
米国ハイイールド債券市場は不確実性の小休止をもたらすことができるか?
- 2025年3月7日 (5 分で読めます)
主なポイント
米国ハイイールド債券市場では何が起こっているか?
2024年に8.2%のリターンを記録した後1 、マクロ経済と地政学の両面で市場に影響する可能性のあるさまざまな要因にもかかわらず、米国ハイイールド債券市場は2025年、これまでのところ相対的に安定して推移しています。1月末の人工知能(AI)及びDeepSeekのニュース、米国関税に関する発表、各種経済データの発表とそれに続く金利の動きなど、投資家は、市場の向かう方向について見解をまとめようと努めるなか、株式市場は日々相対的に大きな変動の中で推移しています。
今年は、米国のハイイールド債券市場は堅調なパフォーマンスを示しており、スプレッドは1月までに約30ベーシスポイント(bp)縮小し、その後2月に拡大しましたが、現在(執筆時)は年初よりは狭い280bp程度となっています2 。格付けの観点から見ると、パフォーマンスにおいては最も格付けの低いCCC格市場が、B格市場およびBB格市場を引き続き上回っており、同時にCCC格市場では引き続きスプレッドの圧縮が進んでいます。
トランプ関税に関しては、米国ハイイールド債券市場は国内に重点を置いており、影響をそれほど受けないと考えています。米国ハイイールド債券指数のうち米国国内企業が約90%2 を占めており、一部のセルサイドレポートでは、米国ハイイールド債券の発行企業が海外で生み出す収益は15%未満であると推定されています。これに対し、投資適格債券の発行企業には多国籍企業の割合が高く、米国以外の企業が27%含まれています。3 しかしながら、特に関税によるインフレへの影響の可能性を考慮すると、サプライチェーン(供給網)の混乱や企業や消費者の信頼感低下による間接的影響が発生する可能性もあると見ています。貿易戦争の激化により最もリスクが高くなると見られているハイイールド債券市場として、自動車、小売、消費財などのセクターがあげられると考えます。
技術的な要因も、需要は供給を上回っていることもあり、引き続きハイイールド債券市場を後押ししています。新規発行市場では、新規発行量は2024年と比較して年初来ベースで減少となっています。これは、金利変動や関税に関するニュースが一因であるとともに、レバレッジドローン市場で資金調達されている取引も一部その理由となっています。レバレッジローン市場では、2025年の最初の2カ月間で総発行量が過去最高を記録しています。
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米国ハイイールド債券市場の見通しは?
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2025年の残りの期間、政策金利を据え置くことが予想されており、債券利回りは引き続き現在の水準付近で推移し、収益が引き続き主な原動力となると考えられます。ただし重要なのは、現在発行体にとって借り換えの経済性が大幅に改善されていることであり、米国ハイイールド債券市場の平均利回りと平均クーポンの差は、過去数年間300bpを超えていた状況に対し、現在では平均利回り7.2%と平均クーポン6.4%となり、差は約80bpにまで収束しています4 。
これにより、発行体は借り換えを継続すると思われ、すでに今年初来400億米ドルの新規ハイイールド社債発行のうち約75%が借り換えに使用されていることが確認されており、これは2024年と同様のレベルとなっています5 。また、2025年に満期を迎えるハイイールド社債はわずか300億米ドルに留まります6 。重要なのは、2025年に満期を迎えるハイイールド社債の60%がダブルB格付けであるのに対し、ローン市場では0%であることです。6
トランプ大統領は規制緩和を推進し、主な規制機関に「企業に優しい」リーダーを任命しており、今後はM&Aに関連した社債発行が増加することが予想されます。これは通常、投資適格付け企業がハイイールド格付け企業を買収したり、またはより大きなハイイールド格付け企業がより小さなハイイールド格付け企業を買収したりするようなケースで、それが投資機会につながる可能性があると見ています。
米国ハイイールド社債市場のデフォルト率は低下を続けており、1月にはディストレスド・エクスチェンジ(経営難に伴う債務交換)を除くと0.3%、ディストレスド・エクスチェンジを含めても1.4%の水準であることを考えると、スプレッドは歴史的基準に比べると狭いとはいえ、受け入れられる程度の割高感であると、アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ(以下、アクサIMといいます)では引き続き考えています7 。また、信用度の改善、担保付き債券の割合の増加、流動性の向上、そして現在のハイイールド社債市場のデュレーションが過去と比べて短いことなど、ハイイールド債券市場の構造的変化により、現在のスプレッドの水準を過去15~20年間と比較することは、おそらく本質的に誤りではないかと見ています。
こうした構造的変化に加え、ハイイールド債券市場のファンダメンタルズは堅調に推移しています。つまり、バランスシートも概ね相対的に健全で、レバレッジは相対的に低く抑えられ、借換えで満期が後ろに伸び、金利カバレッジ比率(会社の債務返済能力を測る指標)は依然として世界金融危機後の平均を上回る水準を維持しています。
2025年は一年を通してボラティリティが高まる可能性は高いものの、ハイイールド債券市場のキャリー(市場の状態に変化がない場合に一定期間内に得られるリターン)は投資家の短期的な不確実性を補うのに十分であると考えています。言い換えれば、ハイイールド債券戦略の投資家は、状況がより明確になるまで待つことで利益を得られると考えています。
このような環境において、どこに投資機会があるのか?
アクサIMはすべての戦略において、マクロ経済に関して多くのノイズがある中、基本的な銘柄選択プロセス内で一貫性を保ち、債券発行の可能性が高い時期を判断することでアナリストチームとともに価値を見出すことを目指しています。これは例えば、市場予想よりも長く存続すると思われる債券を見極めたり、予想よりも早く発行される債券についてより良好な価値を判断したりすることです。
アクサIMの見解では、金利変動が激しい環境を考慮すると、短期デュレーション債券戦略は引き続き相対的に良好であると言えます。同時に、米国ハイイールド債券市場の利回り曲線は、最近の米国債市場の利回り曲線の急勾配化にもかかわらず、依然ある程度平坦なままであり、これは、デュレーションを短くしても市場全体の利回りの85~90%を継続的に獲得していることを意味すると見ています。
トータルリターンの向上を追求する戦略においてリスクがさらに高まる場合、市場で最も利回りの高い領域でスプレッドが縮小していることを考慮して、よりディフェンシブな債券ポジションを選択すると見ています。その代わりにアクサIMでは、特異な投資機会に重点を置き、確信度を保有割合に反映するようにしています。アクサIMは、潜在的なボラティリティをきっかけとして活用し、ポートフォリオにリスクを再び追加したいと考えています。
全体として、ハイイールド債券市場は低金利時代の終焉によって、バランス型ポートフォリオにおいてより適切な役割を果たすようになり、独特の分散特性と株式市場に似たリターンの可能性を提供しつつも、その変動性リスクは相対的に低いと見ています。この資産クラスをポートフォリオの中核に維持することで、長期的には相対的に良好な価値につながる可能性があるとアクサIMは考えています。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
(オリジナル記事は2月28日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
本資料で使用している指数について
ICE BofA 米国社債マスター指数、ICE BofA 米国ハイイールド指数:ICEデータ・インデックス社が公表している米国社債の値動きを示す指数、及び米国ハイイールド債券の値動きを示す指数です。
※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。
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