、当社の最新のリサーチペーパー(英語版)では、循環経済という概念がどのように投資環境を変えてきているかを示し、そしてその影響を最も受けている3つのセクター(建設、食品、繊維)について詳しく説明しています。

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