なぜ今はインフレ連動債を売る時期ではないのか
キーポイント
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インフレ連動債離れが予想されるが、見当違いの可能性がある
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投資家がインフレ連動債への配分を再評価すべき理由
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インフレ連動債が現在の市場環境で提供するもの
インフレ連動債の傾向は、投資家行動の最先端にあるとみられます。投資家はインフレが加速するとインフレ債に殺到し、そして、インフレがピークに近づくとインフレ水準にかかわらずインフレ債を売却するというものです。現在のインフレサイクルもその例外ではなく、2022年末あたりに総合インフレ率がピークに達したと見られるため、投資家はインフレ連動債から離れ始めました。このトレンドは今日も続いています。
しかしながら、投資家にとっての課題は、インフレが従来の水準から見ても未だに高いことです。総合インフレが昨年の極端な水準からは下がったとはいえ、コアインフレ率は依然高いままです。 インフレは根強く、これが今後10年間の問題になると当社は見ています。また、グリーン革命、ウクライナ戦争による資源供給の継続したひっ迫、財政赤字の懸念により粘着的なインフレは、当面は変動が大きい状態が続く可能性があります。
それでもなお、下のチャートが示すように、エコノミストは2023年末までに2%目標の水準近くに戻ると未だに予測しています。
ユーロ圏(上)と米国(下)のインフレ率予想
出所:アクサIM、2023年3月時点の予測。上記は当社による現在の市場観測を表しているに過ぎず、投資推奨ではありません。
これに加えて10年のブレークイーブンインフレ率を見ると、市場は将来のインフレ率を2010年~2013年と同等の水準に織り込んでいることを示唆しています。
10年のインフレスワップレート
(青色が米国、緑色が英国、水色がユーロ圏)
出所:アクサIM、Datastream 2023年5月16日時点
市場環境は投資機会を提供
翌日物金利スワップ(OIS)は、米国の2年物金利が3.8%、ユーロの金利が3.1%、英ポンドの翌日物レートが4.4%となっており、逆イールドは今後も継続すると当社は見ています1
。歴史的には逆イールドの後にはイールドの上昇があり、デュレーションに対する市場のシグナルはここしばらく見られたよりも力強くなっています。コアインフレ率がいったん落ち着けばデュレーションラリーが展開されるというこの予想を考慮すると、コアインフレ率が落ち着くにつれデュレーションを追加するのは、魅力的な投資機会になるでしょう。
インフレ率が緩やかになるとブレークイーブンインフレ率が下がる傾向にありますが、高い水準の実質利回りと適度な水準のブレークイーブンインフレ率の組み合わせに投資機会があると当社は考えています。インフレ連動債の平均実質利回りは現在、2009~2010年以来最高の平均水準にあり、投資家がインフレを上回るインカムを確保できると示唆されるポジティブな状況にあります。
グローバルインフレ債の実質利回り
(黄緑色が1-5年の償還、緑色が全償還)
出所:アクサIM、Bloomberg、2023年5月16日時点
上述のことと将来のインフレリスクに対する市場の楽観的見方の組み合わせは、インフレ連動債の投資家が、歴史的に魅力的な水準のブレークイーブンインフレ率(将来のインフレに対する事実上の保険料の一形態)を獲得しつつ、リーマン後の最高水準でプラスの実質利回りを確保できることを示唆していると当社は考えます。
当面のところ、インフレ率の大きな変動が見込まれるため、インフレ連動債は投資家にとって有用なツールとなるでしょう。インフレ連動債は、根強いインフレに対するレジリエンスを提供します。そして、あらゆるインフレ連動債のキャッシュフローはインフレ率にリンクしており、発行体の多くが格付けの高いソブリン(国および政府機関)であることから、インフレ連動債への投資は資本保全戦略の一環として利用できるでしょう。
(オリジナル記事は5月17日に掲載されました。こちらからご覧ください。)
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