
関税: インフレリンク債券戦略の今後
- 2025年4月7日 (3 分で読めます)
主なポイント
トランプ大統領の「解放の日」に、市場が予想していた以上に厳しい関税が導入されました。導入段階が完了すると、米国の関税は約25%に増加し、100年以上ぶりの最高水準になる見込みです。昨年末は2.3%でした。アクサIMは、関税引き上げは過去数ヶ月間にわたって予測してきた米国におけるスタグフレーション(リセッションとインフレが同時進行する経済状況)環境の実現に明確につながると考えています。実際、米国のリセッションの確率は高まり、市場はこの見通しを織り込もうとしており、その動きは株式市場の下落やクレジットスプレッド(発行体の信用力の差に基づく利回りの差)の拡大に現れています。米国との貿易への依存度が相対的に高いカナダやメキシコ、ユーロ圏はリスクにさらされていると見ています。しかし、ユーロ圏の財政刺激策は一定の相殺効果を生むことができ、一方で、中国の財政見通しはあまり明確に景気を支えるものではないと見ています。総じて、経済成長の環境は下向きに傾いており、全体として、国債市場を支える状況になっていると考えています。
金融政策に関しては先週、ほとんど発表がありませんでした。米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4月4日金曜日に、関税がインフレに持続的な影響を及ぼし、成長を鈍化させる可能性があると述べました。アクサIMは、株式市場がさらに下落し、金融条件が実質的に引き締まる結果にならない限り、FRBは先行して行動することはしないだろうと考えています。
他の地域では、世界的なリセッションリスクが高まる中で、欧州中央銀行(ECB)が金利を1.5%に引き下げ続けると予想しており(4月と6月に連続して)、イングランド銀行(BoE)も5月、8月、11月に金利下げする見込みですが、インフレ圧力が高まっています。
そして、この環境下でインフレリンク債券には…まだ意味があるのか?
4月3日の発表の後、市場の反応は、金利の大幅な低下と短期的なインフレ期待の高まりの形で現れました。特に米国においては、実質利回りは名目利回りと同様にブル・スティープニング(短期金利が長期金利以上に低下しながら金利曲線の傾きが急勾配(スティープ)化すること)の形で低下しました。関税の実施によって来年の米国インフレが最大で2%引き上がる可能性があるため、スティープ化は非常に論理的な反応に感じられました。加えて、継続的な移民制限が労働市場を引き締め、サービスのインフレを構造的に引き上げる可能性もあると見ています。
しかし、4月4日には、OPECプラスが予想外の石油増産を発表したために、ブレイクイーブンレート(BEI、名目国債とインフレリンク国債の収益率が等しくなるインフレ率)の売りを引き起こし(その日は約15ベーシスポイント(bp)の下落)し、10年未満の実質利回りが上昇しました。アクサIMの見解では、4日の市場の混乱した反応はブレイクイーブンを相対的に良好な水準に戻しました。インフレリスクは依然として上向きと見ています。これは、ユーロ圏を含むすべての市場に当てはまり、アクサIMでは楽観的見方を後退させています。実質利回りの低下とブレイクイーブンレートの修正を考慮すると、今後数ヶ月の間に実際のインフレ率が市場の期待インフレ率を上回る場合、インフレリンク債券が名目債券よりも高いパフォーマンスを示すと見ています。
実質デュレーションに関する考え:慎重にロング
市場の変動性が高まっているため、アクサIMはインフレリンク債券投資戦略において保有する米国長期デュレーションのポジションの内5年債券の領域で利益確定を行いました。実質利回りが低下すると予想していましたが、水準が既に年末の目標である1%に達し、このポジションを中立化することにしました。とはいえ、4月4日のパウエル議長の発言後の売りは行き過ぎのように見え、ポートフォリオに新たなロングポジションを追加するための水準を注視しています。他の地域では、アクサIMは長期の実質利回りを保持することを選好しており、欧州や英国において財政によって誘発される将来の成長が過大評価されていると見ています。
ブレイクイーブンに関する考え:石油価格に影響を受けたバリュエーション
金曜日、OPECプラスが需要ショックに加えて5月の生産量をさらに増産することを発表したため、原油価格は2021年以来の低水準に下落しました。しかし、石油に起因する売りであるものの、ブレイクイーブン・フォワードレートは売られ、アクサIMは、ブレイクイーブンのバリュエーションが相対的に良好な水準になったと考えています。別の観点から、米国の関税に対して欧州連合(EU)が課す可能性のある報復関税は、HICPにインフレ的な影響を及ぼす可能性があり、サプライチェーン(供給網)の世界的な混乱が地域の価格を上昇させることにもつながると見ています。米国においてリセッションリスクが高まる中、アクサIMは米国CPI(消費者物価指数)とHICP(ユーロ圏消費者物価指数)に関する10年のクロスマーケット・ブレイクイーブン取引で利益を全て確定することを決定しました。
関税の拡大は、些末な出来事ではなく、制度の変化ともみなされるものであり、リセッションリスクはもはやテールイベントではなく、ベースラインとなっています。この環境下では、インフレリンク債券投資戦略は他の戦略と異なるパフォーマンス上昇の可能性を提供する可能性があると見ています。ブレイクイーブンレートの水準訂正の動きは、主要市場でインフレ圧力が構造的に過小評価されているため、希少な投資開始の好機を示していると見ています。実質利回りは、成長の悪化や金融条件の引き締まりと一致しない水準に近づいており、戦略の再考が必要と見ています。アクサIMは、明確な前進の道があると信じています。つまり構造的なインフレから恩恵を受ける資産を保有し、成長の楽観主義を後退させ、変動性が新しい無リスク金利となるような世界に備えてポジションを維持することを考えています。注意すべきことと考えますが、市場は平均回帰を前提としていると見ています。そして、市場はパラダイム(価値観)の変化に対する準備ができていないと見ています。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
(オリジナル記事は4月7日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
ご留意事項
本ページは情報提供のみを目的としており、特定の有価証券やアクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ(アクサIM)またはその関連会社による投資、商品またはサービスを購入または売却するオファーを構成するものではなく、またこれらは勧誘、投資、法的または税務アドバイスとして考慮すべきではありません。本資料で説明された戦略は、管轄区域または特定のタイプの投資家によってはご利用できない可能性があります。本資料で提示された意見、推計および予測は掲載時の主観的なものであり、予告なしに変更される可能性があります。予測が現実になるという保証はありません。本資料に記載されている情報に依拠するか否かについては、読者の独自の判断に委ねられています。本資料には投資判断に必要な十分な情報は含まれていません。
投資リスクおよび費用について
当社が提供する戦略は、主に有価証券への投資を行いますが、当該有価証券の価格の下落により、投資元本を割り込むおそれがあります。また、外貨建資産に投資する場合には、為替の変動によっては投資元本を割り込むおそれがあります。したがって、お客様の投資元本は保証されているものではなく、運用の結果生じた利益および損失はすべてお客様に帰属します。
また、当社の投資運用業務に係る報酬額およびその他費用は、お客様の運用資産の額や運用戦略(方針)等によって異なりますので、その合計額を表示することはできません。また、運用資産において行う有価証券等の取引に伴う売買手数料等はお客様の負担となります。
アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
金融商品取引業者 登録番号: 関東財務局長(金商) 第16号
加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、日本証券業協会
お問い合わせ先:TOKYOMARKETING@axa-im.com