流動性を考慮し短期債の選好を
短期債券は、投資家がボラティリティを抑えつつ、よりリスクの高い資産への中間ステップとなり、キャッシュリターンを高める方法となり得ます。アクサ・グローバル・ショートデュレーションおよび英ポンド建てショートデュレーション戦略のポートフォリオ・マネージャーである 二コラ・トリンダデ が、進展する経済的背景により、キャッシュから短期債のシフトを検討する価値があることを概説します。
負債やリスクの管理目的で大量のキャッシュを保有していると、特に他の資産クラスの収益がより魅力的な場合、ポートフォリオ全般のパフォーマンスを低下させる可能性があります。したがって、リスク調整後リターンを向上させるための代替手段を探ることが不可欠になります。
短期債 ― キャッシュリターンを高めるための魅力的な代替手段
2022年に起こった債券価格の下落は、投資家に優れた機会をもたらしました。利回りが歴史的に高水準で推移しており、市場において短期債は引き続き非常に魅力的です。短期債は、現在の利上げサイクルを通してレジリエンスを示し、デュレーションがより長期の戦略に比べてはるかに優れたリターンを投資家に提供してきました。しかしながらすべての戦略が同じではなく、ボラティリティの高い状況では柔軟性、アクティブ運用、銘柄選択が極めて重要です。
短期債の償還期限は通常1~5年の間であり、キャッシュ保有とより長期の債券投資の間の適切な橋渡し役となっています。短期債はキャッシュよりもリスクが高い反面、高いリターン、限定的なボラティリティ、自然な流動性により魅力的な代替手段となっています。抑えたデュレーション、魅力的なキャリー、分散は、国債利回り上昇およびスプレッドの拡大による悪影響を緩和し、相場下落時のドローダウンを減らすのに役立ちます。
短期債は以下の特徴により、流動性管理に特に有効です。
- 低いボラティリティ:短期債の価格変動性は、より長期の債券に比べて低い傾向にあり、これによりキャッシュ流動性戦略にとっての魅力的な代替手段となっています。
- 自然な流動性パイプライン:短期債が満期を迎えると、元本は投資家に戻るため、自然な流動性パイプラインが形成されます。これにより取引や追加コストの必要性が減少するため、ポートフォリオのパフォーマンスがさらに向上します。
- プル・トゥ・パー:債券が割引価格で取引されている環境では、プル・トゥ・パー(満期時に債券が額面価格で償還される)の機会は魅力的です。中央銀行が利上げを継続している場合であっても、プル・トゥ・パーでリターンが高くなる可能性があります。
アクティブ運用でリスク低減
状況によってはパッシブ運用が有用ですが、短期債のアロケーションにはアクティブ運用が有効と当社は考えます。アクティブ運用のファンドマネージャーは市場の非効率性を活用し、リスク・リターンの良好なプロファイルをもつ債券を探し出せます。アクティブ運用マネージャーには入念に債券を選ぶ柔軟性があり、デフォルト率を減らせます。厳密なクレジット分析を実施して高クオリティのポートフォリオを構築することで、潜在的な信用事由の影響を最小限にとどめることができます。
パッシブ運用戦略では、格下げのあった銘柄は自動的に売却され、損失が具体化する可能性があります。これにより魅力的な債券も、市場の構造的なシフトに巻き込まれ、影響を受けるかもしれません。たとえばセクター全般への影響により、あるセクターのすべての企業が、個々の発行体の特性に注意することなく再評価される場合などです。これに対しアクティブ運用ファンドマネージャーは、格付けが変わった場合でも債券を維持でき、償還期日まで保有することで不都合な時期における投げ売りを避け、元本を保全できます。
パフォーマンスおよび流動性の向上
投資ポートフォリオの一画を短期債に配分することは、パフォーマンスと流動性を高めるのに魅力的な戦略です。短期債は、様々な負債および流動性要件を持ちキャッシュ比率が高いポートフォリオに対して、リスク調整後の魅力的な代替手段を提供します。限定的なボラティリティでリスクと潜在的なリターンを追加できる能力、自然な流動性パイプライン、プル・トゥ・パーの収益の可能性により、短期債はあらゆる投資ポートフォリオに対して価値ある追加手段となります。
さらに、アクティブ運用を選ぶことで、デフォルトリスクの緩和、投げ売りの回避、入念な銘柄選択による利回り向上の可能性など、他のメリットも見込めます。短期債を、従来の債券配分ではなく、キャッシュ流動性戦略の一部とみなすことで、投資家はポートフォリオを最適化し、現在の複雑な金融市場を自信を持って乗り切り、リターンを向上させられるでしょう。
(オリジナル記事は8月17日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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