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サステナビリティ

TNFD:生物多様性アクションの促進剤


生物多様性は、投資家や投資先企業にとって重要な課題です。様々な組織が自然界に及ぼす影響を報告し、理解するための枠組みを示す世界的イニシアチブであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が最終勧告を公表したことを受けて、数社の企業や金融機関が早期にTNFDを採用する方針を発表しました。

生物多様性は、気候問題よりも成熟度が低い複雑な問題であり、投資家にとって重要な変数でもあります。この点を踏まえ、TNFDに関するいくつかの疑問点や、アクサIMグループにとってのTNFDの意味、そしてコンサルティング会社のI Care by BearingPointがアクサIMグループと親会社のアクサグループに代わって実施したTNFD試験的実践から得られた知見について取り上げます。


自然と生物多様性がアクサIMグループの戦略的優先事 項となっているのはなぜか?

自然の崩壊は、あらゆる経済活動の存続と世界の金融システムの安定を揺るがす直接的な脅威となっていると見ています。自然に関連する物理的リスクや移行リスクの中には、すでに現実のものとなりつつあるものもあり、ビジネスの成長や回復力に影響を与えていると考えています。従って、そのようなリスクに対処しながら、自然の保全と回復に貢献できる潜在的な投資機会を見つけ出し、同時に財務パフォーマンスを達成することを目指す上で、投資が自然に及ぼす影響を把握し、評価することが非常に重要になっていると思います。


アクサIMグループは、TNFDに従うために企業とのエ ンゲージメントに取り組んでいるか?

TNFDは自主的な情報開示の枠組みであり、拘束力はなく、企業がこれに従う義務はありません。また、規範的なものではなく、企業が段階的に導入することを推奨する提言を示すものです。このため、企業が報告するデータの質や可用性は徐々に向上すると見られ、それに応じて、投資判断に役立つと期待される指標も強化される可能性 が高いと考えられます。依然としてデータに関する大きな課題があること、また、生物多様性に対する様々な圧力のすべてが科学によってモデル化されるわけではないことから、生物多様性に関する企業とのエンゲージメントでは、実用的なアプローチを採用し、現在の成熟度に合わせなければならないと当社グループは考えています。今はまだ行程の始まりに過ぎず、そのプロセスは反復的なものになると認識しています。


アクサIMグループは、資産運用会社として、TNFDの 推奨事項をどのように取り入れるのか?

当社グループは、LEAPアプローチ(Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備))を実践的に試験することを決定しました。この試験的実践は、コンサルティング会社のI Care by BearingPointが、当社グループの親会社であるアクサグループと共同で、Iceberg Data Labのデータを利用して実施したものです。1

LEAPアプローチは、企業と金融機関の両方の開示情報を準備するために、TNFDによって開発され、推奨されている手法です。これにより、重大な影響、依存度、リスクと機会の特定、その優先順位など、様々な側面を検討します。 

金融機関にとっては、LEAPアプローチは、開示すべき重要な情報を特定し、その後、生物多様性を取り入れる詳細なステップを報告することを目的とするものです。データが限られている現状を踏まえると、金融機関がまずできることは、自然に関連する依存度と影響度が最も大きいと考えられる特定の一連のセクターに的を絞ることです。当社のような資産運用会社にとっては、そのような特定のセクターを対象とすることで、「Locate(発見)」の柱を満たせることになります。

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この最初の試験的実践ではどのセクターが選択された のか?またその理由は何か?

当社グループは試験的にアグリフード(農業食品)と自動車の2つのセクターを選択しました。アグリフードセクターは生物多様性の喪失に最も影響しているセクターの1 つであるため、これは当然の選択でした。2 このセクターは、作物や野菜の栽培から食品製造、卸売、農薬まで、様々なサブセクターで構成されています。アグリフード は、対応の余地が大きい主要なセクターだと考えられます。例えば、持続可能性の高い食料システムに移行するなど、マイナスの影響を抑え、さらにはプラスの影響をもたらせる機会が数多くあると見ています。従って、このセクターは、債券のリスク軽減戦略と、株式と債券のインパクト戦略の両方に関連していると考えています。 

自動車セクターは、特に電気自動車(EV)への移行による気候と生物多様性との関係に取り組む目的で選択されました。原材料使用による上流への影響と、EVの使用による下流への影響の割合、それに伴う温室効果ガス排出量を詳しく把握することが狙いでした。また、金属や鉱物の抽出と精製に伴う生態毒性や、自動車が使用されている国の電力構成の影響(特に、主として石炭に関連する場合)も測定したいと考えました。

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この試験的実践からどのような知見が得られたのか?

想定内のことですが、この試験的実践では、アグリフードセクターが生物多様性に及ぼすマイナスの影響が高まっていることが確認されました。 

しかし、それだけでなく、各セクターの主要リスクのヒートマップと、リスク軽減の要素も明らかになりました。 データには留意すべき制限がいくつかありますが(後述)、移行リスクという点で手法が差別化されているという結論を導くことができました。具体的には、企業が導入した軽減プロセスの可視性の改善や、対象の主要な製品・地域に関する入手可能なデータの粒度の向上により、アグリフードセクターにおける森林減少リスクをより確実に評価することができます。 

従って、これらは、単に重要な結果というだけでなく、差し迫っている規制リスクを考慮したリスク軽減戦略に組み込むことも可能です。

一方、リスク格付けが低いことは、様々な面でマイナスの外部性(個人や企業の経済活動が、直接的には関係のない他の経済主体に対して何らかの影響を及ぼすこと)がないことという裏付けになり、生物多様性投資戦略の潜在的な候補の特定に役立つ可能性があります。


データと手法に関する主な制限は何か?それは投資家 にとってどのような意味があるのか?

投資家は、指標が何を意味するのか、あるいは何を意味しないのかを理解する必要があります。強度指標は、経済的な基準によって偏りが生じる可能性があります。例えば、食品小売業者は、純粋な食品生産者よりも付加価値が加えられ、収益が高くなる傾向があるため、企業の生物多様性のフットプリント(環境への影響の度合い)が有利に見える傾向があります。これは自動車セクターにおいても同様であり、ブランド特有の価格効果により、収益に基づく計算時に強度指標に歪みが生じます。その代わりに、生産台数によって影響度の指標を正規化することで、企業間の比較が明確になります。

依存度はサブセクターに基づいているため、同じサブセクター内の企業を区別することができません。さらに、データが限られているため、上流または下流のサプライチェーンや地域の特異性が組み込まれません。言い換えれば、企業が粒度と地域のデータをさらに開示するまで(この点は、エンゲージメントの役割を浮き彫りにしています)、依存度指標の区別はサブセクターレベルにとどまります。一方で、生物多様性と生態系サービスに大きく依存しているこれらのセクターのリスクを抑えるには、マイナスの影響の低減が依然として重要な戦略となります。


新たなトップダウンのメッセージはあるか?

トップダウンの観点からは、EVへの移行に伴い、EVやバッテリーに必要な金属や鉱物の需要増加により、絶対的なマイナスの影響が拡大するとともに土地利用圧力が高まる可能性があることが試験的実践で示されています。同様に、採掘の増加による水質汚染の割合も高くなります。

現段階では、EVへの移行によって、生物多様性の喪失の主因の1つである二酸化炭素排出量が削減されるケースが一部あったとしても、生物多様性を犠牲にしている可能性もあるという結論が考えられます。この結論は、この問題の複雑さを示しており、総合的なアプローチにより気候と自然を体系的に監視することでプラスの影響とマイナスの影響を統合することが重要だということを浮き 彫りにしています。これにより、潜在的なリバウンド効果と、ある環境面から別の環境面へと影響が移ることが避けられます。


投資の意思決定にはどのような影響があるのか?

TNFDは情報開示の枠組みです。従って、現時点では目標 設定には利用できず、投資戦略の意思決定ツールとして容易に適用できるものではありません。

とはいえ、TNFDは、投資先企業が直面し、対処する必要がある様々なリスクのヒートマップを示すものであり、 ポートフォリオレベルまたは資産運用会社レベルでの将来の意思決定ツールの土台となることが試験的実践で実証されました。

短期的には、エンゲージメントと投資のデューデリジェンスに情報を提供すること、企業による情報開示の強化を促進すること、発行体レベルでの自然に関連する依存度、影響度、リスク、機会の統合を支援することが鍵となります。また中期的には、データの強化と粒度の向上により、さらに強固な手法と指標が確立され、新たな手法の出現につながる可能性も高いと見られます。

同時に、生物多様性は多面的であり、多くの要素が絡み合い、様々な圧力が関連し合っていると考えられます。 このため、投資が生物多様性に及ぼす影響への対応や生物多様性リスクへの取り組みを始めない金融機関は、革新的な企業の間で生まれつつある潜在的な機会を逃すなど、大きなリスクを負います。


今後のステップはあるか?

これまでに得られた知見をもとに、今後、どのように試験的実践を展開していくべきかを検討し、リスクのヒートマップや今後の投資プロセスに徐々に組み込む方法を評価しているところです。 

こうした初期の洞察を補完する様々な観点やアイデアを検討中であり、この点について今後、さらに最新情報を提供する予定です。


過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は7月22日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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