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Investment Institute
視点:CIO

政治と市場


不確実性と混乱は政治的な出来事と関連することがあると見ています。極端な場合、物価と貿易が影響を受ける可能性があり、どちらも世界的に影響を及ぼす可能性があります。地域的にみると、政治的優先事項が変化した場合に影響を受けることがありますが、必ずしも金融市場に大きな、または長期的に悪影響を及ぼすわけではないと思います。英国が4日の総選挙後新政府を立ち上げる中、金融市場は比較的堅調な動きをしています。海峡の向こう側(フランス)では、不確実性が高まっています。ブレグジットを決めた2016年の国民投票以来、英国株式のパフォーマンスは他の主要市場と比較して劣っていましたが、引き続き反転する可能性があると見ています。

明確な結果: 市場は上昇

政府の政治的傾向の明らかな変化や議会で大幅な過半数となる議席獲得は、英国金融市場から肯定的な反応を得るための必要条件になる傾向があると見ています。今回の総選挙の結果は、その両方を満たしていると思います。その結果、筆者は執筆時点では、政治リスクプレミアムの低下とイングランド銀行の利下げ見通しに基づいて、英国株式市場は好調に推移し、英国債市場の利回りも低下すると予想しています。労働党が長期間野党だった後に政権に就き、明確に過半数の議席を獲得したのは、1997年が最後でした。当時、選挙の1か月間にFTSE 100は約4%上昇し、英国債利回りは22ベーシスポイント(bp)低下しました。1年後には、FTSE 100は35%以上上昇し、英国債利回りは160bp低下しました


全体的にはプラス

もちろん、英国の金融資産が優れたリターンを上げることは保証されるものではありませんが、金融市場にとって好ましい追い風となる材料があります。今回の選挙によって、ブレグジットの混乱や度重なる指導者の交代、行動に対する否定的な見方によって支持を失っていった政府が政権の座から降りることになります。政治家は、それがグローバルの投資家の目を通して英国にどのような影響を与えるかを過小評価していると思います。さらに、英国の株式市場や通貨は他の国に比べて割安であると見ています。そのため、世界の投資家にとっては投資の好機であると思われます。マクロ経済面では、国内総生産(GDP)成長率は前年比で今年1~3月期の0.3%から2025年には1.0%~1.5%に上昇すると見ています。特に金融政策が緩和された場合、この成長率は上振れする可能性があると思います。財政面では見通しは必ずしも明るくないものの、英国が多くの欧州諸国や米国よりも悪い状況にあるとも思いません。従って、英国債のリターンが他の先進国の国債のリターンよりも劣る理由はないと考えています。


詳細は

労働党のマニフェストは、詳細がかなり不足していると見ています。同党によれば、成長を優先し、予算上の目標は十分に資金的裏付けがされるとしています。エネルギー部門を改革し、また、鉄道の国有化拡大や港湾の近代化、道路建設の優先化によりインフラを改善すると約束しています。より広範な産業政策の一環としてグリーンエネルギーに重点が置かれていることを考えると、米国から学んだ教訓もあるかもしれません。これらはすべて、マニフェストが主張するように「成長を刺激する」ことに向けられています。欧州との関係改善が約束されていますが、これは単一市場や関税同盟に再び参加するということではないと思います。


適応

英国経済全般、そして金融都市ロンドンは、EU離脱後の世界に適応する必要に迫られていると思います。ユーロ建ての取引や投資業務の多くは、欧州連合内の拠点に移転しなければならず、ロンドンは多くの欧州の金融専門家を失いました。一時は、株式取引の主要拠点としてパリ​​がロンドンを追い抜いた時期もありました。今後何が起こるのか、そしてロンドンの歴史的な競争上の優位性が、英国経済にとって重要なセクターの堅調な成長を再び支えることができるかどうかを見るのは興味深いと思います。銀行、資産運用、保険は引き続き重要ですが、政治環境が安定するにつれて、フィンテックや暗号通貨ビジネスが繁栄する余地もあると見ています。


英国以外のリスク

したがって、英国の資産にとっては、今回の総選挙の結果が地域的な政治リスクを小さくしたかもしれません。しかし、英国外ではそうではないと思います。筆者がこの記事を書いているのは、フランスの有権者が数週間前にエマニュエル・マクロン大統領が国民議会を解散すると発表した後、国民議会がどのようなものになるかを確定するために2度目の投票に向かう7月7日の直前です。米国では、健康状態への懸念から、ジョー・バイデン大統領が11月の民主党候補になるかどうかは不透明になっています。世界的には、ウクライナと中東の両方で紛争が激化するリスクは依然として高いと思われます。構造的には、西洋と非西洋の文化と政治的野心の二極化が今後数十年の歴史を形作ることになると見ています。それは、軍事費、物理的な防衛およびサイバーセキュリティ、移民管理、そしてもちろん気候変動リスクに影響を及ぼしていると思います。


政治リスクの評価

そのため、投資家は政治リスクについて常に意識することになります。政治リスクについて述べるのは比較的容易なことと思いますが、政治リスクが存在する場合にそれを特定してポートフォリオにどのような影響が及ぶのかを正確に述べることは容易なことではないと思います。しかし、明らかに糸口となるものはいくつかあると思います。まず、不確実性です。予想外の選挙結果や、もっと極端なケースとして急速な政権交代などの政治的混乱は、政策や経済見通しに関する不確実性を生み出すと思われます。それはいくつかの側面にまたがると考えます。つまり、成長とインフレはどうなるのか?金融政策はどのように運営されるのか?政府の借入は増加するのか?貿易と投資の流れに影響を与える外交関係の変化はあるか?などです。通常、当該国の金利と通貨の動向に焦点を当てた複数の市場反応が考えられます。新興国にとって、このような政治的不確実性は資本フローが弱体化するリスクとなり、外貨準備高が枯渇した場合、対外資金調達に関する懸念を引き起こす可能性があります。現在フランスで懸念されているのは、7日日曜日に決着がつかない結果となった場合、債務対GDP比率を安定させるために必要な予算調整を行うことが困難になるということだと見ています。その結果、ドイツ国債の利回りに対するフランス国債の利回りの上昇が持続する可能性が高いと考えています。

フランスは、先進国において財政政策と債務の持続可能性に典型的に関連する懸念を如実に示す例です。近年の政府債務対GDP比の着実な増加を考えると、政府の自由度は、市場の逆反応(債券利回りの上昇)を引き起こす前までに限られると思われます。その他の懸念は、成長計画、産業政策、貿易政策、規制の信頼性と考えます。政治的不確実性は政策の不確実性を生み出し、投資家が投資収益に自信を持つことを困難にすると思います。この場合、資本配分がディフェンシブ(防御的)になり、リスクプレミアムが上昇する可能性があると思います。

フランスと米国が現在このような不確実性を抱えているのは、選挙後にそれぞれの政府がどのような姿になるかまだ分からないからであると考えます。労働党のマニフェストの詳細に欠落があるとしても、この点では英国の方が有利です。


混乱

世界的には、地政学的リスクは需要と供給の経路に影響を及ぼす可能性があり、その為に金融市場に影響を及ぼす場合があると思われます。テロ攻撃(またはその脅威)、軍事的緊張の高まり、または全面的な紛争などの出来事は、影響を受ける地域の消費者および事業支出に影響を及ぼすと思います。人の移動(旅行)、商品や資本の流れが悪影響を受ける可能性があると考えます。輸入と輸出の為の市場活用も損なわれると思われます。地政学的紛争に苦しむ国や地域で直接的または間接的に活動している企業への投資はリスクが高まると思います。2023年に見られたように、地政学的出来事は供給ショックを引き起こし、インフレにつながる可能性があり、それは金利の上昇と成長と投資への悪影響につながるものと考えます。ロシアがウクライナに侵攻していなければ、このようなエネルギー価格ショックは発生せず、金利はそれほど上昇せず、債券のリターンはそれほどマイナスにはならず、欧州の成長はもっと強力になっていたかもしれません。


マクロへの影響

この地政学的出来事は、企業や消費者がリスク回避的になったため、支出や投資の決定に影響を与えました。マクロリスクは現実のものとなりました。これは成長にとってマイナスであり、株式やクレジットのリスクプレミアムの上昇(価格の低下)につながりました。しかし、投資家にとって、金融市場が地政学的出来事に過剰反応することが多いという事実は安心材料と考えることもできます。つまり、初期の反応は購入の機会を生み出し、混乱の影響は懸念されていたほど大きくないことが多々あります。古い格言のように、恐れるものは恐れそのものだけです(フランクリン・ルーズベルト大統領の言葉)。

現在(執筆時)最も懸念されていることは、西側諸国と中国、ロシア、インド、その他の南半球諸国の同盟国との間で新たな世界的紛争が起こることと見ています。これはテールリスク(確率は低いものの、発生すると甚大な損失をもたらすリスク)であるものの、世界的な資本配分に影響(脱グローバル化)し、サプライチェーン(供給網)への適応に影響を及ぼす可能性があると思います。緊張は存在し、近年さらに顕著になっていると思われ、そして、米国でドナルド・トランプが再選される可能性はその緊張を激化させる可能性があると見ています。しかし、先週日米の株式市場では史上最高値に達し、また欧米市場の実質債券利回りは安定から低下傾向にあります。短期的には、投資する際には、政治面ではなく経済面に着目することが望ましいと思います。

第二ラウンド

民主党が候補者をバイデン氏から代えるかどうかにもよりますが、今年後半に米国で何が起こるかを評価する時間があると思います。市場では「トランプ勝利」を見据えた投資戦略の話が増えています。これは、国債にとってはやや弱気(財政拡大とインフレ)、ドルにとっては強気で、テクノロジーバブルにはやや不利に働くのではないかと思われます。しかし、現時点では市場の価格に影響を与えていないと思います。実際、市場では、債券市場は各種経済データが軟調を示すにつれて米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和のタイミングが注目されており(7月の利下げはサプライズになる可能性があります)、株式市場上昇は人工知能に集中した買い意欲に支えられています。これまでのところ、ボラティリティはかなり低いままであり(VIX指数は約12)、過去のデータから見ると、7月は債券と株式のリターンにとって好ましい月であると思われます。しかし、2024年後半はそれほど穏やかではないかもしれないと考えています。

パフォーマンス等データの出所: レフィニティブ・データストリーム、ブルームバーグ。特に記載がない限り2024年7月4日現在。

過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。

(オリジナル記事は7月5日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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