ロボテック戦略月次レター:サプライチェーン問題改善で自動化関連企業が強気姿勢
ロボテック戦略月次レター(2023年3月の振り返り)
サプライチェーン問題改善で自動化関連企業が強気姿勢
半導体、産業用ソフトウェア、ヘルスケア銘柄が堅調
当月、グローバル株式市場(MSCI ACWI、米ドルベース)は上昇しました。月中には、米国や欧州において銀行の経営不安が生じたことを背景に大きく下落する場面もありましたが、月半ばに株式市場は反発に転じ、底堅い経済指標や近く利上げサイクルが終了するとの期待感が相まって市場は上昇基調となりました。
当戦略は半導体、産業用ソフトウェア、ヘルスケア関連銘柄などが堅調で、市場全体を上回るパフォーマンスとなりました。
2022年10-12月期の決算発表は、当戦略の組入企業にとって概ねポジティブな結果となりました。また、3月には多くの業界カンファレンスが行われ、運用チームのメンバーも参加し、これらの企業の経営陣に会い、最新のプレゼンテーションを聞く機会に恵まれました。心強いことに多くの経営陣から共通して安心感のあるトーンの発言があり、中には際立って強いメッセージもありました。第一に、安心材料としてはサプライチェーン問題が引き続き改善しており、納期と在庫が同問題のピーク時から回復していることが挙げられます。コロナ前の水準に完全に戻るまでには至っていないものの、この問題の改善により企業はより高い確信度を持って予測を立てることが可能となっています。第二に、銀行危機とそれに伴う貸出基準の厳格化による悪影響の兆候が、今のところあまり見られていないことが挙げられます。第三に、マクロ経済の不確実性に伴う需要動向への逆風が最小限であることです。住宅建設を除けば、全産業にわたって底堅い需要が見られ、中国経済が予想以上に順調に回復していることも更なる追い風となっています。
銀行セクターへの懸念が広がるも各国当局が対処し、市場の不安は後退
なお、米国では、3月前半にシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻し、2008年の金融危機時に破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ大型倒産となりました。その直後にはシグネチャーバンクが過去3番目の規模で破綻しました。さらには欧州にも飛び火し、経営不安に追い込まれたスイスのクレディスイスは同じスイスのUBSに買収されることとなり、金融危機以降で初めて救済された「グローバルなシステム上重要な銀行」となりました。これら一連のイベントは市場の動揺を招き、銀行セクター全般に対する懸念が広がりました。各国当局は協調して銀行へのストレス鎮静化に対処し、市場の不安は後退しました。主要中央銀行はSVB破綻以降も利上げを継続し、銀行セクターの脆弱性について深刻な懸念はないことをアピールしました。
利上げのピークは間近に
2023年を見通すと、引き続きマクロ経済情勢および地政学的問題が市場のセンチメントに影響を及ぼすと予想されます。銀行危機の問題に関して各国当局は迅速に行動し、波及リスクの抑え込みに成功しましたが、銀行の決算発表時期が近づくにつれ不透明感が続く可能性があります。また、今後発表されるマクロ経済指標についても、与信基準の厳格化が予想される中、成長見通し悪化の兆候を見極めるため、より慎重な判断が必要になると思われます。中央銀行の次のアクションに関する議論も引き続き活発に行われ、一部では利上げの停止や利下げを予想する向きもある一方で、インフレ率は尚も高く中央銀行が抑え込まなければいけない水準にあります。運用チームでは利上げは当面続くものの、そのペースはより緩やかになると予想しています。当局者からは利上げを継続するという発言が今も続いているものの、中央銀行がこれまでにとった措置がインフレに徐々に効果をもたらしている兆しが見られることから、利上げのピークは間近に迫っていると考えています。
米国、インフラ投資と設備投資促進により国内製造業を再活性化へ
米国はインフラ支出と設備投資によって国内の製造業を再活性化させようとしています。これは米国の雇用を創出するという意味において政治的に重要であり、また、米国の知的財産を自国内にとどめるという意味において地政学的に重要です。そして、コロナ後に部品調達が混乱に陥ったことからもわかる通り、自国内に部品の在庫を確保するという意味においてサプライチェーンの観点からも重要です。トランプ政権下における米中貿易紛争での関税強化、最近のバイデン政権における半導体法案(半導体の国内製造に対する補助金など)による米国テクノロジー企業の国内生産回帰の促進など、過去数年にわたって政府の支援は形を変えてきました。バイデン大統領はまたインフレ抑制法を成立させ、米国製造業向けにより多くの財政支出をし、主要なテクノロジーの保護に動き出しました。関税、奨励金、サプライチェーン・リスクの低減などの結果、企業は国内の生産拠点へ再び投資するようになり、これによって技術の洗練、ロボット化・自動化を促しています。
米国の産業政策については、当社コアCIO(最高投資責任者)兼アクサIM資産運用研究所議長のクリス・アイゴーが、インフラ、クリーンエネルギー、自動化、輸送などの主要分野で成長とイノベーションを加速させる強力な追い風になろうと指摘しています(記事「米国の産業政策、成長とイノベーションの新たな波を先導」をご覧ください)。
ポートフォリオの動向
当月はサプライチェーン問題の最悪期を脱し、改善しつつあることから、資本財関連銘柄が堅調なパフォーマンスとなりました。中でもドイツのシーメンスは、当戦略で強気に見ている産業自動化機器分野における中心的な存在です。同社は1,000億ユーロ(約14兆6,000億円)を超える過去最高水準の受注残を記録するなど2023年の成長見通しに自信を示しています。今後、受注は通常水準に落ち着き、業績にとって逆風となる可能性がありますが、一方でサプライチェーン問題の改善が追い風となり相殺されるだろうと見ています。
ヘルスケア機器関連銘柄はここのところ冴えないパフォーマンスでしたが、この先、医療現場における労働力不足が緩和され、緊急を要さない外科手術の施術が増えるにつれ、回復に向かうと見ています。
半導体および産業用ソフトウェア関連銘柄は、当月も好調なパフォーマンスを続け、プラス寄与となりました。半導体関連銘柄の中では、アドバンスト・マイクロ・デバイセス、エヌビディア、インフィニオン・テクノロジーズなどが特に堅調でした。引き続き、自動車、産業、データセンターなどのエンド市場にフォーカスした半導体企業については強気の見通しを持っています。
エヌビディアは、投資家向け説明会で発表した新製品やサービスを通して人工知能(AI)におけるリーダー的存在をアピールしました。またグーグル・クラウド・プラットフォーム(GCP、グーグルがクラウド上で提供している全サービスの総称)で、エヌビディアの製品が採用されたことも発表されました。
インフィニオン・テクノロジーズは、1-3月期決算が良好な業績となることを正式な決算公表前に発表し、通期見通しについても売上高・利益ともに上方修正しました。中核事業である自動車および産業部門における底堅い需要が牽引役となっています。強気の価格設定に加え、エネルギーコストが予想よりも低く推移したことが利益率改善の追い風となりました。同社は生産能力を拡大させており、より多くの受注残を売上に転換することが可能となっています。過去数四半期においてはサプライチェーン問題が妨げとなっていましたが、この問題の解消により経営陣は通期見通し引き上げに自信を深めたと見られます。この先、年後半に向かうにつれ、同様のトレンドが他の組入銘柄でも見られることを当戦略では期待しています。
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