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ソーシャルボンドが重要なアセットクラスになった理由


ESG(環境、社会、ガバナンス)における社会(S)的な問題は新しい現象ではありませんが、最近のイベントによりこれが世間一般に注目されるようになりました。新型コロナウイルス・パンデミックが引き起こした不平等、安定的なエネルギー源へのアクセス問題または食品価格の上昇など、人々は多くの社会的課題に直面しています。 これに加えて気候変動が社会に及ぼしている悪影響を考えれば、ソーシャルボンドの注目度が上昇しているのにさほど驚きはありません。

社会にプラスの変化を起こしながら投資機会を追求する投資家にとって、ソーシャルボンドは直接的な選択肢を提供しています。ソーシャルボンドは、雇用の創出、教育、または手頃な価格の住宅や医療サービスといった基本的ニーズへのアクセスに関連する無数のプロジェクトへの融資を通して、より持続可能な経済への移行を支援します。  ネットゼロへの移行に関連した社会的プロジェクトの重要性は、化石燃料産業における雇用の喪失や、増加し深刻化している自然災害による荒廃や損失に関する懸念が最近指摘されていることからも感じ取ることができます。

企業や政府にとってソーシャルボンドへの関心は、持続可能なビジネス目標の達成とコミュニティー支援という2つの側面があります。 たとえば欧州連合(EU)のSUREプログラムは、新型コロナウイルス・パンデミックの期間中、短期雇用に融資し失業を防ぐ目的で創設されました。1,000億ユーロ(約15兆円)に上るソーシャルボンドの発行を通して資金調達を行った同プログラムは、2020年に新型コロナウイルス・パンデミックの影響を受けた約3,100万人および約250万の企業を支援しました。この措置は地域のコミュニティーを支援した一方、EUが提供した有利な借入条件および平均およそ15年という借入金の償還期限により、加盟国は82億ユーロに上る金利支払いを節約できました。1

2019年と比較した今日のソーシャルボンド市場の拡がり

社会的問題は、はるかに遠い国々が直面するものではなく、今や自分たちのコミュニティーが直面しているとの一般認識が高まっていることから、ソーシャルボンド投資の関連性が拡大してきました。ソーシャルボンドは今や単なる難解なインパクト投資ではなく、持続可能な経済への移行の社会的側面を支援したいと望む人々に投資機会を提供します。 この意識の高まりとそれに続く需要は、2019年(新型コロナ以前)から今日にかけてのソーシャルボンド活動の比較により示されています。2019年の1年間の発行高は90億ドル(約1兆2,000億円)でした。それ以降はこの数値を上回り、特に2021年には1,580億ドルに達しました。2  

こういった増加にもかかわらず、ソーシャルボンド市場は未だに比較的小さく、そして集中しています。  アセットマネージャーにとっては、投資家に十分な分散を提供するソーシャルボンドのポートフォリオ構築が重要ですが、これは依然として課題です。セクターや発行数が増えていることは、機会の範囲拡大に役立っています。そしてソーシャルボンド発行の大半が欧州の発行体によるものですが、次に発行の多い地域は現在新興国です。アジアおよび米国での発行数が拡大していることは、ソーシャルボンドがより世界的な投資になる潜在性をもつことを示しています。投資家が社会的プロジェクトにアクセスする方法に対する選択肢も拡大しており、米国の発行体は特にサステナビリティボンド(グリーンボンドとソーシャルボンドを組み合わせたもの)を積極的に発行しています。

ソーシャルボンドが取り扱うテーマの範囲もまた、近年多様化してきました。当社ではこの理由から、ソーシャルボンドは、インクルージョン(多様な人々の特性や価値観が活かされている状態)、エンパワーメント(自律性促進、能力の開花)、健康と安全という3つの柱のいずれかに属するものと考えます。これらの柱は、教育へのアクセス、金融サービスへのアクセス、食料安全保障といった主要な分野を反映し、ソーシャルボンドが与えるインパクトを評価するための基盤を提供します。ソーシャルボンドの発行に際して求められる重要業績評価指標(KPI)と透明性により、投資家は従来の債券に比べて投資の成功度や進捗度をより良く把握できることから、このインパクト評価は重要な差別化要因となっています。

インクルージョン

人々が日常生活をよりうまく管理できるよう、テクノロジーおよび金融の複雑な世界を模索し支援することが、この柱のひとつの側面です。インクルージョンのもう一つの柱が、住宅および不可欠なインフラです。ソーシャルボンドはこれらのプロジェクトへの資金調達手段を企業に提供します。ドイツの不動産会社ヴォノヴィア( Vonovia)は、低所得層向け住宅への投資目的で、2022年3月に初めて2つのソーシャルボンドを発行しました。資金は、住宅が高齢の居住者により適応するよう、近代化にも充てられました。これらのソーシャルボンドは、アクセスが良く手頃な価格の住宅を提供するために平均賃料を安めに設定してきたことから、ヴォノヴィアのビジネス倫理に適合しています。 同社の年次報告書は、建設または近代化された住宅数の目標に対する進捗度や、手頃な価格の住宅を提供された住民数などのKPIを通して、これらのソーシャルボンドの成果の詳細を投資家に提供します。

エンパワーメント

エンパワーメントは、駆け出しの起業家の支援から教育やダイバーシティに至る広範なカテゴリーを指します。英国の金融持ち株会社ナットウエスト・グループ(NatWest Group)初のソーシャルボンドは、ソーシャルボンドがどのようにコミュニティーに対してインパクトのある融資を提供できるかを示す一例です。 2019年に発行されたグループ初のソーシャルボンドは、約25億ポンドに上るナットウエストの既存の中小企業向け融資と結び付いていました。これは同グループの中小企業向け融資、特に女性起業家企業への関与を反映したものです。同グループは、調達資金の配分および適格融資の社会的貢献について年次報告を行い、ソーシャルボンドを通じた雇用の創出、中小企業への支援を明確にしています。

健康と安全

当社が考える3つ目の柱は、医療・福祉ソリューションや安全に関連するプロジェクトからなります。モタビリティ(Motability)は英国企業で、自社のビジネス戦略を反映させながら、人々に福祉ソリューションも提供するためにソーシャルボンドをどのように利用できるかを示す企業の一例です。モタビリティは、英国政府の移動給付金の対象となる顧客用の車両、電動の車椅子やスクーターに関する資金調達または借り換え目的で、ソーシャルボンドを発行しました。このプロジェクトは、移動が困難な人々への健康と福祉を支援するだけでなく、モタビリティ の事業戦略も反映しています。同社はESG監視委員会を持っているため、プロジェクトおよび選抜プロセス原則を評価できるため、ソーシャルボンドに関する国際資本市場協会(ICMA)の指針を満たしています。さらに、資金全額が配分されるまでインパクト報告が提供されます。ビジネスの性質から、モタビリティ のような企業は顧客維持率、手頃な価格、顧客満足度などの指標を提供でき、投資家がソーシャルボンドのクオリティを評価する上で、これらすべてが役立ちます。

ソーシャルボンドが定着する理由

ソーシャルボンドは、社会的課題への対処という以前からの問いに新たなソリューションを提供するものでしょう。上場資産への投資家が従来得られなかった、透明かつ成果主導の成果を提供します。ソーシャルボンドのアセットクラスは、未だに発行体の集中および限定されたセクター分散という問題がありますが、関連性の高い社会的なインパクト戦略を今後も構築するため、これらの障害に対処する方法があります。投資家は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にポジティブに寄与する発行体を特定し、新たなKPIを考慮することで、プラスの影響を与えるという目標を自らの投資がどれだけ達成しているかについて、具体的なデータが得られます。

ソーシャルボンドは、社会の持続可能な経済への移行に向けた必要な変化への寄与を追求する投資家にとって、重要なツールだと当社は考えます。

企業およびセクターへの参照は例示のみを目的としており、投資推奨と見なされるものではありません。

(オリジナル記事は4月21日に公開されました。こちらをご覧ください。)

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