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グローバル・ファクター展望:マクロ経済状況はクオリティ株と低ボラティリティ株にとって有利

主なポイント
中央銀行の注目点が経済成長と雇用市場のリスクに対処することへと移されているので、インフレが鈍化傾向を現し、マクロ経済データが軟調さを示す現状では、市場は金利低下を予想している。
当社グループが試算する今年8月のダッシュボードでは、クオリティ(質)と低ボラティリティが比較的高位のファクターであり、バリュー(割安)とモメンタム(勢い)が比較的低位のファクターとなっている。
低ボラティリティ(低変動率)は前四半期と比較して最も改善したファクターであり、同ファクターは典型的には、マクロ環境が鈍化する一方でバリュエーションやテクニカル(需給)要因が引き続き支援要因となっている場合に良好なパフォーマンスを示す。

欧州と米国では、インフレ水準は中央銀行の目標値からさほど離れておらず、また、経済成長は鈍化しつつあります。米国の雇用統計は7月に予想されたよりも弱いものであったので、市場はマクロ経済環境が想定以上に鈍化するかもしれないという懸念を強め、株式市場が不安定な動きとなりました。

中央銀行の注目点が経済成長と雇用市場のリスクに対処することへと移されているので、インフレが鈍化傾向を現し、マクロ経済データが軟調さを示す現状では、市場は金利低下を予想しています。

加えて、米供給管理協会(ISM)の7月新規受注指数が下落した一方で、当社グループのファクター・ダッシュボードでのマクロ指標も鈍化局面へと変化する結果となりました。1

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株式ファクター見通し

現状のマクロおよび金利の背景を鑑みて、当社グループでは株式ファクター・ダッシュボード(図表1)を更新しました。

図表1:アクサIM株式ファクター・ダッシュボード(2024年8月)
出所: アクサIM、2024年8月現在

✔は近い将来に株式市場よりも高いパフォーマンス(ポジティブ)を、✖は低いパフォーマンス(ネガティブ)を示す可能性を表し、は中立(ニュートラル)である可能性を示しています。

8月に、各種マクロ経済指標や金利、バリュエーション、テクニカル(需給)関連指標を計測した結果、クオリティと低ボラティリティが比較的高位のファクターであり、バリューとモメンタムが比較的低位のファクターとなりました。

低ボラティリティは前四半期と比較して最も改善したファクターであり、同ファクターは、マクロ環境が鈍化する一方で、バリュエーションやテクニカル要因が引き続き支援要因となっている場合に典型的に良好なパフォーマンスを示します。モメンタムは、最低位のスコアに低下しましたが、総合スコアとしてはニュートラルとなっています。8月時点では、極端な水準になっているファクターはほぼなく、グロースとバリュー、モメンタムの総合スコアには差がほとんどありません。

株式市場ファクターに関する当社グループの見通しは以下の通りです。


クオリティ:ポジティブ

クオリティ・ファクターに関して、ファクター・ダッシュボードは引き続きポジティブと評価しています。収益性に優れた銘柄を意味するクオリティ株式は、マクロ経済に対するセンチメントが景気サイクルの減速局面にある場合に、効果を示す傾向があります。全般的にクオリティのバリュエーションは平均よりも高い水準にあります。しかし、他のファクターと異なり、クオリティ・ファクターのパフォーマンスは従来では高バリュエーションの時期に感度があまりよくない傾向があります。その場合に、クオリティに着目した戦略を行う際には、経済状況の変化に適応しやすい予想クオリティに焦点を当てたクオリティ投資の積極的なアプローチが有効と思われます。


低ボラティリティ:ポジティブ

ファクター・ダッシュボードでは、低ボラティリティがポジティブと位置付けられ、前四半期期と比較して最も改善したファクターとなりました。この改善の原因は、主なマクロ経済指標が景気サイクルの減速局面に入り、低ボラティリティ・ファクターにとって典型的に有利な状況になったことです。金利低下はしばしば低ボラティリティ・ファクターのパフォーマンスにはマイナス要因となりますが、これは通常、景気サイクルが回復局面に移行することが原因であり、成長鈍化に対応するために金利が低下してきている現在の状況が原因ではありません。低ボラティリティ・ファクターは市場では目立つものではなかった一方、そのバリュエーションやテクニカル指標はプラス要因です。


グロース:ニュートラル

グロース・ファクターは、ニュートラルです。ISM新規受注指数の水準と変化率に基づくマクロ指標は現在、景気サイクルの減速期にあり、歴史的に見て、グロース・ファクターに有利な傾向ではありません。しかし、この逆風は、通常グロース株式にとって支援材料となる金利低下の見通しによって和らげられています。グロース株式は今年の上半期に好調なパフォーマンスとなったため、グロース・ファクターは「混雑」、つまり非常に人気が高まったため、テクニカル指標のスコアはネガティブになっています。


バリュー:ニュートラル

バリュー・ファクターも ニュートラルとなっています。マクロ経済の成長の勢いが減速しつつある場合は従来、バリュー株式には支援材料とはなりません。というのも、このファクターは市場の景気敏感部分とのかかわりが大きくなる為です。金利低下もバリュー・ファクターの見通しには重しとなりますが、これは、金利低下局面では典型的に、投資家が金利低下にポジティブに反応するグロース株式を選好する為です。しかし、バリュー・ファクターのバリュエーションはある程度魅力的な水準を示しており、テクニカル指標もプラスになっています。


モメンタム:ニュートラル

ファクターとしての株価モメンタムは、過去12ヶ月間に市場に対してプラスの株価変動があった銘柄を捉えています。モメンタム・ファクターは、2023年の大部分と2024年の1~3月期において、最も上位にランクされたファクターでした。4月にはテクニカル・スコアが悪化し、順位が低下しました。具体的には、モメンタム株式は今年3月末に低水準ながらパフォーマンスのばらつきを示し始めており、これはファクター・クラウディング(混雑)の指標であり、ファクターにとって歴史的には警告シグナルです。

クラウディング状況は4月以降悪化していないものの、依然として高水準にあり、このことがファクター全体のスコアの重しとなっています。さらに、マクロ経済のモメンタムの鈍化もモメンタム・ファクターにとってマイナスとなるのが通例であるため、ダッシュボードでは最低位となりました。

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(オリジナル記事は8月19日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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