ユーロクレジットは予想されるマクロ経済の混乱に耐えられるか?
社債市場は2024年も比較的魅力的なリターンを提供し続けると見ており、利回りは2022年と同様の水準で年末を迎えることと思います。それにもかかわらず、最近のマクロ経済データの動向次第では険しい道となる可能性があります。S&Pグローバル社による3月のユーロ圏PMI速報値の各データはまちまちの内容でしたが、欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)による3月のユーロ圏消費者信頼感指数は低下を示しました。これに加えて、ユーロスタットが発表した2月のインフレデータは全般的にはインフレ率の低下傾向を示したものの、コア・インフレ率が予想に反して前月より増加しました。
消費者需要の鈍化と利益率の圧迫により、企業には課題がいくつか見られますが、強固な出発地点から恩恵を受けています。 つまり、企業がパンデミック下で比較的安価になっていた資金調達条件を利用してバランスシートを強化することができました。その結果、企業のバランスシート上の現金の水準は低下傾向にあるものの4,800億ユーロあり、依然としてパンデミック前の水準よりも23%増加しており、運転資本と設備投資に必要な増加額を補っています。1
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投資適格社債は引き続き投資機会を提供すると見ている
全体として、当社グループはユーロ圏の投資適格社債は今後も引き続き堅調に推移すると予想しています。 欧州のインフレ率が低下を続け、ユーロの為替相場が安定している限り、セクターによっては、投資家にとって興味深い選択肢を提供する可能性があると見ています。
現在、金融機関の優先社債は事業会社の社債と比較してリスク・リターン・レシオが15ベーシスポイント(bp)高く、比較的魅力的な水準を提供しています。2 当社グループは、2024 年の収益に関して予想を上回るほどの上方修正は期待していないものの、むしろ強固な出発地点から業績の傾向が正常化することを期待しています。さらに、銀行の純利ザヤは 2024 年に若干低下する兆候が見られますが、引き続き安定しており、過去の平均を上回ると見ています。もちろん、当社グループが投資価値を見出しているセクターであっても、悪魔は細部に宿ると言われています。金融優先債部門は2月にスプレッドが4bp3 縮小しましたが、これにはドイツの銀行セクターと他のセクターとの差が隠されています。つまり、ドイツの中小の銀行では実際にはスプレッドが拡大していました。
不動産セクターも当社グループが投資価値を見出しているセクターの1つですが、その理由として、住宅不足と物価指数(オフィス、物流、小売)による比較的回復力のあるバリュエーションと賃貸収入の増加により、バリュエーションが比較的魅力的な水準にあります。このセクターでは銘柄の選択が重要であり、安全な資金調達市場を活用できる大規模で分散化されたストラクチャーを持つ銘柄に投資価値を見出そうとしています。
経済見通しが不透明なことから、公益事業などのディフェンシブセクターも検討する価値があると思われます。このセクターは、景気後退の場合にポートフォリオのリスクを軽減できる可能性があることに加えて、収益とキャッシュフロー生成が可視化されているため、特に発行市場において比較的魅力的なバリュエーションを提供すると見ています。
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景気減速時のハイイールド社債
ハイイールド社債の発行体は、資金調達コストが上昇しているものの、堅調な業績、比較的低水準の債務、潤沢と思われる流動性のおかげで、軽度のリセッション(景気後退)には対処できる有利な状況にあると見ています。さらに、ハイイールド社債の基本的な強みは、市場が合理的に許容できると思われる財務状況の下で、発行体が債券とローン市場の両方を活用できる状況によって強化されていることと見ています。その結果、デフォルト率は上昇すると予想されるものの、過去の平均を下回る水準にとどまると予想されます。
当社グループは、魅力的な利回りと強力なファンダメンタルズという出発点に基づいて、いくつかの興味深い投資機会を見出していますが、マクロ経済の逆風が続くため、慎重かつ選択的な投資戦略が必要と考えています。現在、ハイイールド社債は、ポートフォリオに金利収入とトータルリターンの両方をもたらす可能性がありますが、特異な状況に見舞われる場合には、リターンにばらつきが広がることも考えられます。利益率が低く、失敗の余地があまりない脆弱な企業が影響を受け易いと見ています。さらに、問題を抱えた発行体は資本市場の活用や今後の満期時の借り換えに苦労する可能性があり、ハイイールド社債部門のリスク要因となります。
経済指標はまちまちの状況を示しているために、ユーロ圏社債全体に分散投資することは、相場変動の影響を軽減するのに役立つと見ています。当社グループは、セクターと国の配分に柔軟な戦略をとり、デュレーションを積極的に管理することで、投資家が 2024 年以降もユーロ圏社債への投資機会を最大限に活用できる可能性があると考えています。
(オリジナル記事は3月27日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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