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Investment Institute
視点:CIO

比較的堅調なリターンが続く見込み


米国の失業とインフレの状況を合わせると、連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策をゆっくり緩和すると考えられます。市場では、今年はさらに25ベーシスポイント(bp)の利下げを2回行うと予想されています。FRBが中立的な状況に向けて進展するには、インフレ率がさらに低下し、労働市場がもう少し緩和する必要があるかもしれませんが、順調に推移していると見ています。こうした環境を背景に、市場にとって状況は好ましくなっていると思われます。企業と消費者は健全な状態にあると見ています。こうした環境は依然として、株式が資本成長を提供し、債券が安定したインカムを提供する可能性がある良好な状態にあると見ています。そして、現在市場にとってマイナスのニュースが出てきたとしても、2025年の世界の予想を考える場合には、上方修正の可能性があるかもしれないと見ています。


緩やかに進行

市場では、米国の利下げの行く末に対する期待が再びリセットされたために、債券価格の上昇は今のところ終わったと思われます。これは主に、米国の9月雇用統計*が予想を上回る強さだったことに対する反応と見ています。市場予想の15万人を上回る25.4万人の雇用が創出され、失業率も8月の4.2%から4.1%に低下しました。もちろん誰も、とりわけFRBは1つのデータのみに反応すべきではないとは思いますが、市場にとって、今回の雇用統計は将来の利下げに関して現実的な見方をもたらすことになったと見ています。市場では9月18日に50bpの利下げを行ったFRBを批判する声もあります。しかし、その批判は公正なものではないと考えており、また、FRBが50bpの利下げを続ける意向をこれまで示したことはありませんでした。

* 出所:米労働省、10月4日

実際には、実質短期金利は比較的高く、潜在的には引締めの水準になっていますが、経済はソフトランディング(経済の軟着陸)に向かって推移していると見ています。雇用統計の3か月移動平均からは、雇用の年間成長率がおおよそ1.2%程度であることが示唆されます。これは合理的な数字と思われますが、この数字は、景気後退期を除いて、米国での雇用成長のトレンド線を下回っています。ソフトランディングのシナリオに対しては、市場ではあまり問題視されていないと思われます。

投資の好機か?

債券価格の下落は、債券投資戦略に投資家を引き付けるかもしれません。市場では、FRBが年内にさらに2回利下げを行い、フェデラルファンド(FF)金利が4.5%になるとの見方があります。9月のコアインフレ指数の上昇率が3.3%であることを考えると、実質短期金利は依然としてプラス圏にあります。これは債券戦略にとって支援的な環境が続いていることを意味します。今年の世界の投資適格債市場全般を見ると、トータルリターンは、1~3月期がマイナス、4~6月期がほぼ横ばいとなりましたが、7~9月期は標準的なリターンを上回るリターンとなったので、今年の年間では約3.0%のプラスになる可能性があると見ています。来年については、同様かやや高い水準を見込むことが合理的であり、現在のスプレッドの水準を考えると、クレジット市場からもう一段の収益を得る余地があると見ています。

債券市場のバリュエーションは割高か

トランプ候補が11月の米国大統領選挙に勝利した場合には、リフレ政策(金融政策や財政政策を通じて景気の回復を図り、緩やかなインフレを生み出すことをめざす政策)によるリスクがあるとしても、マクロ経済は現在(執筆時)、債券にとっては支援的な状況になっていると見ています。しかし、広く見ると、バリュエーションに関する懸念があります。イールドカーブ(金利曲線)はソフトランディングを織り込んだ水準になっているため、金利低下を見込んで投資することは、市場予想に反する方向に投資の意思決定をする場合か、または、市場の短期的な動きに対して短期的に戦術的対応を行う場合と考えます。社債などクレジット市場では、スプレッド(基準金利との利回り格差)はすべての格付け群と通貨建で縮小しています。クレジットはスワップ金利に対する相対的なバリュエーションで見ると割高の領域にあると見ていますが、これは欧州よりも米国で顕著と思われます。このことから、キャリー(市場の状態に変化がない場合に、一定期間に得られるインカムゲイン)を考えると、クレジットによる超過リターンはある程度限定される一方、スプレッドの動きには非対称なリスクがある(つまり、スプレッドが縮小するよりも拡大する可能性の方が大きい)と見ています。


しかし、利回りやインカムの水準には投資妙味

トータルリターンの観点から見ると、クレジットへの投資戦略は依然として魅力的と見ています。なぜなら、利回りは今回の利上げサイクルを始める以前の水準を上回っているからです。金利は低下し始めており、キャッシュに対するクレジットの相対的な価値が向上しています。さらに、クレジットのファンダメンタルズ要因はしっかりしており、クレジットへの需要も強く、今年は発行が増加していますが、市場の需給状況も良好になっていると見ています。その例として、英国の年金セクターを挙げられます。確定給付型年金制度が保険会社とのバイアウト取引(年金債務を保険会社に移転し、移転先に給付事務等も引き継ぐ取引)に参入する傾向が続いており、今後数年間で年間500億〜600億ポンドの規模で推移すると予想されています。年金資産を買い取る保険会社は、スワップに対して資産のスプレッドを最大化しようとするため、クレジットスプレッドが広がるとクレジットへの投資意欲が高まると考えられます。債券投資戦略では金利と同様に、クレジットに対して、ファンダメンタルズに大きな変化がない限り押し目買いに適した状況にあると見ています。地政学的な状況への懸念に関連してリスクオフ(相対的にリスクが高い資産から安全と思われる資産に資産を移すこと)の動きが起こると、その後はクレジットへの買い意欲が高まると見ています。

財政への懸念

現在の利回りをスワップ曲線(異なる満期のスワップ金利の差)と比較すると、国債は割安と見ています。この状況は、特に長期金利において当てはまります。英国市場では、15年以上の満期の国債について、国債利回りとスワップ金利の差の平均は約60bpです。過去10年間で最も大きかった差は80bpです。ドイツ、フランス、米国の国債も同様に割安になっていると見ており、フランス国債のスプレッドは10年間で最高水準にあります。これは、市場が政府の借入と現在の財政状況の持続可能性に対する懸念を反映しているものと考えられます。過去の場合と比較すると、社債のリスクは国債のリスクよりも低いと見られています。もちろん、リスクオフの環境ではすべてが変わる可能性があります。クレジットのプロテクション(クレジット・デフォルト・スワップ)の購入や、長期金利に対するオプション取引が、債券市場においてはリスクオフ取引となると見ています。

ソフトランディングは株式市場にとって追い風になると見ている

予測の中心シナリオでは、2025年の株式市場のリターンは相対的に良好になるとの見通しになっています。金利低下によって消費者支出や企業支出は増加傾向を続ける一方で、人工知能(AI)やネットゼロ(二酸化炭素排出が差し引きゼロになること)への移行などの構造的なテーマが企業支出を支えると見ています。市場の見方では、トランプ候補が大統領になると、米国の株式にとってはプラスになるとされていますが、ハリス候補が当選した場合に、同候補の企業税増税案は議会で否決されると考えると、株式市場へのマイナス効果は比較的穏やかなものになると見ています。

現在の株式の業績予測は比較的堅調です。S&P 500指数に対する市場見通しでは、来年に14%の業績成長が見込まれており、ナスダック総合指数に対しては25%です。現在のPERが変わらない状態でS&P500指数の利益が14%増加すれば、指数水準が6,100-6,200に近づく可能性があると計算できます。また、Russell2000指数に対する業績見通しも楽観的で、成長率は73%となっています。低金利は銀行融資への依存度が高い傾向がある中小企業にとって有益であり、経済全体での支出の拡大も促す要因となると思います。興味深いことに、今夏の初めにテクノロジーセクターの株価調整が起こった際、市場がFRBの利下げをより積極的に織り込み始めたために、小型株セクターは上昇しました。また、筆者は、銀行の貸付の伸びが1年以上にわたり横ばいとなった後、わずかながら回復し始めていることにも注目しています。

上昇相場の継続には業績と政策が重要と考える

ソフトランディングが困難にならない限り、今後、株式のリターンが債券のリターンを上回ると見ています。今回の四半期決算は2025年に向けた予測を形作る上で役立つと見ています。もし中国の景気刺激策が実質的で効果的であれば、世界の成長見通しはわずかながらも改善すると思われます。製造業の景気サイクルが上向くと、一般産業の企業にとって有益であり、また、市場では自動車や運輸、建設セクターのPERがある程度上昇する可能性があると見ています。

世界の見通しにおいて、プラスの方向への特別なシナリオは、ウクライナと中東での敵対行為が終結するとことと考えます。この両地域に平和が訪れ、復興の機会が生まれ、中央・東欧地域とレバント(東部地中海沿岸地方)全体に利益をもたらすることを想像したいと思います。それが現実になるには多くのことが起きなければなりませんが、その中でも特に重要なのは、米国の次期大統領の動向とイランの政治情勢の展開と見ています。しかし、筆者としては、常にマイナスのことばかり考えるのではなく、今は可能性が低そうに見えても、プラスの可能性について考える思考訓練をしてみるのも良いと思います。

イスラエルの紛争終結し中東の政治構造が変化する場合には、数十年にわたる紛争で荒廃した社会にようやく繁栄をもたらす可能性があると思います。再生可能エネルギー発電、スマート農業、観光、イスラエルの技術専門知識の活用、湾岸諸国からの資金調達など、経済復興の要素となる可能性が多くあると見ています。10月第2週に、レバノンの外貨建て債券の価格が上昇し、テルアビブ株式市場は過去最高値に達し、ベイルート株式市場は2007年以来の最高値に近づいています。こうした資本市場の動きは、中東から発せられる毎日のニュース報道と相容れない感じがするものの、市場は冷静に、また将来を見据えて動いていると思います。中東の平和と復興は、2025年に生まれる最高の物語となる可能性があると見ています。

パフォーマンス等のデータの出所:LSEGワークスペース・データストリーム、ブルームバーグ、アクサIM。特に記載がない限り、2024年10月10日現在。

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(オリジナル記事は10月11日に掲載されました。こちらをご覧ください。)

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ナスダック総合指数:米国NASDAQに上場している全銘柄の値動きの平均を示す時価総額加重平均型株価指数です。

ラッセル2000株式指数:米ラッセル・インベストメント社が算出する米国株式市場に上場された時価総額上位1001位から3000位までの2000社の値動きの平均を示す時価総額加重平均型の株価指数です。

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