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エネルギーの測定:損失と効率に電化という明るい兆し


主なポイント:

  • エネルギーは、私たちに熱、光、そして機械やエンジンを動かす力を提供してくれる、必要不可欠なものである
  • 社会は化石燃料に依存し、また、バイオマス、風力、水力などの自然も利用している
  • 電力システムに投入されるエネルギーの3分の2は無駄になっている。従来の効率改善と、工程や最終用途を電化することによってさらに効果的に、これらの損失を小さくすることが可能となる
  • エネルギー効率化を実現できる企業や、広範な電化エコシステムに投資する機会はますます増えていると思われる

米国エネルギー情報局 (EIA) は、エネルギーを次のように定義しています。「科学者による定義では、エネルギーは仕事をする能力です。現代の文明が可能なのは、人々がエネルギーをある形から別の形に変え、それを使って仕事をする方法を学んできたからです。人々は、歩いたり自転車に乗ったり、車で道路を走ったり、船を水で進めたりするためにエネルギーを使います。加熱機器で食べ物を調理したり、冷凍庫で氷を作ったり、家やオフィスを照らしたり、製品を製造したり、宇宙飛行士を宇宙に送り出したりと、さまざまなことにエネルギーを使います。」1

言い換えると、エネルギーとは私たちに光、熱、そして運動をもたらすものです。

エネルギーは政治的および公共の優先事項となっています。すべての経済主体、そして投資家に、より環境に配慮した方向に転換することへの圧力がかかっています。これはつまり、再生可能エネルギーの大規模な拡充が必要であることを意味します。産業工学や技術の革新が、地球温暖化目標に向けた動きを先導し、それによって長期的な投資機会がさらに広がる可能性があります。

図表1は、エネルギー・システムの始めから終わりまでを示し、私たちの日常生活における実用的な意味を表しています。

図表1:世界のエネルギーシステムにおける熱と仕事



出所: “From using heat to using work: reconceptualising the zero carbon energy transition”, Nick Eyre, Energy Efficiency, 2021年9月

社会のエネルギー・システムの顕著な特徴の一つは、エネルギーの多くを無駄にしていることです。例えば、米国では、最終消費者は、供給されるエネルギーの3分の1だけを移動、料理、または工場の運営などに使っています。

図表2:2022年の米国のエネルギーフロー

出所: Energy Flow Charts | Flowcharts (llnl.gov).  図内の数字はエネルギー(熱量)を示し、単位はクアッド。

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供給と消費の間のギャップ

基本的に、エネルギーの79%は依然として化石燃料2 から供給されています。石炭や原油、天然ガスが、電気、輸送用燃料、または熱など有用なものに転換される際に、また、機械やエンジンが稼働している間に、多くのエネルギーが熱に変わり、漏れ出したり摩擦によって失われます。

一般的な石炭火力発電所のエネルギー収率は約35%であり、つまり石炭原料が持つエネルギー量の65%が失われるということを指します。現代のコンバインドサイクル(ガスタービンと、その余熱を使った蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方法)発電所の場合、その損失は約55%であり、最高品質のものでは40%以下3 です。

これについてより理解を深めるために、以下にいくつかの定義を示します。

供給

  • 一次エネルギーまたは一次エネルギー総供給量 (TES):転換されずに直接利用されるすべてのエネルギー製品。主に原油、天然ガス、石炭、バイオマス、太陽光、水力エネルギー、風力エネルギー、地熱エネルギー、およびウラン核分裂から採取されたエネルギーを含む
  • 二次エネルギー:一次エネルギーを輸送可能な形態に転換したものから得られるすべてのエネルギー。主に化石燃料やウランからの電気、ガソリンやディーゼルなどの液体燃料、および熱を含む

消費

  • 最終エネルギーまたは総最終エネルギー消費量 (TFC): 家庭での電気やガソリンスタンドでのガソリンなど、最終消費者が購入し、受け取るエネルギー
  • 有効エネルギーまたはエネルギーサービス:最終消費者がそのニーズを満たすために利用できるエネルギーのこと。提供されるエネルギー・サービス。TFCの一部。例えば、自動車、トラック、飛行機であれば、車両の移動やガスボイラーによる熱供給を指す
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国際エネルギー機関 (IEA) は、供給 (TES) と消費 (TFC) の推移とそのギャップを記録した詳細なエネルギーデータを提供しています。下のグラフでは、エネルギーがどこでどれぐらい失われているかを詳しく見ることができます。

図表3:供給から消費へ 
 

出所: IEA, World Energy Balances Highlights、2023年9月 (単位:エクサジュール)

このグラフから以下のことがわかります。

  • エネルギー供給の大部分が転換時に失われている
  • 電気と熱を生産する際に60%以上の損失が発生している

一次エネルギーと最終消費量の間の損失に加えて、実際に最終消費者がエネルギーを使用する場合に、最終消費量と有効エネルギーの間に追加の損失があります。ガソリンは車を動かすことはできますが、自動車のエンジンが発する熱を利用できません。これは図表4に示されています。最終的に、一次エネルギーの約3分の2が廃棄されます。つまり、社会では使われていないということです。

図表4:一次エネルギーから有効エネルギーへ
 


出所: IEA、EIA、ローレンス・リバモア国立研究所


効率化に向けて推進

論理的に出てくる問題は、これをどのように変更するかということです。どうすれば有効エネルギーの割合を増やし、損失を削減できるか?物理法則を打ち負かすことはできませんが、「効率」と「電化」という、2つの重要で相互関連性のある手段によって、状況を改善する方法があります。

偶然ではありませんが、2023年の国連気候変動会議COP28の結論の一つは、「2030年までに再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍にし、エネルギー効率の世界年間平均向上速度を2倍にする」というものでした。4

効率とは、より低いエネルギー消費量で同じ出力を得るか、同じエネルギー消費量でより多くの出力を得ることです。IEAによれば、過去20年間のエネルギー効率は年平均でわずか1%以上の改善にすぎませんが、5  近年はもっと良い結果が出ています。実際、COP28の合意では、効率に関する専用の誓約を含め、年間4%の効率性向上を達成することが求められています。6

そのためには、たとえば、より良い住宅断熱、まだ高価な電気自動車の利用または公共交通機関を支援する政策といった、より効率的な解決策を支援するための適切な政策が必要です。政策はまた、電化を広く支援する必要があります。産業や人々に電化を促すことは理にかなっています。なぜなら、電力で動く機械は常に化石燃料で動く機械よりも効率的だからです。

図表5は、複数の製品や設備の電気と化石燃料の経路のエネルギー効率を比較したものです。データは消費時点でのものであり、グリッド(電力供給統合システム)内の電力損失や原油を精製製品に変換する際のエネルギー消費などの損失や非効率性を考慮していません。

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図表5:エネルギー効率またはエネルギー投入量に対するエネルギー排出量

出所: US EPA、IEA、US DOE

ガソリン・エンジン車について、米国環境保護庁 (EPA)7 は、車を動かすために使われるエネルギー効率が、高くても16%から25%であると推定しています。純粋な電気自動車の場合、この割合は87~91%であり、回生(エネルギー回収)ブレーキを含まない場合は65~69%です。

全体として、電化はエネルギー網に沿って発生する熱の損失や漏れを排除するか、大幅に削減します。

さらに、電気が再生可能であれば、つまり化石燃料に基づかない場合、一次エネルギーから二次エネルギーへの転換損失も排除されます。しかし、太陽光発電所や風力発電所は、設備稼働率が低い傾向があるために、すべてがグリーンというわけではありません。

このため、電化と効率化を相互関連性のある手段と見なしています。

したがって、エネルギー転換の一般的な経路を考えると、論理的には次のようになります。

  • できることは電化する:軽中量貨物輸送、一部の重量貨物輸送、暖房・換気・空調、エンジンとモーター、低中温度産業熱
  • 電力生産の脱炭素化電気が解決策ではない領域に取り組む:高温産業熱 (850°C以上)、航空機、長距離航海、一部の重量貨物輸送やオフロード機器。
    主な選択肢は、バイオ(植物由来)エネルギー、水素、または合成燃料(e-fuel(イーフューエル)、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料)に見出されます

投資家の観点からは、エネルギーの効率化を実現できる企業や広範な電化エコシステムへの投資機会が存在することを意味します。これらは新しいトレンドとは程遠いかもしれませんが、構造的なものであり、長期的な展望を提供するものでもあると思います。


(オリジナル記事は2月28日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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