ロボテック・トレンド:ヘルスケア分野で進む自動化やデジタル化
ロボテック・トレンド
ヘルスケア分野で進む自動化やデジタル化
世界的には地政学的リスクとインフレ懸念から市場のボラティリティが高まっていますが、欧米を中心に新型コロナ・パンデミック対応から通常生活への復帰が進んでいます。オミクロン変異株の感染拡大は、米国や英国などでピークを越えつつあり、マスク着用規制を解除する動きも出ています。米疾病対策センター(CDC)は2月末、マスク着用指針を大幅に緩和し、人口の70%以上が住む地域で学校など屋内の公共の場での着用勧告を解除しました。
病院や医療システム、通常体制に復帰へ
欧米では病院や医療システムも通常体制に戻りつつあり、緊急対応以外の医療関連ニーズが高まっています。特に、パンデミックのピーク時には多くの外科手術が延期されましたが、新型コロナ関連の入院患者数が減少し始めているため、今後、外科手術に対する極めて強い需要が回復するとみられます。また、新型コロナ・パンデミックにより、各国は医療インフラへの投資不足を認識させられました。 パンデミック以降、政府が医療サービスを見直す際には、テクノロジーと効率化が重視されると考えられます。
手術支援ロボット
医療分野で注目されるテクノロジーのひとつが手術支援ロボットです。手術支援ロボットとは医師がモニターに映し出した映像を見ながらコントローラーを使ってロボットの手を動かして手術を行うシステムです。患者にとっては傷口が小さい、手術時間が短い、回復が早い等のメリットがあり、医師にとっても狭い部位の縫合が行える、視野が広くなる、手の振れによるミスを防げる等のメリットがあります。米国のインテュイティブ・サージカル社は外科手術支援ロボットシステム「ダビンチ」を製造しており、その利用は欧州やアジアで拡大しており、日本の病院でも多く導入されています。同社は1月末に2021年10-12月期決算を発表し、コロナの影響は引き続きあるものの、純利益、売上高ともに市場予想を上回りました。同社経営陣は今年大規模な設備投資を計画しており、中長期的な事業展開には積極的です。
デジタルヘルス
デジタルヘルスといえば、医療のデジタル化やモバイルヘルスケアが挙げられますが、今世界的に採用が広がっています。米国ではバイデン政権が、消費者を重視したデジタルおよびバーチャルを併合させた医療制度への移行を進めています。米国では特に、健康アドバイスや医療サポートでモバイルアプリが頻繁に利用されています。
米国のデクスコム社は、糖尿病患者用血糖値モニタリング機器を製造しています。同社の「G6 CGMシステム」では、通常の血糖値測定のように血管に針を刺す必要がなく、腹部に極細の針がついたセンサーを貼るだけで、血管よりも浅い位置で血糖濃度を24時間継続的に測定します。患者はそのデータを、スマートフォンなどでリアルタイムで見ることができます。高齢化が進む米国では糖尿病患者が急増しており、糖尿病の悪化に伴う医療コスト増を抑えるために、同社の機器が活用されています。また、生活水準の向上とともに世界中で糖尿病患者が増加しており、デクスコムの機器の海外でのニーズも大きいとみられます。デクスコム社は今年、「G6」 を大幅に小型化した「G7」を投入する予定で、市場はそのインパクトに注目しています。
その他にも、歯列矯正システムが挙げられます。米国のアライン・テクノロジー社は、独自の3D画像化技術とCAD/CAM技術を融合させたシステムの設計、製造、販売に従事しています。歯科医は患者のレントゲン写真やデジタルスキャン情報をアラインのソフトウエアに入力することで、歯列矯正の治療計画が作成されます。そしてその情報を元に、カスタマイズされたマウスピース型の矯正器具「アライナー」が制作されます。アライナーは透明で目立たず、取り外しも可能で、患者は金属製のワイヤーを使う必要がありません。同社の2021年の売上高は前年比60%増と、事業を大きく拡大しています。
このような形で手術支援ロボットとデジタルヘルスの分野の進化が進み、今後さらに医療業界におけるテクノロジーの発展と効率化が進んでいくと考えられます。
なお、ロボテック戦略の詳細につきましては、ぜひウェブサイトをご覧ください。
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