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投資家はなぜ生物多様性に関心を持つべきか?
- 2025年2月18日 (7 分で読めます)
生物多様性とは、陸と海のあらゆる生態系に広がるあらゆる源から生じるすべての生き物の多様性のことをいいます。生物多様性は生物の様々な特徴を包含し、種内部の多様性から種と種の間の多様性、それらが生息する生態系の多様性まですべてを含みます。
人間の生活と健全な地球は、自然界の生物間の複雑な相互作用に完全に依存していると見ています。この相互作用は作物を維持し、清潔な飲料水を提供し、廃棄物を分解し、気候の調節を支援していると考えます。
世界のGDPの約半分以上が自然に依存しており、ある報告によると、これらのいわゆる、生態系サービス(生物・生態系に由来し、人類の利益になる機能)は年間150兆米ドル以上の価値があると推定されています。2
基本的に、生物多様性が損なわれていないほど、食料・水の供給、浸食・洪水の抑制、炭素貯留などを安定的に維持することができると考えています。
しかし、地球上の生物多様性は人類史上最速の驚くべきスピードで悪化しており、第6次大量絶滅ともいわれています。この原因の大部分は人為的な変化によるものと考えられます。3 国連によると、今日、約100万種が絶滅の危機に瀕しています。4 .
出所:Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Service、アクサIM。 説明の目的でのみ記載しています。
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経済および投資に及ぼす影響
上述したように、世界のGDPの50%以上が生物多様性に依存しているため、生物多様性の損失はあらゆる産業に影響を及ぼすと考えられます。経済はすべての部分で一定程度自然に依存しており、経済活動を通じて自然に影響を与えると見ています。こういった力学が最も深刻に作用しているのは農業、林業、漁業、鉱業、製造業であり、また、生物多様性の損失は、原材料コストの大きな変動や事業・サプライチェーン(供給網)の混乱に関連した経済的リスクをもたらすと見ています。世界銀行は、自然の受粉、木材供給、魚介類供給の3つの生態系サービスが崩壊するだけで、2030年までに世界のGDPの2.3%が失われると推定しています。5 .
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新たな投資機会
新たな持続可能な生産・消費モデルの必要性は、それとともに無数の潜在的投資機会をもたらすと見ています。投資家が資本を通じて影響を及ぼすことができる一つの方法は、生態系をより良く保全し支える製品、サービス、技術を通じて生物多様性の損失へのソリューション(解決策や手段)を提供している企業に投資することと考えます。具体的には、精密農業や環境再生型農業、植物由来食品、持続可能な包装、水処理などの分野です。
また、投資家は、環境や社会の課題に取り組むために調達資金が使用される債券であるインパクト・ボンドを通じて生物多様性の保護に一役買うことができます。ブルーボンド(海洋関連プロジェクトの資金を調達するために発行する債券)やグリーンボンド(環境関連プロジェクトの資金を調達するために発行する債券)で調達した資金は、生物多様性関連プロジェクトの資金調達に利用することができます。さらに、サステナビリティ・リンク・ボンド(ESGに関連する目標を設定し、その達成状況に応じた対応をあらかじめ設定して発行する債券)は、この市場が成熟するにつれて、より幅広い補完的な潜在的投資機会を提供する可能性があると見ています。
優先順位が急速に上昇
生物多様性の損失と地球温暖化は相互に関連したシステミック・リスクであり、一方を見ずに他方に対処することは不可能と見ています。気候変動は生物多様性損失の主因であり、2050年以降は土地利用の変更を抜いて最大の要因になる可能性が高いとみられます。7
国連が主張するように、生物多様性が気候変動に対する最強の自然な防衛手段であることに変わりないと見ています。この「気候変動は、世界中の海洋、陸上、淡水の生態系を変化させており、気候変動の結果、地域の種が失われ、病気が増加し、動植物の大量死が生じており、結果として気候に起因する最初の絶滅が起きつつあります」。8 .
公共政策や規制環境の変化が政府と企業にさらなる対策をとるよう圧力を強めており、ここにきて生物多様性の損失は急速に世界的課題の中で重要さを増しつつあると見ています。例えば、2022年12月の国連生物多様性会議COP15は画期的な合意に達し、ポスト2020世界生物多様性枠組み(GBF)を採択しました。この生物多様性に関する枠組みは、気候変動に関するパリ協定に相当します。
「昆明・モントリオール協定」とも呼ばれるGBFは、「2050年までに自然と共生する世界を実現する」という共通ビジョンの実現に向け、2030年までに生物多様性の損失を食い止め回復させるための明確な目標と道筋を示しています。 また、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が2023年に枠組みを公表しました。
どちらの取り組みも、企業や金融市場に対して、一貫性があり比較可能な、意思決定に役立つ情報を提供することを目指しています。投資家にとって助けとなる点を挙げると、TNFDのアプローチは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のアプローチと酷似し、TCFDの気候関連財務情報開示の枠組みと同様の方法で自然関連のリスクと機会を企業が開示し管理する枠組みの開発を目指しています。
環境、特に生物多様性への影響を企業が軽減するのに役立つ革新的な技術、プロセス、アプローチが現在、セクターを問わず範囲を広げながら開発されています。
投資家にとっては、生物多様性の損失が長期的なポートフォリオの持続可能性にどのように影響するかを検討することがますます重要になってきていると見ています。具体的には、事業・市場の混乱、風評リスクや規制リスク、さらにはこの数十年に一度の投資機会に投資することで得られるリターンなどです。
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投資方法
投資家が自らの投資ポートフォリオに生物多様性に関わる戦略を組み入れることを決定したとしても、重要な問題は、それをどの資産クラスでどのように行うかということです。
生物多様性に特化した投資戦略を構築するための方法は主に3つあると見ています。
- 低い生物多様性フットプリント(人間の活動が地球上の生き物たちの多様性や豊かさにどれだけ影響を与えているかを示す指標)に基づく方法:製品や事業活動が生物多様性に与える影響が限定的か低い、または平均以下の企業への投資戦略
- 生物多様性ソリューション: 生物多様性への影響がより小さい社会への移行を支援する製品・サービスを通じてソリューションを提供している企業への投資戦略。これは、上場株式投資を検討する際に現在(執筆時)アクサ・インベストメント・マネージャーズ・グループ(以下、アクサIMといいます)が選好する方法です。
- 自然資本ソリューション:民間市場における生息地の保全と回復を目標とし、自然資本の保護や回復、持続可能な管理を行うプロジェクトや企業に投資する戦略
こういった対象を狭く絞ったアプローチに加えて、投資家は既にスチュワードシップ、除外、報告を通じて自らの投資全体で生物多様性を考慮した措置をとることができることを忘れてはならないと思います。これは、債券市場への投資戦略に関してアクサIMが好む方法です。債券戦略の場合、投資家は除外と報告に加えて、グリーンボンドへの投資戦略に資金配分することを考慮することができ、また、ブルーボンドの発行が増えるにつれて同ボンド投資戦略に資金配分することを考慮することもできます。
以上より、生物多様性を考慮した投資を優先することを含め生物多様性への考慮を投資活動に統合することが、リスクを管理し、かつ前向きな社会的・環境的成果に貢献する鍵であると考えています。
過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
オリジナル記事は1月14日に掲載されました。こちらをご覧ください。
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