ロボテック・トレンド:産業用ロボットの高い成長継続へ
ロボテック・トレンド
産業用ロボットの高い成長継続へ
世界の産業用ロボット市場は、様々な分野での旺盛な需要を背景に成長を継続するとみられます。国際ロボット連盟(IFR)は、世界の産業用ロボットの出荷台数は2024年まで高い成長を続けると予測しています。2021年は世界で新型コロナ感染拡大からの回復でロボット需要も旺盛となり、出荷台数は前年比13%増の43万5000台に達したとみられます。
世界では現在300万台超の産業用ロボットが稼働し、アジアが世界最大の市場となっています。特に中国での設置が急拡大しており、2020年には前年比20%増の16万8400台が設置されました。中国では半導体製造関連の設備拡充が進められており、産業用ロボットの増加が続いています。
IFRは今年2月に世界の産業用ロボット市場における5つのトレンド(Top 5 Robot Trends 2022)を発表していますのでご紹介します。
1.新たな産業で進むロボット導入
これまで自動化を取り入れていなかった分野で、産業用ロボットの導入が急速に進んでいます。新型コロナパンデミックによりeコマース革命が起こり、eコマースの急拡大を支えるため、5年前には同分野にはほとんど存在しなかったロボットが、今では世界中で数千台も導入されています。ロボットの比較的新しい導入先である配送・物流、建設、農業などの業界は、日々進歩するテクノロジーの恩恵を受けています。
2.使いやすくなるロボット
これまで産業用ロボットを導入するには複雑な準備や作業が必要でしたが、新世代のロボットは使いやすくなっています。アイコンを使った簡単なプログラミングや手動操作を可能にしたユーザーインターフェースが増えてきています。また、導入を容易にするためにハードウェアとソフトウェアをセットにしたものもあり、ロボット導入時の手間と時間を大幅に削減しています。
3.ロボットと人間に関して「スキルアップ」
多くの政府、業界団体、企業が、次世代のために早期のロボットおよび自動化の基礎教育を行う必要性を感じています。社内での教育に加え、外部の学習プログラムが強化されています。ファナック、安川電機、ABBなどの代表的な産業用ロボット企業は、世界30カ国以上でロボット講座を開催しており、毎年1万人から3万人が受講しています。
また、ロボットの活用により工場内での退屈で危険な作業は自動化されるため、人々は将来の職場に向け重要なスキルを学ぶことができ、キャリアおよび収入を向上させることができるでしょう。
4.ロボットによる生産確保
貿易摩擦やコロナ禍により、製造拠点が先進国顧客の近くに戻ってきています。サプライチェーンの問題から、企業は自動化による自国や近隣地域での生産を検討しています。米国ではこれまで産業用ロボット受注の大半は自動車分野向けでしたが、米業界団体(Association for Advancing Automation)によれば、昨年7-9月期には全米でのロボット受注が前年同期比で35%増加し、自動車分野以外の受注が半分以上を占めています。
5.デジタルオートメーションを支えるロボット
2022年以降、未来の製造業実現のために重要な要素として様々なデータが注目されます。インテリジェントに自動化された生産プロセスから収集されたデータが蓄積され、事業の意思決定のために分析されます。また、ロボットが人工知能(AI)によって学習能力を持つことで、企業は建設現場から食品・飲料施設、ヘルスケアの現場に至るまで、新しい環境でインテリジェントな自動化を簡単に導入することができます。ロボット用のAIは成熟してきており、学習型ロボットが主流になりつつあります。学習型ロボットは試験導入段階を過ぎ、2022年には大きな展開が予想されています。
IFRのミルトン・ゲリー会長は、「ロボットによる自動化の変革が、伝統的産業と新たな産業の両方で加速しており、より多くの企業がロボットがもたらす多くのメリットを認識しています」と述べており、また、アクサIMのロボテック戦略ポートフォリオ・マネージャー、トム・ライリーも、「ロボットや自動化は、エキサイティングな新しい分野で幅広くかつ大きく成長し続ける可能性があります」と述べていますので、ロボットおよび自動化関連企業の長期的な成長拡大が期待できそうです。
ロボテック戦略の詳細につきましては、ぜひウェブサイトをご覧ください。
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