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ロボテック・トレンド:EV・バッテリー分野で設備投資加速


ロボテック・トレンド

EV・バッテリー分野で設備投資加速

電気自動車(EV)およびバッテリー関連分野で、世界的に事業拡大やインフラ整備の動きが続いており、それに伴い設備投資が大幅に拡大しつつあります。ロイターの昨年11月時点の分析では、世界の自動車メーカーは、今後5-10年でEVとバッテリーに5,150億ドル(約59兆円)を投資する計画で、これは3年前の分析の投資予定額3,000億ドルから大幅に増加しています。

高まる政府のEV導入支援

バイデン米大統領はこのほど議会で一般教書演説を行い、ウクライナに侵攻したロシアへの対決姿勢を鮮明にし、インフレ対策も強調する一方、米国のインフラ構築にも触れ、「50万カ所の電気自動車(EV)充電スタンドの全国ネットワークを構築する」と強調しました。欧州連合(EU)は昨年、ハイブリッド車を含むガソリン車などのエンジン搭載車の新車販売を2035年に事実上禁止する方針を打ち出しています。

政府によるEV移行への後押しを受け、主要自動車メーカーが本格参入を表明しており、今後はテスラなどEV専業メーカーの独壇場ではなくなるとみられます。米フォード・モーターは今月、EV事業向けの投資額をこれまでの300億ドルから500億ドルに上方修正すると発表しました。独フォルクスワーゲンは、2026年までの5年間でEV関連技術開発や工場新設に890億ユーロ(約11兆円)を投じる計画です。トヨタは2030年にEV世界販売台数350万台を目指し、4兆円規模の投資を計画しています。

内燃エンジン車とEVでは、車体製造は同様ですが、EVはモーター、バッテリー、インバーター、充電器などを搭載し、構造が異なります。そのため、既存自動車メーカーがEVに進出する際には新規の工場設備が必要になり、設備投資の規模が拡大しています。フォードの場合、EV事業を既存のエンジン車事業から分離すると発表しています。また、EVはエンジン車と比べると動力機構の構造などが比較的単純なため、部品加工やバッテリー組み立てなどのラインで産業用ロボットが多用されており、EVの最新鋭工場では様々なロボットや自動化システムがふんだんに組み込まれています。

EV向けバッテリー需要急増でロボット導入し生産加速

また、EVではバッテリーが車両コストの3割から4割を占めると言われ、バッテリー生産の効率化と規模拡大による価格の低減が重要です。EVの大幅な増産計画に対してバッテリー生産が追い付いておらず、各社とも生産効率を高めるためにバッテリー工場に多くのロボットを投入する予定です。テスラはEV搭載に最適なバッテリーを大量生産できるギガファクトリーを米国、ドイツ、中国に展開しています。トヨタもグループ独自のバッテリー工場を2025年までに立ち上げます。日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合は、2030年度までにバッテリーの生産能力を現在の20倍に拡大します。

EV生産拡大の影響は自動車メーカー以外にも及んでいます。エンジン車の場合には裾野が広い部品製造メーカーの存在と連携が必須でしたが、EVの場合には、モーターや制御系で統合された機器やシステム、バッテリー関連装置が重要になります。

日本電産は、EV用駆動モジュール(モーター、減速機、インバーターなどを一体化した製品)「イーアクスル」の生産を拡大しており、特に世界最大のEV市場である中国での搭載車両が大幅に増えていて、中国での生産も拡大しています。同社のモジュールを採用したEVの販売台数が昨年11月に2万台を突破し、追加投資も発表しています。ファナックは、EV生産ライン向けロボット受注の大幅増に対応していますが、半導体部品不足もあり生産が追い付かない状況が続いています。

なお、EV関連もウクライナ危機とは無関係ではありません。ロシア・ウクライナ関連情勢が悪化を続ければ、世界的に様々な分野でサプライチェーンが混乱し、加えて原材料価格高騰などの影響を受けるでしょう。

しかし、消費者のESG意識の高まりと主要国政府のEV奨励策により、EVの中長期的な見通しは明るく、生産は拡大を続けると予想されています。そして、EV向けロボット、自動化関連の設備投資が前倒しで拡大しています。

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