ロボテック戦略月次レター:高まるインフレ圧力
ロボテック戦略月次レター(2022年3月の振り返り)
高まるインフレ圧力
ウクライナ紛争で地政学リスクとエネルギー価格上昇が継続、賃金上昇圧力と人手不足が自動化の需要喚起へ
3月の世界株式市場(MSCI ACWI、米ドルベース)は、前半は下落基調でしたが、後半に反発し、月間では上昇となりました。ロボテック戦略も、主として米国や日本の保有銘柄の株価上昇がプラス寄与となり上昇しましたが、市場全体を下回るパフォーマンスとなりました。当戦略の投資対象ではないエネルギーおよび素材セクターのパフォーマンスが高かったことが背景にあります。
ウクライナ紛争が続く中、地政学リスクとエネルギー価格の高騰が引き続き市場センチメントを支配しました。主要国は協調してロシアに対して大規模な経済制裁を課しているため、原材料などの投入コスト上昇を招き、紛争前から既に混乱していたサプライチェーン問題のさらなる悪化やインフレ圧力の高まりをもたらしました。米連邦準備制度理事会(FRB)は当月0.25%の利上げを実施し、コロナ禍で大幅に引き下げた政策金利を正常化させるプロセスを開始しました。
ウクライナ紛争の影響でエネルギーや原料価格が上昇したことにより、インフレ圧力は過去数ヶ月にわたって上昇を続けています。製造業企業にとって厳しい環境となっており、これらのコスト上昇分を自社で吸収するか、製品価格に転嫁するか、あるいはその両方の組み合わせとするかの必要性に迫られています。さらに紛争の影響はサプライチェーン問題にも影を落としています。インフレ圧力やサプライチェーン問題は引き続き企業の運営に重くのしかかり、また一部の国や地域における労働力不足も賃金上昇圧力となると予想しています。このような状況は、労働力不足や賃金上昇を解決する一手として自動化を導入する機会を提供しており、この問題が続く限り自動化の需要を高める原動力となると見ています。
ポートフォリオの動向
当月はヘルスケア関連銘柄が前月に続き堅調なパフォーマンスとなりました。糖尿病患者向け血糖値常時モニタリングシステム大手のデクスコム、尿失禁治療に用いられる仙骨神経刺激装置を開発する米国のアクソニクスなどがプラス寄与となりました。また、2月に新規に組入れた米国のソフトウェア企業ベントレー・システムズも組入れ開始以降、堅調なパフォーマンスを続けています。ベントレーは、インフラ資産の設計、建設、管理をサポートする統合型ソフトウェアを提供しています。
半導体企業のアンバレラは月の前半に軟調なパフォーマンスとなりました。同社はサムスンに生産委託している製品の供給問題から向こう2四半期の業績が当初予想よりも悪くなるとの見通しを示しました。アンバレラに限らず、半導体メーカー各社は需要に応えるだけの十分な生産能力を確保するのに苦労しています。その結果として売上が目標に達しないことは残念ではあるものの、同社製品への強い需要が続いていることは心強いと言えます。
また、自動車部品メーカーのアプティブもマイナス寄与となりました。同社はウクライナに製造拠点があり、製品の納入に影響を受けています。しかし、同社は紛争の影響を受けない他拠点に生産を移転する努力を続けており、いずれ影響は軽減されるものと見ています。また、倉庫自動化ソリューションやフォークリフトを製造するドイツのKIONグループはサプライチェーンの混乱や原料コスト上昇への懸念から株価が弱含みマイナス寄与となりました。
なお当月は、糖尿病患者向けインスリンポンプを製造するタンデム・ダイアベティス・ケアを新規に組入れました。当戦略で長年にわたって組入れている同分野のデクスコムを補完する狙いがあります。糖尿病の常時モニタリングや血糖値管理においてテクノロジーが果たす役割は大きく、両社はこの分野において優位な立場にあると見ています。
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