ロボテック戦略月次レター:生産の国内回帰、米国に加え欧州やアジアへも拡大
ロボテック戦略月次レター(2023年2月の振り返り)
生産の国内回帰、米国に加え欧州やアジアへも拡大
半導体関連企業、好決算と堅調な見通し示す
当月のグローバル株式市場は前月の上昇から反落しました(MSCI ACWI、米ドルベース)。当戦略は昨年は厳しいパフォーマンスとなりましたが、今年に入ってからは市場全体を上回るパフォーマンスを続けています。当月は好決算を発表した半導体やソフトウェア関連銘柄などが堅調なパフォーマンスとなりました。
当戦略の組入銘柄の決算発表は総じて良好で、マクロ経済環境の悪化が見込まれる中も2023年の業績について前向きな見通しを示す企業が多く見られます。多くの企業にとって生産の“リショアリング(国内回帰)”や“ローカル化”が大きなテーマとなっており、産業用ロボットや自動化への投資を加速させる原動力となる可能性があります。この動きは主に米国で起こっていると考えられていますが、欧州やアジアの一部の国々でも同様のことが起こっていることは着目すべきです。実際、国際ロボット連盟(IFR)が発表した最新の年次調査報告では、産業用ロボットの2023-2024年の予想出荷台数は前回報告より25%以上上方修正されました。
産業用ロボット大手、安川電機の小笠原浩会長兼社長は日本経済新聞のインタビューに対し、脱中国依存を目指し、インバーターなどの国内調達比率を高めるなど、サプライチェーンの見直しを進めていることを強調しました。
なお、米国におけるリショアリングの一環で、自動車大手がメキシコで電気自動車(EV)製造に向け、投資を進めています。独BMWは同国中部の工場でのEV生産に向け8億ユーロを投じる予定です。米ゼネラル・モーターズ(GM)は、同国北部の工場をEV専用の生産拠点にする計画です。また、米テスラは3月上旬、同社5つ目のEV工場をメキシコ北部に建設すると発表しました。こういった動向は、米国という巨大な消費地に近く、かつ、一定基準を満たせば関税ゼロで米国に輸出できるメリットがあるためです。EVへの急速なシフトはロボット導入に向けた強力な設備投資環境を提供するため、当戦略では、EVやバッテリーの製造関連銘柄および関連の投資機会に注目しています。
中国経済の再開で企業の設備投資拡大へ
中国経済再開の決定は、市場に新たな活力をもたらし、長期間にわたって不透明要因となっていた中国への投資や企業の設備投資が今後増加する可能性があります。3月初めに発表された中国の購買担当者景気指数(PMI)は予想を大きく上回り、製造業の活動は2012年以降で最大のペースで拡大していることを示しました。このトレンドが今後も続くか結論づけることは時期尚早ですが、コロナ禍において厳しい状況に置かれていた産業活動が加速していることがデータで示されたことは心強い傾向であると言えます。
ポートフォリオの動向
当月は半導体関連の組入銘柄が良好な決算を発表し、2023年も引き続き強気の見通しを示したことからプラス寄与となりました。半導体セクターにとって、昨年はマクロ経済の減速とPCやスマートフォンなど消費者向けのエンド市場における需要の弱含みを受けて厳しい環境となりましたが、当戦略では、自動車、産業、データセンター向け半導体など底堅い需要が続いている分野に注力している企業を中心に組入れています。シリコン・ラボラトリーズ(IoT向け半導体)、オン・セミコンダクター(自動車/産業向け半導体)、エヌビディア(データセンター/ゲーム/AI向けGPU(画像処理半導体))などの業績は際立って良好で、株価も堅調に推移しました。シリコン・ラボラトリーズの2022年10-12月期決算では、産業・商業部門においてIoT関連コネクテッド機器やスマートメーターなどが牽引役となり、消費者向けのホーム&ライフ部門の不振を補いました。
産業用ソフトウェア関連銘柄も、シミュレーションに用いられるソフトウェアを手掛けるアルテアエンジニアリングやアンシス、半導体設計ソフトウェアのケイデンス・デザイン・システムズなどが良好な決算を発表したことを受けて、総じて堅調なパフォーマンスとなりました。これらの企業の収益は通常、顧客企業の研究開発費や新製品開発にリンクしていますが、いずれも高水準が続いていると見られます。一方、設計自動化ソフトウェアを手掛けるオートデスクは建設関連のエクスポージャーが高いことなどが影響し、予想を下回る業績見通しを示したことからマイナス寄与となりました。
脊椎手術ロボットを開発する医療機器メーカーのグローバス・メディカルは、競合他社のニューベイシブを買収すると発表したことが嫌気され株価が下落しました。運用チームでは買収効果がより明確に示されるまでは様子を見る方針です。また、工場や倉庫の自動化に用いられるビジョンシステムを手掛けるコグネックスは、決算発表で事業環境見通しが悪化していることを報告し株価が下落しました。同社の業績はアップルやアマゾン・ドット・コムなどの大手顧客の設備投資計画に影響を受けやすく、アマゾンがコロナ禍で拡大した倉庫キャパシティを消化する間は需要の見通しが不透明であることが嫌気されました。
ご留意事項