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アセットマネージャーが生物多様性の課題に取り組む上で極めて重要な4つの要素


キーポイント

  • 生物多様性は気候変動と並ぶ優先課題であり、アセットマネージャーは特定のエンゲージメント戦略を実施する必要がある
  • 環境に関するデータの収集、分析、報告がカギを握る
  • 農業や水ソリューションなどのような、生物多様性関連ソリューションを支える特定戦略が投資を主導すると思われる

地球の生物多様性システムは劇的な速さで劣化しており、その損失は自然界だけでなく、より広範な地球、社会、世界経済に損害を与えています。

世界経済フォーラムでは、世界GDPの半分以上(およそ44兆ドル1 )が高度な生物多様性に依存すると推定しています。このため、今や生物多様性の損失をシステミックリスクとする認識がますます高まっています。

投資家にとって、生物多様性リスクがポートフォリオの長期リターンにどのように影響するか、そしてそれをどのように管理するのが最善かを理解することは、戦略全体の一部に過ぎません。投資家はまた、社会面や環境面で良好な成果を上げるためにプラスの貢献を行う方法も考慮する必要があります。

アセットマネージャーは単独では環境危機に対処できませんが、企業や発行体と関与し、お客様の資本を振り向けることで、人々の命や生活の保護において役割を担うことができます。

アセットマネージャーが生物多様性の課題に応えるには、極めて重要な4つの要素が要件となると当社は考えます。

1:生物多様性を気候変動と並ぶ優先課題とする

棲息地の破壊と人間の食料システムが温室効果ガス排出量の約25%の原因となっていることは周知の事実です。そして気候変動は、生物多様性の損失のますます大きな要因となりつつあります。陸地および海洋の生態系は、人間による炭素排出量の半分以上を吸収します。2 この相互依存性および相互連結性は、気候変動と生物多様性の損失が合わせて対処しなければならないことを意味します。

しかし気候変動が単一の指標、つまり炭素排出量に焦点を当てているのに対し、生物多様性は多面的です。自然界のような複雑なシステムにダメージを与えることは、計り知れない経済的影響を招きます。

たとえば農薬や肥料を使用して土地を集中的に耕作することで、農作物の収穫が減少し、土地が食料の生産を続ける能力が制限されます。そして農業の拡大は、地球の陸表面の3分の1以上が作物および家畜に利用されるまでに至っています。3

上水の汚染は影響を受ける者にとって酷い結果を招くだけでなく、それを引き起こした企業は評判や規制上の反発リスクにさらされ、罰金や課税引き上げにつながる可能性があります。消費者が製品ボイコットをする可能性もあります。

これらはアセットマネージャーが無視できないリスクです。したがってアセットマネージャーが顧客のために長期的な投資の検討・運用判断を行うに当たって、生物多様性を気候変動と同等の優先課題としなければなりません。

2:生物多様性に関して特定のエンゲージメント戦略を実施

生物多様性が投資マネージャーにとって主流の関心事となってきたのは近年に過ぎません。このため、画期的な「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」と類似した、包括的なリスクと開示の枠組みがこれまで欠如していました。

9月にTCFDの類似の枠組みである「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の最終版公開が予定されており、前進に向けた主要な一歩となるでしょう。

企業の環境フットプリントに関する報告の質が高くなれば、アセットマネージャーが最もリスクの高い企業を特定し、個々の企業がどのように環境に影響を与えているかを把握するためのより良い支援となるでしょう。

これは、単一の指標が欠如した世界を進む上で極めて重要であり、企業がビジネスモデルと行動を改善するための長期計画について、より詳細な取り組みも容易になるでしょう。

それでもなおアセットマネージャーは、独自の生物多様性エンゲージメント戦略を実施する必要があり、そうでなければ有意義な環境の変化を引き起こす機会を無駄にするリスクがあります。

3:データを利用

生物多様性と生態系の保全が今や緊急の優先課題であることから、環境に対する投資のインパクトを測定するための指標やツールが極めて重要です。このため、環境に関するデータの収集、分析、報告がカギとなります。

今日、アイスバーグ・データ・ラボ(Iceberg Data Lab)のような企業が、発行体や資産のバリューチェーンを通した環境負荷を示す評価ツールやデータソリューションを提供しています。4

さらに「ビッグデータ」の進歩により、衛星画像やその他の技術により、環境がどこでどのように変化しているかを正確に示す信頼性の高い画像が得られるようになり、水質や土壌浸食といったファクターの監視がはるかに容易になっています。

これにより投資家は、生物多様性関連のリスクと投資機会の詳細な評価ができるようになり、したがってより多くの情報を得た上での投資の意思決定ができるようになります。

ただし、適切なツールをもつことは、すなわちアセットマネージャーがそれを使用することを必ずしも意味しません。生物多様性の損失に対処するための真意な姿勢が必要であり、まだそれがセクター全体に浸透しているわけではありません。

4:生物多様性ソリューションを支える戦略を開発


炭素排出量と同様に、生物多様性への投資アプローチには二面性があります。生物多様性フットプリントを削減している企業に資本を配分することで、リスクの緩和を目指すことができます。しかし、生物多様性にやさしいソリューションにも配分できます。後者は、環境に真のインパクトを与えようとしている投資家の意欲をそそると当社は考えます。

こういったソリューション領域の企業は、自社のフットプリントを超えて、生物多様性の保全にプラスのメリットを与えられる製品やサービスを開発します。この中でカギとなる分野には、農業、水産、水処理、持続可能な材料などがあります。

これらの分野にはすでに、耕作、食用魚の養殖、食品・飲料の包装、その他多数の活動方法を改善する投資機会やイノベーションが無数にあります。このようなソリューションを開発する企業を支持する投資戦略が多ければ多いほど、より良いことになります。

このソリューション領域では、政策が究極的にカギとなるでしょう。食品のプラスチック包装の禁止などの政府介入は、いずれ実現することであり、将来の法律で有利となる側にある供給企業にとっては状況を一変させるものとなるでしょう5 。しかし、これらの企業によるスケールアップやイノベーションを支援するには、それらに資本を振り向けることができる特定の生物多様性戦略が必要です。

180億ドル(約2兆6,000億円)の民間資金を含む、年間約1,330億ドルが自然に基づくソリューションに投資されていますが、世界が気候目標を達成する意思であるなら、この金額は2030年までに少なくとも3倍に増やす必要があります。そして、持続可能な世界経済を支えるには、生物多様性の損失により万人に起こりうるリスクに対処するために、単一目標の投資戦略数を増やす必要があります。

(オリジナル記事は8月1日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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