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Investment Institute
年次見通し

ヘッド・オブ・マクロリサーチの見方 – トランプ氏が世界経済をスタートさせる

主なポイント
米中の政策不確実性が見通しの重しになると思われる
トランプ氏の一連の政策は2026年以降に米国の成長を圧迫するが、インフレは加速すると予測
中国経済は脆弱な状態にあり、米国の関税は打撃となるだろうが、継続的な景気刺激策により、政府の管理する景気鈍化が達成される見込み
ユーロ圏の経済成長は緩やかに回復する見込みだが、ショックに直面した場合、政治的な脆弱性が引き続きリスクとなる可能性があると見ている
新興国市場は、国外からの逆風を乗り越えるために国内政策をうまく活用する必要があると考える
地政学的リスクが高まっているように思われる

米国と中国の成長鈍化がはっきりしてくる

トランプ氏の再選により、政治的不確実性が政策的不確実性に代わりました。市場は、トランプ氏の再選を成長にプラスの結果をもたらすものとして反応しましたが、アクサIMグループの評価では、財政措置は経済にとってコスト高になる可能性が高く、成長の後押しにはほとんどならないと考えています (図表3)。規制緩和は化石燃料の生産に注目すべき押上げ効果をもたらすかもしれないものの、他の産業分野ではそれほど顕著ではなく、政府の幅広い効率化に関しては、よくても進展が遅れることになると見ています。また、移民政策や関税政策といった人や財の供給ショックが限定的にのみ実施されると想定することは不十分な見通しとも考えます。トランプ氏にはこれらの政策を実施する権限があり、タカ派的な人選やプロジェクト2025(右派的な米政府再編構想)に関連する人物を含む閣僚の人選は、1期目よりも焦点を絞った政策の実現を示唆していると見ています。アクサIMグループの予想では、2025年の成長率は2.3% (2024年予想値2.8%) と堅調ですが、2026年には市場予想を下回る1.5%まで鈍化すると見ています。一方、インフレ率は2026年も3.2%に留まると予想しており、連邦準備制度理事会 (FRB) の政策緩和に制限をかけると見ています。

経済政策だけでなく、地政学的リスクにも注目しています。新しい米政権はウクライナ紛争の解決を示唆していますが、アクサIMグループはこれをロシアとの強制的な和解と解釈しています。また、イランに対する「最大限の圧力」の再開は中東の同盟関係に影響を与える可能性があると見ています。そして、中国への貿易圧力強化も予想されます。これらは、現在の脆弱な地政学的バランスの重要な基盤を取り崩し、新たな均衡への移行をもたらすおそれがあります。そのような新たな均衡がどのようなものになるかはわかりませんが、移行に伴う不確実性が成長にさらに影響を及ぼすと予想されます。

図表3:米国の政策が成長を押し上げる可能性は低い

中国に対して、トランプ氏は60%の関税をかけるべく焦点を当てています。しかし、中国は自身の国内問題に直面しています。最近の景気刺激策にもかかわらず、不動産市場の危機は続いており、不動産価格は2021年にはピークから15%下落、2024年だけでも5%下落しました。不動産が家計の最大の投資先であることから、この危機は個人消費に重くのしかかっており、財政刺激策や信用創造にも影響を及ぼしています。また、絡み合った中国の地方政府と地方銀行システムも同様に、不動産不況の影響を受けています。中国は、世代を特徴づけるほどの債務デフレの罠を回避するという重要な課題に直面しています。中国に対する関税料率として60%を全てかけるとは想定していないものの、当社グループとしてはGDP成長率において0.5%ポイント前後の経済的悪影響を予想しています。2025年には、家計部門を支援するため、さらなる財政刺激策や国有企業への圧力などといったさまざまな措置が講じられると予想しています。 これにより、中国は深刻な景気後退ではなく、政府によって管理された減速を実現すると思われ、アクサIMグループは、2025年の成長率は4.5% (今年の4.9%から減少)、2026年は4.1%まで低下すると見ています。しかし、これは、市場原理による不慣れな逆風に政府が取り組みながら、狭い政策路線を実現できるかどうかにかかっており、結果がもっと悪くなるリスクもあると見ています。


新興国市場の回復力が再び試される

米中の両国とも世界の他の経済に大きな影響を与えるでしょうが、特にアジアとラテンアメリカの新興国市場への影響が比較的大きくなると見ています。多くの新興国市場は中国に大きなリスクを抱えており、中国の国内および輸出生産活動は原材料や中間財の需要に反映されます。しかし、米国への輸出を中国偏重から多角化することによって新興国市場の多くが恩恵を受けてきたのに対し、トランプ新政権は貿易黒字の増加と、より具体的な関税対象国を増やすことに重点を置く可能性があります。

新興国市場は、外から受ける逆風に直面して内需を管理するために政策を賢く適応させる必要があると思われます。いくつかの新興国市場では実質金利が依然比較的高水準にあるため、金融政策にはさらなる金融緩和の余地が残されています。しかし、米国金利と米ドルを比較的高水準に留めるような政策が米国で続く場合は、新興国市場の緩和余地は縮まってしまうと考えられます。さらに、新興諸国の財政余地は、2024年に基礎的財政赤字がパンデミック前の水準からさらに拡大しており、引き続き圧迫された状態です。金融政策と財政政策が連携することで、政策の効果が最も高まります。新興国市場は回復力を見せるでしょうが、構造改革によって長期的な成長率を引き上げられそうな国はほとんどないと見ています。

インドやインドネシアなど、内需関連セクターが比較的大きい国々は、堅調な景気拡大を実現するのに最適な立場にあると思われます。インドネシアは、経済状況が悪化した場合に財政緩和の余地がある数少ない国のひとつと見ています。トルコ、アルゼンチン、コロンビアなど、経済不均衡を是正した国々は、2026年までに回復すると見ています。南アフリカ、エジプト、ナイジェリアは、構造改革の恩恵を受けることができそうです。しかし、ブラジルの見通しは、債務の持続可能性への懸念が金融政策の好ましくない反応を引き起こしていると見ています。メキシコも、憲法改正と米国の貿易保護主義がすでに見通しを悪化させている時期に、緊縮財政が経済に困難をもたらす可能性があると思われます。

欧州:欧州経済の安定と政治的課題

ユーロ圏については、外部環境がもたらすリスクにもかかわらず、最近の低迷は徐々に回復に向かう可能性が高いように思われます。インフレ率が目標値にまで下がったことで、実質可処分所得の伸びが加速したことで、家計貯蓄率の上昇にもかかわらず、個人消費の加速を後押ししています。これは今後も続くと見ています。投資の大幅な回復についてはまだ懐疑的です (図表 4)。しかし、供給制約から需要不足へと成長への逆風が変化したことで、欧州中央銀行(ECB)が活動を活性化させる余地が拡大したと見ています。欧州中央銀行は利下げを実施し、2025年末までに金利を1.5%まで引き下げると予想します。金利の低下に対して投資が反応し始めることで、この利下げが成長率を押し上げ、2024年の0.8%から2025年には1.0%に、2026年には1.3%に上昇すると予想します。この見通しは、より広範な貿易戦争に対して、引き続き影響を受けやすいと見ています。

図表4:リスクにもかかわらず回復するユーロ圏の内需

しかし、脆弱な政権は潜在的なリスクとなる可能性があります。ドイツの選挙は、2025年9月ではなく2月に行われます。しかし、大連立政権が復活する可能性が高いものの、長期投資の必要性が大きいにもかかわらず、財政政策が大きく転換する可能性は低いと見ています。フランスは、2025年に政府が新たな試練に直面する可能性が高く、さらに政治不確実性で苦しむかもしれません。スペインでも選挙が行われる可能性を排除することはできません。弱体化した政権は、2025年に予定されている比較的厳しい緊縮財政に遅れが生じる可能性が高くなると思われます。米国の関税引き上げに対する欧州連合(EU)の対応にも支障をきたし、ウクライナを含む地政学的発展への反応にも支障をきたす可能性があると思われます。

英国は近年よりも政治的に安定し、信頼性が高まると考えられます。2025年の成長率は0.9%から1.5%に、2026年には1.4%になると予想されます。これは、家計の実質可処分所得の継続的な伸びと2025年の財政政策の緩和を反映したものです。ただし、財政政策の緩和効果は2026年には弱まるでしょう。英断ともいえる予算案の後、英国の財政は、成長が大胆な期待に見合わない場合、さらなる増税、歳出削減、または借入の増加が必要になった場合、再び悪化するリスクがあります。政治的安定は外国資本を引き寄せ始める可能性があり、今年の通貨の動きもその兆候を示していると見ています。しかし、開放経済である英国は、より広範な貿易戦争や地政学的発展から生じる欧州全体のリスクを共有していると考えています。

このように、世界経済の見通しは、ワシントンと北京の政策展開の不確実な見通しに左右されます。アクサIMグループの予測では、2025年の世界全体の成長率は3.2%にとどまると見られますが、2026年には2.8%に鈍化すると考えています。2025年は、中国を除けば、世界金融危機後 (2012~2019年) の成長ペースと同程度になると予想されますが、2026年には、米国での景気減速がより顕著になり、新興国市場全体では広範な減速が見られることで、成長ペースは鈍化すると考えられます。しかし、この減速が構造的な調整 (特に米国の供給調整) の再燃を反映するリスクもあります。そのため、少なくとも予想期間中は、政策緩和の余地が相対的に弱まり、長期金利が相対的に上昇する見通しです。

 

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は12月4日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

2025年の見通し全体版(英語)
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