ロボテック戦略月次レター:自動車向け半導体分野へのポジティブな見方強める
ロボテック戦略月次レター(2023年7月の振り返り)
自動車向け半導体分野へのポジティブな見方強める
車載半導体企業の業績は堅調、自動運転車やEV拡大に期待
7月もグローバル株式市場(MSCI ACWI、米ドルベース)は上昇し、年初からの上昇幅を拡大しました。米国をはじめ各国でインフレ率の低下傾向が続いていることが市場で好感されました。当戦略は年前半は非常に堅調なパフォーマンスとなりましたが、当月は主として日本の自動化関連銘柄が軟調となったことから市場全体を下回るパフォーマンスとなりました。
企業業績は概ね堅調さを保っており、消費も底堅く推移していることから市場は米国経済の「ソフトランディング(景気が急激に後退することなく緩やかに減速すること)」に自信を深めています。しかしながら、製造業の活動はまだら模様で、中国経済も力強さが見られないことからマクロ経済見通しは引き続き不透明な状態です。ここ数週間において中国では景気刺激策への期待が高まっているものの、現時点では同国で事業を行う企業にとって厳しい環境となっています。
当月には、自動車向け半導体企業は好調な業績を発表しました。中でもオン・セミコンダクターやNXPセミコンダクターが堅調でした。自動車向け半導体の今後の見通しについて市場では活発な議論が交わされており、強気派は自動運転車や電気自動車(EV)ではより多くの半導体が組み込まれ成長を支えると主張しているのに対し、弱気派は経済環境が悪化する中、自動車販売の低迷や半導体の在庫積み上がりを懸念しています。当戦略の運用チームは、この分野についてはよりポジティブに考えています。NXPセミコンダクターは2023年1-3月期が同社にとってサイクルの底となり、2023年下半期の業績は2023年上半期より上向き、更には2022年下半期の業績をも上回るだろうとの見方を示しています。
中国の景気失速が世界経済にとって懸念材料に
なお、中国では、2023年初頭にゼロコロナ政策を解除したときに期待されたほどの景気回復を示しておらず、景気の失速がグローバル経済にとって心配の種となっています。景気刺激策の発表に期待がかかりますが、内需に弱さが見られること、他国が中国などから自国へ生産を回帰させようと補助金を増額させていることなどから先行きには不透明感があります。
ポートフォリオの動向
当月は、日本の自動化関連銘柄がマイナス寄与となりました。ファナック、キーエンス、オムロン、三菱電機などはいずれもFA(ファクトリーオートメーション)の見通しが弱含み、不透明感があることを示唆しました。ファナックは特に中国での受注が鈍化しており、収益の圧迫要因となっています。この傾向はコンピュータ数値制御装置(CNC)やサーボモータなどのFA部門で特に顕著で、産業用ロボット部門は比較的持ちこたえています。需要が回復するまで収益への圧迫は続くと見られますが、経営陣は値上げを実施し、投入コスト上昇の影響を和らげようとしています。中国における経済活動の回復が重要な鍵となりますが、短期的に実現は難しく、同社にとって年後半も厳しい環境になると見られます。
ヘルスケア関連銘柄は堅調な業績を発表しました。手術支援ロボット大手のインテュイティブ・サージカルは、2023年の手術件数見通しを年初に示した12-16%成長から20-22%成長へ上方修正しました。また、同社は中国におけるシステムの新たな販売枠を獲得したことを発表するとともに、間もなく新製品を投入する可能性を示唆しました。業績発表会見で「試作品費用が上昇」していること、顧客がシステムを購入するよりもリースを好む傾向があり「次世代テクノロジーにアップグレードする柔軟性を確保」していると強調しました。
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