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マーケット見通し

2023年の投資展望:幾分の楽観が可能に


キーポイント

  • 2023年の市場を支えるいくつかのテーマがあり、特にインフレの更なる緩和は大きい

  • 中国の経済再開が国内経済および世界経済に与える潜在的影響は大きい

  • グリーン関連の膨大なインフラ投資に潜在性がある

2022年に市場が直面した課題、すなわちウクライナ危機、インフレ、急激な金融引き締め、そして経済成長の鈍化は、すぐに収まるとは考えられません。さらに高い市場ボラティリティという脅威は、常に存在しています。

昨年の厳しい環境下では、債券・株式市場ともにマイナスリターンとなりました。これは異例なことであり、2023年にこのようなリターンが繰り返されるとすれば、さらに異例なことになるでしょう。

しかし、厳しいマクロ経済情勢にもかかわらず、当社は、2023年に向けて投資家が楽観できる複数の理由があると考えています。2023年の市場を下支えするテーマがいくつかあります。例えば、ディスインフレ(インフレの鎮静化)、安定化および低下する実質債券利回り、中国の経済再開、インフラとグリーン資産への支出増加などです。

よりポジティブな市場

激動の2022年を経て、投資家は10~12月期に一息つくことができました。インフレと金利上昇への懸念がピークに達したとの見方から市場が上昇したからです。

この傾向は少なくともこれまでのところ、新年早々にも波及しており、米国、アジア、そして欧州の主要指数はいずれも年初来はプラス圏にあり、英国のFTSE 100種総合株価指数は2018年以来初めて、7,700を超えました。1

市場は、7~9月期の米国経済成長率が当初の予想を上回り、4~6月期の縮小から力強く回復したことを確認する好材料のニュースの流れに後押しされています。7~9月期の米GDPは、個人消費と設備投資の改善を背景に上方修正され、市場予想の2.9%に対して年率3.2%の増加となりました。2

最近の市場の上昇にもかかわらず、また2022年にリスク資産が打撃を受けたにもかかわらず、一層の上昇の可能性があります。株式には十分な回復余地がある一方で、債券は、昨年すべての債券資産において大幅な価格のリプライシングがあったため、現在は通常より高い利回りとなり、より魅力的になっています。

インフレの緩和

2022年を特徴付けたインフレ率の上昇は、今年に入り緩和され始めるとみられます。しかし、当社はインフレが後退すると予想しつつ、その動きは緩やかであると想定しています。最近の指標は勇気づけられるものであり、一部の国ではインフレがピークに達したことが示唆されています。米国のインフレ率は、11月の前年同月比7.1%から12月には6.5%へとさらに低下し、2021年10月以降で最も緩やかな年率の伸びとなりました。そして、消費者物価指数の前月比上昇率が、2023年末までの各月の過去平均に類するところで推移した場合、米国の消費者物価指数は2%から3%の間にまで下がる可能性すらあるのです。3

さらに、ユーロ圏のインフレ率は11月の前年同月比10.1%から12月には9.2%に低下し、ようやく一桁台に戻りました。インフレ率は依然として高いですが、市場予想よりも急激な減速を示しています。4 これとは別に、ユーロ圏の企業活動の低迷は12月には緩和され、インフレ率の低下、労働市場の回復、そして企業信頼感の高まりを反映して、景気後退は極めて軽微なものになるだろうと示唆されています。過去の例では、インフレ率がより望ましい水準に戻ると、株式のリターンは向上しています。

FRBを忘れるべきか

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のメッセージは非常に明確で、インフレ率が有意に低下するまで、FRBはタカ派スタンスを維持するというものです。当社では、これは2023年において1~2回の利上げとその後利下げがないことを示唆する発言だと考えています。しかし、市場はまだその確信がない状態だと思われます。イールドカーブ(信用度は同じでも償還期日が異なる債券の利回りを描いた曲線)が、償還期日の長い債券ほど利回りが低くなる逆位相を描いているのは、このためです。これは、長期金利の低下に対する投資家の期待を反映しています。前回のFRB理事会後、長期均衡金利の予測は2.5%に留まっています。5

市場は、FRBが長期均衡金利の2倍の翌日物金利を長期にわたって維持できるとは考えていません。2023年前半に中央銀行金利はピークを迎えると思われます。それ自体が市場にとってプラスとなるはずで、投資家はここ数年で最も高い債券利回りの恩恵を受けられる可能性があります。このような環境では、デュレーションの短いクレジットやハイイールド債が最も魅力的になります。

中国経済の再開

中国がパンデミックによる封鎖から国境を再び開放したことは、確かに大きな意味があります。世界第2位の経済大国である中国は、ここ数十年で最も低い成長率で推移しています。6 中国経済が再開することで、投資家は成長と投資リターンの回復を期待することになるでしょう。

確かに、中国の経済再開が国内経済と世界経済に与える潜在的な影響は大きいでしょう。特に、2022年の市場の急落以降、中国のH株(香港上場株)とアジアのハイイールド債は劇的な回復を遂げました。また、中国の金融緩和政策の継続と穏やかなインフレは、中国の成長回復を支える余地を提供しています。

中国経済の再開の影響は、国境を越えてアジアや欧州など世界各地に広がり、輸出市場および国内のサービス業と消費活動が活性化することで、非常に大きな効果が期待できます。また、中国の経済活動の活発化がエネルギー市場に新たな圧力となり、世界的にインフレ率が低下する範囲を限定する可能性もあります。しかし、中国経済の強化からもたらされるインフレの可能性よりも、中国の需要拡大とサプライチェーンの簡素化といったプラス面の方がより重要なはずです。

しかし、投資家は前途多難であることを覚悟しなければなりません。ゼロコロナ政策の突然の転換は、感染症の大流行に拍車をかけ、病院を直撃しています。しかし、この感染症がひとたび全人口を一巡すれば、特に予防接種の接種割合が拡大すれば、消費の増加、民間部門の投資拡大、ならびに海外貿易と旅行の増加、そして低迷している中国の不動産市場の回復の可能性を背景に、17.7兆ドルの経済が好転するはずです。7

再び注目を集めるESG

昨年11月に開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は、多くの面で成果を上げることができませんでしたが、脆弱な国々が気候変動による壊滅的な影響に取り組む支援をするための画期的な「損失と被害」基金については、気候変動協定を達成しました。しかし、COP27で得られた重要な教訓は、より持続可能な時代への移行を実現するための、どんな採算性のある資金調達計画にも、投資家が中心的な役割を果たすということです。

たとえCOP27で意見の相違を解決できなかったとしても、ネットゼロとその先への道筋は依然として明確です。喜ばしいことに、12月に開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、195カ国が2030年までに世界の陸と海の少なくとも30%を保護・回復するという画期的な合意が発表されました。また、この合意は、各国が毎年2,000億ドルを生物多様性の取り組みに充てることを奨励しています。

さらに広く見れば、ウクライナ危機を契機に、エネルギー安全保障が極めて重要視され、これまで以上にエネルギー供給を確保する対策が講じられており、このため自然エネルギー開発の迅速化が求められています。昨年、米国議会で可決された「インフレ抑制法」は、米国におけるグリーン関連の巨額インフラ投資の可能性を切り開くものです。電気自動車、二酸化炭素の回収、および水素製造などの分野に対する政府の補助金は、エネルギー移行における米国の投資全体を後押しすることになります。このことは、米国株式市場の多くの分野に強力な影響を与えるでしょう。

基本的に、持続可能なビジネス慣行の必要性を推進する勢いは今後も続くでしょう。そして、私たちにとって明らかなことは、持続可能な投資こそが、世界経済の将来の強さを確保する唯一の方法であるということです。

不確かな前途

当社は、2023年について楽観できる複数の理由があると考えていますが、まだ順風満帆とは言い難い状況が続くでしょう。私たちは景気後退が来ていることを承知しています。国際通貨基金(IMF)は、今後12カ月の間に世界経済の3分の1が景気後退に入ると予想しています。8 しかし、景気減速は経済見通しに見込まれており、投資家はこれを織り込み済みです。

それでも、当社は2023年から2024年にかけて、インフレが沈静化し、経済活動が改善し始めると予想しており、市場のバリュエーションも今はより魅力的になって、不安定ながらも、より力強い回復の可能性を見ています。

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