ロボテック戦略月次レター:ヘルステック関連銘柄が堅調
ロボテック戦略月次レター(2022年10月の振り返り)
ヘルステック関連銘柄が堅調
年初来でのパフォーマンスの低迷から一転、好決算発表や買収提案が追い風に
10月のグローバル株式市場(MSCI ACWI、米ドルベース)は前月の大幅な下落から反発しました。
当戦略は市場全体とほぼ同等のパフォーマンスとなり、中でもヘルスケア関連の組入銘柄が堅調でした。7-9月期の企業決算発表が始まり、概ね予想を上回る結果が報告されているものの、今後の見通しについてはより慎重な見方を示す企業が見受けられます。マクロ経済情勢が業績に影響を与えることは驚くには当たらず、当面の間はこうした傾向が続くと見られます。
しかしながら、一部の大手テクノロジー企業において予想を下回る業績が発表されているにも関わらず、株式市場が全般的に堅調に推移したことは心強いと言えます。現時点で結論を出すのは時期尚早であるものの、株価は悪材料を既に十分に、あるいは過度に織り込んだことを示唆しているのではないかと考えられます。
当月はヘルステック関連分野が堅調なパフォーマンスとなり、中でも組入上位銘柄のインテュイティブ・サージカルが約30%、デクスコムが約50%のリターンとなりました(円ベース)。年初来では、他のセクターに比べ景気の影響を受けにくいとされるヘルステック関連組入銘柄のパフォーマンスは思ったほどの底堅さを示さず、やや期待外れでしたが、当月、両社は好調な業績を発表し株価が上昇しました。
手術支援ロボット大手のインテュイティブ・サージカルは、決算において予想を上回るロボットの売上、設備投資環境の改善に加え、2022年の年間施術件数見通しを17-18%の伸びへと上方修正したことなどを報告しました。血糖値常時モニタリング機器を手掛けるデクスコムは、最重要市場である米国での成長再加速、次世代機器G7の米国での発売、適用患者の拡大など2023年の複数の成長カタリストについて言及し、株価はこれを好感しました。
人工心臓メーカーに対して50%の大幅プレミアムで買収提案
11月初め、人工心臓の開発・製造を手掛けるヘルステック企業のアビオメッドは、ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソンから約50%のプレミアムで買収提案を受けました。当戦略では2019年夏からアビオメッドを保有しています。買収の詳細については来月の月次レターで報告しますが、この事例は、買収企業にとって現在の株価水準における被買収企業の企業価値は非常に魅力的に映っていることを示していると言えます。当戦略におけるM&A(買収と合併)は8月に英国のソフトウェア企業アヴィバ・グループがフランスのシュナイダー・エレクトリックに買収されたのに続く案件となりました。当戦略のポートフォリオには、買収対象となりうる優れた企業が他にもあると見ています。
ガソリン車から電気自動車への移行加速、設備投資や自動化も拡大
なお、10月下旬に欧州連合(EU)は、2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止することで合意しました。これにより、CO2を排出する乗用車と小型商用車は、ハイブリッド車を含め今後販売できなくなります。EU内では、電気自動車(EV)への移行が急速に進むとみられます。欧州大手自動車メーカーのEVシフトが既に続いており、このEUの措置により関連分野も含めた欧州でのEV関連設備投資の加速が続くと考えます。
米国では、先日成立した「インフレ抑制法」に北米生産EV購入に対する大きな税額控除が盛り込まれていることから、EV生産の大幅な拡大が見込まれます。10月中旬、ソニーグループとホンダはEVの共同出資会社の設立を発表し、高級EVの北米における生産と販売を2025年に開始すると発表しました。独BMWは10月下旬、米サウスカロライナ州にある同社の主要工場でのEV生産開始を発表しました。米国では労働コストが依然として高いため、EV生産拡大は自動化需要をさらに押し上げる要因となります。
ポートフォリオの動向
当戦略のポートフォリオにおいては、ドイツの半導体企業インフィニオン・テクノロジーズは堅調なパフォーマンスとなりました。同社は自動車関連のカンファレンスを開催し、向こう5年の事業展望について説明しました。その中で、2022~2027年にかけて市場平均でEV向け半導体は年率22%、ADAS(先進運転支援システム)または自動運転ソリューション向け半導体は年率21%の成長が見込まれ、同社は、両分野において市場平均を上回る成長が可能であると強調しました。
日本の自動化関連銘柄は強弱入り混じる結果となりました。自動化機器で用いられるセンサーやビジョンシステムのリーディングサプライヤーのキーエンスは最高益を記録し、全ての地域で強い需要が見られ、中でも中国の復活の影響が大きいと話しました。多くの企業が中国における設備投資が復活したことについて言及していますが、中国の需要についてはロックダウンで状況は一変する可能性もあるため楽観的になり過ぎないよう慎重に見ています。一方、ファナックはサプライチェーン問題が引き続き同社の利益に打撃となっており、顧客が望むだけの製品を納入できずにいることを明かしました。同社の受注は引き続き堅調で、特に産業用ロボット事業は新規ロボット導入により好調であるものの、ロボドリルやFA(ファクトリーオートメーション)事業の不振で一部相殺されました。
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