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Investment Institute
マーケット見通し

2024年が好調な年となった米国の経済と市場の次なる展開について

主なポイント
米国経済と市場にとって2024年は比較的優れたパフォーマンスの年となっており、また、金利は低下に向かっています。現在市場で強まってきた問題は、だれが次の大統領になるのかということです
長期的な米国政府財政見通しは、難しい課題のまま残っていますが、大統領候補の二人ともまだこの課題に取り組んでいません
テクノロジーや人工知能(AI)、再生可能エネルギーは引き続き投資戦略の重要なテーマと見ています

今年は米国が世界の金融市場を左右することが多くなっています。米国の経済は4~6月期の国内総生産(GDP)成長率が年率3.0%となり、市場予想を超えて成長しています。

年初から現在(執筆時)までのS&P500指数のトータルリターンは約22%であり、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ鎮静化に成功しつつあると思われる為、米国債券市場も比較的良好なパフォーマンスを示しています。1

金利が低下し始め、米国企業の堅調さを受けて社債などクレジット市場も比較的好調な動きを示しています。S&P500グロース指数を株式部分とし、ICE BoA米国ハイイールド指数を債券部分として、資金を半分ずつ配分した場合に、年初から現在までのリターンは約18%の上昇となりました。

2025年を考えるときに、11月の大統領選挙は非常に重要であると思います。可能性が比較的高いと思いますが、新型コロナのパンデミックから回復して以降経済成長を促してきた政策と似通った政策が継続されると考えています。

バイデン - ハリス政権は、複数の議会法を成立、実施し、インフラに焦点を当て、テクノロジー分野での米国のリーダーシップを確保することにより、米国での投資を後押ししてきました。

今年4~6月期の総設備投資支出は、年率換算で8.3%増加しました。2  これは企業の自信の表れであると見ています。別の可能性として、減税と保護主義的な貿易政策が組み合わせて導入され、今後何年かマクロ経済の見通しに混乱を来たすことが考えられます。

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財政上の課題

11月の大統領選挙に関して、ハリス候補、トランプ候補ともに対応を示していない事柄の一つは長期的な財政見通しです。米国議会予算局(CBO)の基本予測では、今後10年間、財政赤字が国内総生産(GDP)に対して約6%のまま推移し、累積連邦債務が10年後にGDPに対して約122%に達するとしています。3

このことを懸念する債券投資家の中には、選挙後の経済政策によって累積債務や財政赤字が現在の予想を超えてしまうのではないかと心配する意見もあります。言い換えると、政府の借り入れが増加すると長期金利に上昇圧力がかかり、その結果、税制政策が金融政策の意思決定を左右することにつながるのではないかと心配しています。

現在、財政赤字への懸念は債券市場に影響を及ぼしていると思いますが、それは、2024年に低下してきた利回りに対して影響するのではなく、国債利回りや金利スワップに対する相対的な水準に影響していると見ています。これは、イールドカーブ(利回り曲線)全般にわたり現れており、特に長期部分に最も顕著に現れていると見ています。つまり、市場が求めているのは、投資家としては、財政への懸念がある限り、長期国債を保有するためにはもっと高いプレミアムが必要だということであると、考えています。

国債のリスクプレミアムは依然として比較的低い水準にあると見ています。より広く市場を見てみると、こうした懸念は投資家の間ではあまり広がっていないと思われ、実際、債券市場は比較的良好なパフォーマンスを示しています。米ドルも、ユーロや円に対して最近では幾分下落したとはいえ、パンデミック後にすぐ上昇した比較的高い水準付近にとどまっています。

政治的な意思があれば、米国経済は財政赤字に対処できるほど十分に豊かであると思いますが、財政問題が政治の焦点となるほどに顕在化してくるためには、市場が懸念をもっと強くする必要があるかもしれません。このことは次期大統領のテーマになると思いますが、もし財政見通しが無視されたままであれば、次期大統領の期間にリスクを引き起こす可能性があると見ています。

AIとテクノロジーが依然として原動力

財政問題と異なり市場にとってもっとプラスの点として、米国はテクノロジー分野で支配的な立場にあり続けるのに適した立場にいると見ています。 生成AIに対する市場の興奮は今年6月に頂点に達し、それ以降、テクノロジーセクターは市場全体に比べるとパフォーマンスが劣っています。

しかし、企業の業績見通しや新製品、新サービスを見ると、企業の業績成長は比較的堅調なまま続くと考えています。AIテクノロジーは消費者向け製品に普及が進んでいる一方、この技術革新は初期段階にすぎないと見ています。このテクノロジーが農業から教育まで様々な経済セクターにわたって適用されていけば、生産性の向上が広範囲に広がっていくうえでプラスの効果があると見ています。

来年について、経済成長が続く一方で、金利の低下が続くと見ています。このソフトランディング状況は、金融市場のリターンにとってはプラスの環境であると思います。2024年は予想外と言っても良いほどの年と思います。経済成長は予想を上回り、失業の穏やかな増加とインフレの鎮静化という背景の下、FRBは政策を方向転換して、利下げに向かうことができました。

2025年も同様のポジティブ・サプライズが起こりうるかどうかはよくわかりません。政治的には不透明な状況にあります。市場では、バリュエーションが割高の水準にあると思われます。株式市場では、2025年に企業の業績が力強く成長することは、企業アナリストらの予測に既に織り込まれていると見ています。従って、政治リスクや潜在的な信用問題が表面化し始める場合、特に失業率が上昇に向かう場合には、市場は調整局面を迎える可能性があると見ています。

しかし、米国の経済成長は依然として他の先進経済圏を凌駕していると思います。AIへの投資や、データセンターに必要な電力を供給する再生可能エネルギーへの投資、送電網の拡張に向けた投資が続くことが、引き続き主な投資戦略のテーマと見ています。しかし、もし貿易紛争を避けることができ、政府の財政状況に幾分なりとも注意が向けられるのであれば、市場にはプラスであると思います。

金利の低下は、企業や消費者の支出能力にとってプラスであると考えています。また、過去にこれまでしばしば起こっていたことですが、企業や消費者が支出を続けることができることについては、過小評価すべきでないと思います。

企業への参照は例証のみを目的としており、個別銘柄への投資を推奨するものではありません。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は10月3日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

本資料で使用している指数について

ICE BoA 米国ハイイールド指数:ICEデータ・インデックス社が公表している米国のハイイールド社債の値動きを示す指数です。

S&P500指数:S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出する米国の500社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

※本資料中の指数等の著作権、知的財産権、その他一切の権利はその発行者に帰属します。

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