金利が安定しつつある環境でインフレ連動債を考慮する理由
主なポイント:
- 金利が安定すると考えられる一方で、インフレ率は歴史的に高く、欧米の中央銀行の2%目標を依然として上回っている。
- 投資家はインフレ連動債の配分を再評価すべき理由は何か。
- インフレ連動債がこの市場環境で投資にもたらすものは何か。
経済の軟化を示す経済データや中央銀行のタカ派的なメッセージにより、市場は、利上げが一時停止されると見ています。金利が安定しつつあるとすれば、この安定はインフレ連動債という資産クラスにとって何を意味するのでしょうか。
投資家の行動は、インフレ率が上昇する時にはインフレ連動債に資金が多く流入し、インフレ率が上昇のピークに近づくと、その水準に関係なく急激に資金が流出することがしばしば見られます。現在のインフレサイクルも例外ではなく、インフレ率上昇がピークを迎えると予想された2022年末に向けて、投資家はインフレ連動債から離れ始めました。この連動債離れという動きは今日もまだ見られます。しかし、投資家にとっての課題は、インフレ率が過去の水準と比較しても依然として高い水準にあることです。インフレ率は10月に市場の予想を下回りましたが、価格変動が大きい食品やエネルギーなどを除いたコアインフレ率は高止まりしています。さらに、どのインフレ指標も、欧米の中央銀行がインフレ率の目標とする2%を未だに上回っており、また、経済成長に関する指標は大きな低迷を見せていないため、インフレ率がこの目標水準まで下がることを現実的に期待するのは難しい状況にあると思われます。
インフレは根強く、これが今後10年にわたる問題となるのではないかと、当社は見ています。グリーン革命、最近の「オンショアリング(国内回帰)」の動き、財政赤字懸念といったインフレを定着させる可能性がある要因によって、インフレ水準が当面は比較的大きく変動を続ける可能性があると思われます。
市場参加者の予想の多くは、インフレ率が2024年末までに2%目標の水準近くに戻るものの、特にユーロ圏では、新型コロナパンデミック以前よりも高い水準に留まると予想していると思われます。
出所 :ブルムバーグのデータを基に、アクサ・インベストメント・マネージャーズが作成。2023年11月24日現在
これに加えて、以下のチャートが示すように、長期のブレークイーブン・インフレ率(市場が推測する期待インフレ率、BEI)は、市場が将来のインフレ率を2010年~2013年と類似の水準に設定していることを示唆しています。
出所 :ブルムバーグのデータを基に、アクサ・インベストメント・マネージャーズが作成。2023年11月24日現在
機会を提供している市況
イールドカーブ(利回り曲線)は現在、短期金利が長期金利よりも高い逆イールドカーブの状態のままですが、過去の例を見ると、この状態の後には、利回り修正による価格上昇が発生することが多々見られました。現在の市場は、デュレーションの追加に関して、プラスのシグナルをこれまでよりも強く発していると思われます。つまり、コアインフレ率が沈静に向かえば、デュレーションの価格修正が起こるという予想を考慮すると、コアインフレ率が更新されるにつれてポートフォリオのデュレーションを長期化して金利感応度を高めることは、興味深い収益機会になるかも知れません。
インフレが緩やかになると、10月に見られたように、BEIは下がる傾向があります。高い水準の実質利回りと適度な水準のBEIのこの組み合わせにこそ投資機会があると当社は考えています。インフレ連動債の平均実質利回りは現在、コロナ以前よりも高い水準にありますが、これは、投資家がインフレを上回る収入を確保できる可能性があることを示唆するものです。
出所 :ブルムバーグのデータを基に、アクサ・インベストメント・マネージャーズが作成。2023年11月24日現在
この水準と将来のインフレリスクに対する市場の予測との組み合わせは、インフレ連動債の投資家が歴史的に魅力的な水準でBEIを獲得しながら、比較的高い水準でプラスの実質利回りを確保できる可能性があることを示唆していると当社は考えます。
インフレ率は当分の間変動が大きいと考えられることから、インフレ連動債は投資家にとって有用なツールとなる可能性があります。なぜならこれは、根強いインフレに対抗する手段を提供すると考えられるからです。インフレ連動債のキャッシュフローもインフレに連動しており、発行体の多くが格付けの高い国や政府であることから、インフレ連動債への投資は投資家の資本保全戦略の一環で利用できる可能性があります。
(オリジナル記事は11月21日に掲載されました。こちらをご覧ください。)
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