クリーンテック戦略月次レター:EV向けリチウム関連企業、需要や投資の大幅拡大を予想
クリーンテック戦略月次レター(2023年1月の振り返り)
EV向けリチウム関連企業、需要や投資の大幅拡大を予想
水関連技術や水処理で企業合併へ
当月は、米国や欧州でインフレ減速の兆しが見られ、近く中央銀行が利上げを停止する期待が高まったことから、グローバル株式市場は上昇しました。ほとんどの地域が上昇し、中でもゼロコロナ政策の解除が投資家心理を押し上げた中国が上昇を先導しました。セクター別では、情報技術と一般消費財セクターが大きく上昇した一方、ヘルスケアや公益などディフェンシブ・セクターは市場全体を下回るパフォーマンスとなりました。グロース関連銘柄は、バリュー関連銘柄を大きく上回るパフォーマンスとなりました。
1月のクリーンテック戦略は、「低炭素輸送」銘柄の大幅な回復と堅調な「スマートエネルギー」銘柄により、世界株式(MSCI ACWI、米ドルベース)をアウトパフォームしました。一方、「廃棄物処理・資源有効活用」と「持続可能な食品供給」は、市場全体と同程度のパフォーマンスとなりました。
高まるリチウム生産およびEVへの注目
低炭素輸送関連分野では、リチウム生産大手のアルベマールが堅調なパフォーマンスとなりました。同社は当月、戦略的事業計画を発表し、リチウム市場は向こう数年間にわたって需要が強い状態が続くと見ているため、投資拡大計画を策定し年率20-30%の売上高成長を目指す考えであることを示しました。同社は、チリとオーストラリアに世界的に見ても低コストで生産できるリチウム塩鉱石とリチア輝石(リチウムを含む鉱物の一種)の鉱山を有しており、その規模、経験、強固な財務基盤を武器に、電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵機器の高い需要から恩恵を受けるのに極めて優位な立場にあります。
アルベマールはまた、米ノースカロライナ州にリチウム加工施設を建設する予定で、米政府のEVバッテリーおよびその原材料となる鉱物資源の国内生産促進に向けた助成金約1億5000万ドルを受け取る見込みです。
当月は、米ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES」でEV関連の出展が目立ち、月末にはEV大手のテスラが2022年12月通期決算を発表し、売上高と純利益が過去最高を更新するなど、EV動向への関心がいっそう高まりました。
水処理関連で大きなポテンシャル
環境汚染防止関連分野では、水処理企業エヴォクア・ウォーター・テクノロジーズ(エヴォクア)が、水質計測機器メーカーのザイレムからの買収提案に合意したとの発表を受けて株価が大きく上昇しました(両銘柄とも当ファンドの組入銘柄)。この買収はエヴォクアの全株式を対象とした株式交換によるもので、買収価格は発表前日の引値から大幅なプレミアムとなりました。合併後の企業は業界をリードするザイレムの水関連技術と販売力、エヴォクアの水処理サービスを同時に提供することが可能となり、米国外への市場拡大も見込めることから、魅力的な提案であると考えています。
1月上旬にアクサIMでは「水は責任ある成長機会のパイプライン」記事を発表しており、水ストレスや水不足に向けた投資機会を説明する中で、エヴォクアとザイレムに言及していますので、ぜひご覧ください。なお、同記事は買収発表前のものです。
欧州の暖冬は朗報だが、長期的にはエネルギー不足のおそれ
ロシアからの天然ガス供給減が引き続き天然ガス市場を逼迫させているものの、液化天然ガスの購入と産業向けの需要低下に加え、予想されたよりも温暖な冬の気候の影響もあって天然ガス貯蔵率は改善し、その結果、過去数ヵ月にわたって天然ガス価格は低下しました。これは欧州の家計にとって安心材料ではあるものの、ウクライナ紛争に解決が見られなければエネルギー不足が長期化するとのおそれは依然として残っています。エネルギー価格高騰に対処すべく、欧州各国では、エネルギー企業などに対する超過利潤税や特別支援策などを通じて消費者を守る措置が講じられ、これらは少なくとも年末までは継続されると期待されています。
最近の中国のゼロコロナ政策解除は、同地域の経済活動にとってポジティブな展開です。サプライチェーンの混乱も過去数ヵ月において緩和されつつあり、運用チームでは、クリーンテック企業にどう影響するか、引き続き状況を注視しています。
ポートフォリオの動向
スマートエネルギー関連分野では、シュナイダーエレクトリックが堅調なパフォーマンスとなりました。同社は低・中電圧電気製品、産業自動化機器、エネルギー効率化ソリューションなどを手掛けており、最近では強力な価格決定力が売上を支えてきましたが、今後はサプライチェーン問題の改善、高水準の受注残による販売数量の増加が業績の支えになると見られます。当月、同社はソフトウェア企業アヴィバ・グループの買収を完了し、これにより産業用ソフトウェア事業の更なる拡充が見込まれます。
持続可能な食糧供給関連分野では、建設、農業、輸送業向けにハードおよびソフトウェアを提供するトリンブルがプラス寄与となりました。サプライチェーン問題とマクロ経済減速の見通しにより、同社の株価は過去数ヵ月にわたって弱含んでいましたが、建設および農業ソリューションへの強い需要が同社の売上高成長の支えとなっている他、ソフトウェアのサブスクリプションによる経常収益の伸びにより収益の循環的な変動を抑えることができています。
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