欧州の「配管問題」(注目されるECBの超過準備への対応)
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ECBが今週の政策理事会で75bpsの利上げを行う可能性が高いが、焦点は超過準備への対応であり、ユーロ圏の財政政策および金融安定性に大きな影響があるだろう。
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ジョンソン前首相が保守党党首選から脱落したことで、英国では慎重な財政政策への移行が不可逆的になっていると当社は見ている。
ふだん、家の水回りについて考えることはあまりないと思いますが、排水口詰まりなど配管の問題がいったん発生すると、それが解決するまでは他のことを考えるのが難しくなるものです。欧州の金融システムもそのような「配管問題」に直面しているのかもしれません。今週のECB政策理事会では、表向きには追加利上げが予想されていますが(当社では市場コンセンサス同様に75bpsと予想)、その一方で、長引く超過準備の問題にも対処する可能性があります。テクニカルには曖昧に見えるかもしれませんが、これは重要です。というのも、預金金利の上昇に伴い超過準備に対する金利がECBにとって大きなコストとなっており、そして財政余地が縮小している現在、各国政府の財政問題にも響くからです。
流動性への影響は単純ではありません。超過準備の解消に利用できる手段の1つであるTLTRO(条件付き長期リファイナンスオペ)の早期解除を「奨励」すれば、債券担保が不足している時に大量の債券がリリースされます。しかし、その一方で量的引き締め(QT)を急げば、債券市場のすでに厳しい状 況がさらに追い込まれることになります。当社は、ECBがQTについて慎重な判断を下し、決定を先送りすると予想しています。しかし、世界のいたるところで金融引き締めの速度が速まっており、金融安定性に関するアクシデントのリスクが自動的に高まっていると当社は引き続き懸念しています。
最近、英国は世界的なストレスの原因となっています。先週金曜、ジョンソン前首相の復帰を支持する議員が相当数いるとの報道を受けた市場の反応(英国2年債利回りの大幅上昇、価格の急落)は、投資家が財政に慎重な保守主義を志向していることを示唆しています。ジョンソン氏が日曜夜に保守党党首選への不出馬を表明したことで、残る2人の候補者、現在断然の人気を誇るリシ・スナク元財務相とペニー・モーダント下院院内総務のどちらが勝っても、新たな財政慎重派のスタンスは揺るぎないものになりました(訳注:その後モーダント氏が党首選から撤退し、スナク氏が無投票で選出されました)。両者ともブレグジットを支持していますが、当社は先週示した見解を維持します。それは、英国が単独でマクロ経済の舵取りをする能力が低下している現在、EUとの関係を徐々に改善することが、唯一実行可能な選択肢であることです。
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