新興市場債券戦略の見通し 変わらないこと、変わったこと
主なポイント
新興国債券市場は、一時市場変動があったもののプラスのリターンとなった夏を経て、米国大統領選への懸念に影響を受け始めています
トランプ氏の勝利は、貿易保護主義をもたらし、米ドル高、アジアとの通貨戦争、新興国市場を傷つける米国金利の上昇につながる可能性が高いため、一般的に新興国市場の債券にとっては悪いニュースと市場では受け止められています。ハリス氏が勝てば、そのような問題を回避できると見られているので、状況はトランプ氏勝利時よりはプラスと見ています
しかし、トランプ大統領の誕生の可能性は市場にとって目新しい想定ではなく、ハリス副大統領も現政権における立場から、関連する戦略を提示しています
トランプ氏が再選された場合の、新興国債券(EMD)戦略の見通しについて、トランプ氏の第一回目の大統領期間は有益な指針となるでしょうか
新興国市場(EM)の現在の環境を見ると、2016年の米国大統領選挙の直前と類似する点が多々見られます。
2015年11月、ウクライナは前年のロシアの侵攻とそれに続く国家債務不履行(デフォルト)を受けて、債務再編を完了したばかりでした。2024年8月、ウクライナは対外債務の支払いを2年間猶予した後、再び自国債の再編を行いました。
2016年、アルゼンチンは、過去の体制からの脱却を約束したマウリシオ・マクリ改革派政権の時代を迎えていました。そして執筆時現在、ハビエル・ミレイ政権が積極的な財政安定化プログラムに着手し、新たな転換を試みています。
現在と同様に、中国は当時、低成長や過剰生産能力、デフレ懸念に直面し、不動産市場は低迷していました。
さらに、当時ブラジルは財政および政治の両方の危機に直面していました。ジルマ・ルセフ政権は財政赤字を国内総生産(GDP)の2桁パーセントの規模(2015年にはGDPの-10.2%)にまで押し上げ、最終的には議会による弾劾へと発展しました。ルラ・ダ・シルヴァ大統領の市場との蜜月関係(2022年10月の再選後)は、2024年の赤字予算が再びGDPの10%に達する見通しであることから、終わりを迎えたと思われます。
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